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冷笑

  キリスト教には様々な訂正不可能な偽典が存在する。

〜偽クレメンス文書ディダスカリアApostolic constitutionアダムとイヴの生涯[1]アリステアスの手紙第三マカベア書第四マカベア書シビュラの託宣スラヴ語エノク書ピルケ・アボスヨベル書エチオピア語エノク書ソロモンの詩篇シリア語バルク黙示録ギリシア語バルク黙示録[2]第四エズラ書(第二エスドラス書)十二族長の遺訓イザヤの殉教モーセの遺訓[3]アブラハムの遺訓ヨブの遺訓預言者の生涯ヨセフとアセナテ共同体の規則ダマスコ文書戦いの巻物ハバクク書注解外典創世記感謝の詩篇(ホダーヨート)神殿の巻物賢者アヒカルの物フィロンの聖書古代誌〜

  wikipediaより
 
 
 

ボクは驚きました。


 ボクは驚きました。

 ボクは驚きました。

 なんたって、驚きました。

 あの先進的文化人・ドスパンが遂に捕まりかけているんですから、本当に酷い日本になったものです。

 ドスパンは先進的文化人でインターネット上で1流の文化人(とは言っても半分吹き出し者のような連中)を集め余りに日本一知的な文化サロンを展開していた。

 ボクが知ったのは、後からです。

 ドスパンは世界の陰謀にも気づいていて、AIとBIによる新たな支配構造を日夜話し出す怪しげな会員制サロンゲシュタルト学派の名物な代表と化していた。

 そんなときに単なるMARCHの無キャYouTuberのボクがドスパンと知りあってから、ドスパンの雲行きが怪しくなり、ドスパンはとうとう警察にマークされ、というか論壇のとある権力者に著書『大学は行くな!』が発禁処分になり、でも喉から手が出るぐらいこの本の発売資格を欲しかった私は『大学は行くな!』を再発売するんですが、粛清されたドスパンは「オレは自由民権運動の板垣退助だ。後は任せた」と一言言ったきり沈黙してしまうときた。

 そんなボクが退屈しているときに、なんとドストエフスキー波長ねぎ暗殺未遂事件がスキャンダラスに世間を賑わせていた。

 いてもたってもいられないボクはドスパンのことなんか忘れていて、このドストエフスキー波長ねぎ暗殺未遂事件に大興奮しYouTube動画を大量に上げていた始末であります。

 さて、そんな私に久々に会いたいと過去の人であるドスパンからLINEがきました。初めは乗り気じゃなかったですよ。今の旬はそんな『大学は行くな!』なんて当たり前の話しじゃあなく、今目の前で起こった真実ですから。MARCHのボクからしたら真実の革命の方に意味があった。

「そんなところだと思っていたよ。いいかい?警察や権力者にマークされたオレが遂にメディアで今回のドストエフスキー波長ねぎ事件をキミとオレで報道するんだぜ。そこには意味があると思わないか?」

久々にドスパンのセリフ、流れるように歌じみた美しい美辞麗句を聞いて、興奮したボクはドスパンと一緒に東大駒場前で朝11時に集まることにしたのであります。

 「人を連れてきた」

 ボクは愕然としました。

 黒いジャンバーと白いマスクで姿形を隠す今回のテロリスト・首謀者・切島優吾がいるじゃあありませんか。

 「ドスパン。これは一体全体どういうことだい?」
 「だから、人を連れてきたと言っているだろう」
 「彼は殺人者だ」
 「だから、人を連れてきたと言っているだろう」

 話しは平行線でやっぱりドスパンはドスパンだった。

 ドスパンはまさかこの白昼夢、この騒ぎと喧騒で慌てふためくパニック騒ぎの東大駒場前に渦中のスターである切島優吾容疑者を連れてきたからだ。

「実は今回の事件、ドストエフスキー波長ねぎを男子トイレで暗殺未遂したのはこの切島優吾くんじゃあないらしい。彼はどうやら冤罪らしいのだ」

 久々に会ったドスパンはとんでもない真実を打ち明けてくれた。そしてこの数ヶ月の沈黙の間に何があったのか。

 ドスパンの生涯

 ドスパンは『大学は行くな!〜AIとBIの真実〜』発禁処分後、度重なる裁判の数々を体験し、深い絶望に陥っていた。ある時は、裏世界の人間に刃物で脅されて『大学は行くな!』をまた発売するものなら、オマエを一生論壇から潰すと腹の出たオッサンに恐喝されたらしい。

 ドスパンは死を覚悟したらしい。

 ドスパンにはそれしか人生のやりがいが無かったからである。 

 ドスパンは思い違いをしていた。愉快犯としてドスパンが提出した『大学は行くな!』はただ世界の真実を記述しただけであり、このようにまで為政者を怒らせる事態にまで発展し、ましてやテロリストたちのバイブルとして数々の犯罪に利用されるような危険思想書だとはゆめゆめ思っていなかったからだ。

 ドスパンのパッとしない人生はこの『大学は行くな!』の光と影により人生が大きく揺れ動いたらしい。

 ある時小汚い格好をしたピエロが町をひたすら裸で歩いていて、当時何者でもなかったドスパンはピエロに100円を現実でスパチャしたらしい。

 100円を木漏れ日が射す冬の11月に地面へ投げつけたところ、ピエロは深いお辞儀をし、ピエロにあるまじき丁寧で丁重な丁品な姿勢でピエロはピエロの化粧を白いハンカチで脱ぎ落とし、ピエロだった男はコートを着たドスパンに端正な顔を歪ませてニタニタとこう言った。

「アナタをお待ちしていました」

それからだ。ボクたちの知るドスパンが誕生したのは(なおそれまでのドスパンは話すまでもない凡庸さになのでMARCHのボクからしても説明は省かせていただきます)。

 ドスパンはその奇妙なピエロから誠に信じられない統合失調症すぎる話しだが、YouTubeの使い方、メンヘラの治し方、未来に起きる数々、ありとあらゆるお告げを聞き、何者でもないドスパンに教育と恐喝を無償で授けた。

 ドスパンはその時直感したらしい。

(オレの人生は破綻するかもしれない。しかし、この波に乗らなければ、オレは何者かになれないだろうし、オレもこの愉快なピエロさんが提唱する次のセカイへ足を踏み入れたい)

 こうしてドスパンは見様見真似で端正な顔立ちをしたピエロの話しを再現したところ、ショボかった彼の知的文化サロン・ゲシュタルト学派はたちまち日本一のゴロツキたちが集まるぐらいに大成長し、ゲシュタルト学派のリーダーとなりましたドスパンはたちまちスターとなり(スターとは言っても反旗的な若者たちの微笑ましい)、『大学は行くな!』を書き記したのであります。

 もっともこの頃からです。ドスパンは実のところ、その端正な顔立ちのピエロからまるでメフィストのような!教育の代わりに恐喝を受けていたらしいのです。

「オマエに成功と性交をオレは約束する。オレたちは無神論者だ。分かるか?」
「分かりません」
端正なピエロは表情をグッと歪ませて冷笑した。
「オマエの大事なものを寄越せとオレは言っているんだよ。オレはな」
「どういうことですか?」
「佐藤一(サトウハジメ)よ。オレは神でもなく人間でもなく、オレはオレだ。オレはあくまでオマエと取引しにきたと言っている。オマエはオレと契約した時点で等価交換として毎回オマエに不幸を授けなければいけない」
「メリットがない」
「しかし、未来を知ることができる。ハイテンションに。エキサイティングに。未来を知ることができる。オマエは未来を誰よりも先に体験することができるんだ。その代わりに寿命を削り取られるリスクは仕方ないだろう」
「因果応報。塞翁が馬」
「そのとおり。しかし、佐藤一よ。オマエは選ばれた人間だということは忘れるな」
「なぜ?」
「ははは。そりゃあオマエはあまりに優しすぎるからだよ!オレは実はもう既に死んでいて誰からも見えていない可能性は無きもしもあらずだぜ!オマエは死神の声が聞こえたんだ!そりゃあオマエはイカれている!オマエはイカれている!傑作だな」
「それでも統合失調症患者でも健常者でもないただの怠惰な一般人だとしても選択されたら生きなければならない」
「その通りだ!」

 そして、ドスパンは端正なピエロの予定通り、不幸も味わうことになるのです。

 ちょうどその頃ドスパンに似た青年たちが数々の老害たちを暗殺をするようになりました。

 ドスパンは恐怖しました。自分も数々の老害を暗殺した人々のようになるかもしれない。

 ドスパンは『大学は行くな!』を巡り、法廷で危険思想家として審判にかけられて有罪とされた。

 ドスパンはたちまちゲシュタルト学派の経営も上手くいかなくなり、ドスパンは死を覚悟しました。

 しかし、信じられない話しはまたも二転三転も続き、ある時ドスパンが深夜の街をまた歩き端正なピエロを探していたところ、自分よりも背の低い者にちょんちょんと背中を突かれたのです。

「だれだ?!」

 ドスパンが後ろを振り返ると、そこにいたのは見目麗しい1人の女性でした。

 あ。ドスパンは絶句しました。ドスパンにはその人が誰か分かっていたのです。しかし、ドスパンはその人が誰かは教えてくれず、ある凡庸だが先の見えたイカれた女とだけMARCHの私に教えてくれました。

「冷笑しなさい。ドスパン」
「冷笑はしきっているよ」
「いいえ!そうじゃあない。アナタはもう悪魔と契約すべきではない。そう次は天使と契約をアナタをしなければいけないの」
「もうそういうのはお断りだね」
「違うわ、ドスパン。アナタに幸運と退屈をもたらして来たの。罪と罰はアナタには決してないわ。ドスパン」
「話しは?」
「これから私の知り合いがあのペテン師・ドストエフスキー波長ねぎを暗殺未遂する」
「なんだって?!」
「うん。私の知り合いがあのペテン師・ドストエフスキー波長ねぎを暗殺未遂するの。その波に乗って、アナタな私の知り合いを匿って擁護しなさい。そうしたら、アナタの罪と罰は払拭されて元通りの人生が退屈としてしかし性交された形で戻ってくるでしょう」

 
 「そうしてオレは切島優吾容疑者、いや偉大なるヤー(神)よ、滑稽な切島優吾テロリスト様を匿うことにしたんだぜ、MARCHのオマエよ」

 はぁ…。ため息がつきました。ドスパンお得意の長時間のお喋りは朝から続き気づいたら夕方の指し示す赤黒い東京大学の駒場が目の前に広がる背景だったのです。

 喫茶店の窓ガラスは水滴で膨張し、得意げなドスパンの復活に辟易しているボクが横目で3人目の切島優吾を見つめると、切島優吾はなにやら素数をぶつぶつ数えていて、これは本物なんだなとボクは確信しました。

〜見えるには実行しなきゃ始まらない〜

 
「で、ドスパン。もうドスパンの話しはもういいよ。切島優吾が表れたってこりゃどういうことだい?」
スーツ姿のドスパンは肩をすくめ、こう挑発した。
「MARCHのキミならこれぐらい分かるだろ?ゲシュタルト学派の習わしだ。もっともG-MARCH、学習院大学の教養がないキミにはこの話しは難しくて退屈かな」
しかめっ面で無言を貫いたボクと相変わらず素数を数える切島優吾容疑者二人を交互に見てから、ドスパンはため息とともに大きなハンドブックを取り出し、お得意イラストを書き出した。

「いいかい?日本の中心はいや東京の中心は皇居だぜ。そしてこの皇居は楕円形になった湖を中心に作られたまるでUFOが降臨しそうな形だな」
「それがなに…?」
「『大学は行くな!』を読めば分かるだろ!これは大学は行くな!のちょうど復習と発展になる。確かに内閣府や財務省などといった権力の中枢を狙うならば三菱や野村総研が引き締め合うこの皇居がターゲット、きな臭い。しかし、時代は今やAIやBIなのだ。となると、駒場前でどのようなテロが予見されるか、ようするにこれはそういう話しだよ」

一体全体どういうことだい?!MARCHのボクは机を叩いて得意げなドスパンへ反旗した。

「もういいよ。ドスパン。そこから先はオレが話すよ。実際に犯行を計画したオレじゃなければ、無意味な話しだろ」

 周りを気にして相変わらず顔を隠す切島優吾容疑者が遂に重い口を開いた。

「じゃあ話すよ。東京大学駒場トイレ前刺傷事件、ドストエフスキー波長ねぎ暗殺未遂事件の全貌を」

柔らかく甘美な切島優吾容疑者の声がMARCHのボクの脳髄に刺さった。

続く




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