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最近妻が綺麗になって・・・

化粧も念入りに。


ピアスホールは、とっくに埋ってしまったものだと思っていたのに。


洋服はいつも安物のハズが、デパートで揃えているようだ。


おかしい。なにかおかしい。


さり気なくその話題に触れてみたが、


「気のせいじゃない?あなた疲れてるのよ。」


なんて言って髪型を整えそそくさと部屋を出ていく。


まるで昔流行った、SMAPの『青いイナズマ』みたいだ。


そして


お酒なんて、全然飲まなかったのに・・・


月の夜に 綺麗な妻が 着飾って

家を出ていく。

中1の娘、小6の息子を置いて。


22才のデキ婚で、長年、子供の世話にかかりきりだった。


そんな大変な時に旦那は、仕事、仕事で家庭を顧みない。


子供に手が掛からなくなり、子育てがちょっと一段落して、我慢からパッと開放され。


妻の中で、何かが変わってしまったのかもしれない。


人はどうして失う前に気付けないのだろう

なぜこんなことになる前に、妻の気持ちに、寄り添ってあげられなかったのだろう。


子育てに追われ、仕事にも追われ。


思いやりが、減って。


相手に対する、感謝が無くなって。


いつしか、夜の営みも無くなって。


失ったのなら取り戻せばいい

もしもまだ間に合うのなら。


まだ、可能性がほんの少しでも残っているのなら。


取り戻したい。


お互い愛し合って、生涯を共にすると誓ったじゃないか。


この目の前の一人の女性を、もう一度イチから口説き落としてやる。


俺という男に、振り向かせてやる。


俺の本気を、見せてやる!


遅い!置いてくよ?

玄関先で、妻が呼んでいる。

行ってらっしゃいと、子どもたちがニヤニヤしながらリビングから呼びかける。


コイツら、親がいないからって、二人でぷよぷよテトリスやる気だな。


10キロ減量したカラダに、ジャケパンスタイルでキメた。


「子供たち仲いいね。そんな子に育ったのは、ママのおかげだね。ありがとう。」


妻が腕を絡ませながら応じる。


『パパ、最近カッコよくなったね!』

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コイツめ、カワイイこと言っちゃって。今夜はどうしてやろうか。


お熱い夜になりそうだ。


ふと振り返ると、顔に生気のない小太りの男が『俺の妻を返せ』と呻いている。


そんな惨めな過去、置き去りにしよう。


『何か』を変えたいのなら、まず己の心を変えることだ。


妻を綺麗にしたのはほかでもない。


本気で変わろうとした、私の心だった。


今日は14回目の結婚記念日。


これは、離婚届を2度突きつけられた男の、蘇生の物語。



写真は、「フリー写真素材ぱくたそ」様より 

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