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とける、まざる、ながれる

今日も一日雨が降ったりやんだり。空は終日薄い灰色で、窓の外も、部屋の中も、しんとして仄暗い。ソファーの上で横になり、時おり窓を打つ雨の音にぼんやり包まれていると、いろんな時、さまざまな場所で、ひとり静かに横たわっていた雨の日の記憶がいくつも蘇ってくる。「雪解け水があれもこれもいっしょくたにして押し流していくような」と昨日友人が言っていたけれど、わたしの中もそんな感じだ。些細な記憶の断片がとりとめもなく浮かんでは、ごちゃ混ぜになって流れていく。あらゆる色と感触がゆるゆる溶け合っていく。「そういえば、そんなこともあったっけ」と思いはするものの、どの記憶もいつか読んだ物語の中の情景のように感じられる。まるで、小説を後ろから読んでいるみたいだ。どんなドラマも後になって振り返ればすべてが筋書き通り。時が未来から過去へ流れているように感じられるのも当然だろう。すべては創作だったんだ。自覚しているかしていないかだけで。あれもこれも全部が自分だ。そうすると、そもそも自分とは何なのだ?と思う。自分とは、肉体をして此処に在る個体ではないことだけは確かだ。

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