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「ブランド戦略と経営の未来図 #1」~ブランディングとは何か?~

皆さんこんにちは。「ブランド戦略と経営の未来図」へようこそ。
"企業の成長を切り拓く!CBO代行"の入倉大亮と申します。
株式会社HUV DESIGN OFFICEの代表として、ブランド戦略の設計と企業の成長をサポートしています。
このブログでは、私がこれまで培ってきた経験と知識を通じて、ブランド価値向上や経営戦略に関する情報を共有し、皆さんと一緒に学ぶ場を作っていきたいと思います。

今回のテーマは「ブランディングとは何か?」です。企業の成長においてブランディングは欠かせませんが、その曖昧さゆえに「ブランディングってデザインや広告のこと?」と誤解されがちです。そこで、本記事ではブランディングの本質と重要性について、事例を交えながら分かりやすく解説します。


1. ブランディングとは何か?

もし皆さんがお客様から「選ばれ続ける存在」になりたいと強く思うのであれば、ブランディングは最適な経営手法です。
ただし、ブランディングは「ロゴやパッケージデザイン、ウェブサイトを整え、広告宣伝を行うこと」と単純に捉えてはいけません。
確かにそれらはブランディングの一部に違いありませんが、本質ではなく手段にしかすぎません。
ブランドとは、お客様やステークホルダーにとって、その企業や製品が何を象徴し、どのような価値を提供するのかを示すものだからです。
アメリカ・マーケティング協会(AMA)によれば、ブランドを「名前、用語、デザイン、シンボル、またはその他の特徴であり、販売者の財やサービスを他と区別するもの」と定義しています。簡単に言うと、ブランドは顧客が皆さんを選ぶ理由であり、その企業がどのように見られたいかを示すものです。

また、ブランド研究の大家であるケビン・レーン・ケラー氏は、このように述べています。
「ブランドは製品そのものであるが、同時に同じニーズを満たす他の製品とは異なる次元を持ち、差別化されるもの」と。
これは、ブランドが単なる製品やサービス以上のものであり、競合他社と違う価値やイメージを持っていることを意味しています。

例えば、スマートフォンを考えてみましょう。多くのスマートフォンは「通信ができる」「インターネットに接続できる」など、基本的なニーズを満たします。しかし、AppleのiPhoneは、他のスマートフォンと比べてデザイン、使いやすさ、ブランドのストーリーなど、他にはない独自の「次元」を持っています。この次元こそが、他の製品と差別化する要素であり、消費者がiPhoneを選ぶ理由になります。

要するに、ブランドは「機能を持つ製品」であるだけでなく、その製品が持つ「感情的な価値」「ストーリー」「イメージ」など、他と差別化される要素も含んでいる、ということです。

2. ブランディングの本質とは?

さて、ここからは皆さんも良く知るブランドの事例を交えて、ブランディングの本質を一緒に見ていきましょう。

【事例1】:スターバックスコーヒー
~コーヒー以上の体験を提供するブランド~

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みなさんご存知の通り、スターバックスは「コーヒー」を提供するお店ですが、その本質は「コーヒーを買う場所」だけではありません。
彼らは、商品に加え「居心地の良い空間」と「お客様との温かいコミュニケーション」といった豊かな体験も提供しています。
例えば、彼らは効率的な接客マニュアルを良しとせず、画一的な接客はしないことで有名です。
フレンドリーなスタッフとの会話から分かるように、彼らは顧客一人一人に向き合った接客を心掛けており、顧客とのつながりを大切にしていることが見て取れます。
また、店内の雰囲気やBGMもゆったりと落ち着くことのできる空間づくりとなっており、他のコーヒーショップとは一線を画すものとなっています。
このように、スターバックスは単なる「コーヒー」という製品ではなく、「リラックスできる空間と体験」を提供しているのです。

【事例2】IKEA
~組み立て式家具以上のライフスタイル提案~

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IKEAは組み立て式の家具を販売していますが、その本質は「お手頃な価格で、自分らしい空間を作れる」という価値を提供することです。IKEAの店舗を訪れると、単なる家具売り場ではなく、生活シーンを具体的にイメージできる「部屋全体の展示」が行われています。
これにより、お客様は自分の暮らしに取り入れることで「どんな生活ができるか」を想像することができるのです。

単なる商品を超えた「暮らしを豊かにする」提案がブランディングの核となっていることが伺えます。

【事例3】Patagonia
~製品を超えた社会的価値観の共有~

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アウトドアブランドであるPatagoniaは、高品質なアウトドアウェアを提供していますが、単に商品を販売しているわけではなく、その本質は「環境保護を重視するライフスタイル」です。
同社は製品の品質に加え、環境問題への取り組みやサステナビリティを一貫して発信しています。「地球が私たちの唯一の株主」と明言しているのは有名ですよね。
Patagoniaの製品を選ぶ人々は、単に「良い服が欲しい」という理由だけでなく、そのブランドの持つ価値観や理念に共感して購入しているのです。

ここからもわかるように、ブランディングは「商品」そのもの以上に、企業の持つ理念や価値観を共有することの重要性が分かる一例です。

【事例4】Dyson
~技術革新とデザインから得られる感情的な価値~

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Dysonは、「吸引力が落ちない」という技術的な優位性に加え、「デザイン」においても他社と一線を画しています。そして、そのデザインが単なる見た目の美しさ以上の意味を持つのが彼らの特長でもあります。

たとえば、サイクロン技術を視覚的に見せる透明なダストカップは、単にゴミをためるだけでなく、「強力に吸引し、ゴミを確実に捉える」という機能を視覚的に訴えかける設計になっています。
インテリアの一部としても成立するようなデザインで、使わないときでもその存在感が家庭の中で一種のステータスとして機能していますよね。

結果として、彼らの製品は単なる「掃除道具」ではなく、「所有することが誇らしいアイテム」として位置付けられており、「所有する喜び」や「見せたくなるプロダクト」としての要素が、ダイソンが競合製品と差別化される要因となっているのです。
以上のように、Dysonの事例は、機能性とデザインが持つ情緒的な価値が、ブランディングにおいていかに重要かを示す一例です。

【事例5】ZARA
ファッションの「新鮮さ」を売るブランド

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ZARAは、ファッション業界において「ファストファッション」という新たなカテゴリを確立したパイオニア的存在です。
しかし、彼らが他のブランドと一線を画すのは、単なる速さや低価格だけではなく、ブランドが持つ「常に最新である」というイメージにあります。

彼らは、わずか数週間という驚異的なスピードで、世界中で流行しているスタイルを商品化して店頭に並べます。通常のアパレル企業が数カ月かけるのに対して、圧倒的なスピード感ですよね。
そして、このスピードを一貫して維持することで、消費者にとって、ZARAは「毎回新しい発見がある場所」であり続けることができるのです。
常に新鮮な商品が並んでいるZARAは、消費者にとって「最新の自分」を表現できる手段となっているのです。

いかがでしょうか。
人々は商品を買うだけでなく、その背後にある価値やメッセージも共感し、選んでいることが分かりますよね。
これら5つの事例から分かるように、ブランディングの本質は、単に製品を良く見せることではありません。
製品そのものの価値に加え、「感情的な価値」「ストーリー」などを含んだ総合的な価値を設計することにあるのです。

3.ブランディングの重要性

では、この総合的な価値設計を行うことで、なぜお客様に選ばれ続けるのでしょうか。結論としては、商品そのものだけでなく、お客様が感じるそのブランドならではの体験や価値を通じて、他とは一線を画した存在として「意味づけ」されるからです。先の事例で見たように、その差別化された独自のポジションを築くことが「選ばれ続ける」理由となるのです。

どういうことかイメージが沸きやすいように、ここで皆さんに質問です。
皆さんは、以下の3つの問いから何のブランドを思い浮かべるか教えてください。

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Q1. 「ビール」と言われて思い浮かぶブランドは?
Q2. 「自分へのご褒美として飲みたいビール」と言われて思い浮かぶブランドは?
Q3. 「大切な方へ贈るビール」と言われて思い浮かぶブランドは?

いかがでしょうか。
あなたが挙げたブランドは、どれも同じですか?それとも異なりますか?あるいは何も思い浮かばない方もいるかもしれません。

ここで言いたいことは、
私たちは一消費者として、ブランドに意識的・無意識的に「意味づけ」をしているということです。
例えば、「あぁ~!今週も仕事頑張ったなぁ!!明日は休みだから、自分へのご褒美として良いビール飲んじゃお♪」という時、「自分へのご褒美として飲みたいビール」と意味づけされたブランドが思い浮かび、買おうとしますよね。

つまり、お客様から意味づけされたブランドは、特定の場面(ニーズが発生した時など)で検討されやすくなり、選ばれる可能性が高まります。さらに、他とは一線を画した存在として、意味づけが強く一貫していればいるほど、お客様から選ばれ続ける可能性がより高まります。その最たる例が、先に挙げた5つの事例です。反対に、そのブランドが意味づけされていないと、特定の場面において思い浮かばず、検討すらされません。

適切なブランディングがされているか否かということは、事業の成果に大きく影響を与えます。これが、ブランディングが経営や事業の成功において不可欠である理由です。

4.まとめ

さて、本記事ではブランディングとは何か?をテーマに、事例を交えながらその本質と重要性について考えてきました。

改めてブランディングの本質とは、顧客がそのブランドにどんな「意味」を見出すかにあります。価値設計がしっかりとされ、顧客にとって明確な意味を持つブランドは、特定の場面で自然と思い浮かび、選ばれやすくなります。一方、意味づけが曖昧であったり、他との違いが感じられないブランドは、検討すらされず、選ばれる機会を失うことになるでしょう。

だからこそ、ブランディングは単なるデザインや広告戦略ではなく、顧客の心にどう刻まれ、その瞬間にどのような価値を提供できるかを考える「意味づけのプロセス」なのです。先に紹介した事例は、いずれもそのプロセスを成功させ、選ばれ続けるブランドとして確立したものです。今後のブランド戦略においても、この「意味づけ」の重要性を意識し、価値設計を行うことが極めて重要だということを覚えておいて頂ければと思います。

本記事が、皆さんにとってブランディングに対する理解促進や考えるきっかけとなれば幸いです。
皆さんのお考えもコメントなどで頂けると嬉しいです!
それではまた来週☺



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