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ゲルソン・インスティテュート・アンバサダー氏家京子 連載コラム第3回「なぜジュースなのか?」

この記事は2020年2月13日、ヒューロムWEBマガジン naturise「ゲルソン・インスティテュート・アンバサダー氏家京子 連載コラム第3回『なぜ野菜ジュースなのか?』」に書いた記事を転載しています。

地球と再びつながる

 私たち人間を含む動物は、地球から栄養を取り入れる手段として身近な植物を食べ、必要な栄養を効果的に取り入れ、生物として進化してきました。
 このような地球と人間のつながりが、現代のライフスタイルにある様々な要因で[断絶すると、私たちの健康や命は危機にさらされるとDr.ゲルソンは考えました。(Dr.Max Gerson Healing the Hopeless, Howard Straus with Barbara Marinacci, p.64)
 ゲルソン療法では、地球の植物を利用して「高カリウム/低ナトリウム」の自然なミネラルバランスを患者の細胞内に再び回復させます。それが身体に自分自身を治す力「治癒力」を取り戻させるからです。

細胞たちは24時間営業

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 ゲルソン療法では、ジュースのためだけに毎日最大で約7kgの野菜と果物を使います。ここから13杯(1杯240ml)のジュースを液化栄養というかたちで抽出します。
 朝起きてから夜寝るまでの間、毎回搾りたてのジュースを、1時間ほどの間隔をあけながら13回に分け、ていねいに細胞に送り届けます。
 私たちの命を支える細胞たちは24時間営業です。つねに生き、働き、傷があれば修理し、壊れれば新しい細胞を作り直しています。その作業に遅れぬよう、必要な栄養をジュースで与え続けます。
 治療の初期に、なるべく早く細胞のミネラルバランスを正すことが後の結果に違いを生みます。ゲルソン・クリニックが存在する理由は、そこにあります。クリニックでは、間違いなく1時間に1回、1日合計13回、キッチンから搾ったばかりのジュースが運ばれてきます。初期の2−3週間をこのような環境で心安らかに、そして効果的に過ごすことができれば、その後の自宅療養もスムーズに継続できるようになります。

なぜジュースなのか?

 ゲルソン療法では繊維入りのスムージーを使わずに、繊維をしっかり搾って取り除いたジュースを使います。それには、はっきりとした理由があります。

●病気で治療が必要な体は、消化吸収の力が弱くなっています。約7kgの植物を繊維と一緒にスムージーにすると、最初の1〜2杯で満腹になって飲めなくなり、消化不良を起こしやすく、食事も摂れなくなってしまいます。
●ジュースなら13杯で約7kg分の植物栄養をしみ込むように吸収でき、1日2000キロカロリー以上をジュースから簡単に摂取できます。体重が減りすぎるのを予防することもできます。
●スムージー13杯にすると、摂取カロリーはこの半分以下になり、その分だけミトコンドリアで作るエネルギーが少なく、生み出せる「治癒力」も小さくなります。

 実際のジュースの回数、1杯の量、使う野菜と果物の種類は、患者さんの診断内容や体調によって変えていきます。
ゲルソン療法はフリーサイズのTシャツのように、万人にそのまま適用するものではありません。
 「高カリウム/低ナトリウム」というコンセプトは不変でも、各患者さんに合わせた治療計画「ゲルソン・プロトコル」を専門医が作ります。同じ患者さんでも、その治療期間中には体調が変化するので、途中でプロトコルの変更や更新も行います。

栄養はトータルで効果を出す

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 ゲルソン療法のジュースでよく知られるのは人参ジュースです。そのため、「人参の中のどの栄養に治療効果があるのですか?」という質問をよく聞きます。
Dr.ゲルソンは次のように答えています。
「この療法の効果は一種類の栄養で説明できるものではありません。血液から細胞へ栄養が運ばれるとき、栄養は単独では動かないからです。」(A Cancer Therapy Results of Fifty Cases, Max Gerson M.D., P.98)
これを一目で理解できるのが次の図です。

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この図は16種類のミネラルの相関関係を示しています。私たち人間の命に必要な栄養は実際にはもっとたくさんありますが、この図の矢印が示すように栄養は互いに影響し合うものです。
 あるものは拮抗作用を持ち、別のものは相乗作用があります。たとえば、カルシウムを摂りすぎれば亜鉛の吸収量を減らし、亜鉛を摂りすぎれば銅の吸収量を減らします。
 栄養の相関関係は非常に複雑で、人間が簡単に操作できません。
 ゲルソン・クリニックの「高カリウム/低ナトリウム」療法も、実際はカリウムとナトリウムの二つの栄養だけに注目しているわけではありません。Dr.ゲルソンは細胞内に多いカリウムとともに移動する複数のミネラルを「カリウム・グループ」、細胞外に多い複数のミネラルを「ナトリウム・グループ」と呼び、栄養はトータルで働くと考えました。
 そして、病気になった人の細胞内のミネラルバランスを正すため、健康な土壌で育った野菜や果物が持つ自然なミネラルバランスをまるごと信頼して、ジュースに搾り出し、患者の治療に成果を出していったのです。

■参考書籍
『Dr.マックス・ゲルソンのゲルソン療法 細胞から回復する高カリウム低ナトリウム療法 セオリー編』、氏家京子著、2019年発行

ゲルソン療法に関する日本語HP
ゲルソン・クリニックのHP

このコラムを書いた人
氏家京子(うじいえ・きょうこ)

1972年生まれ。
健康雑誌の編集部に6年勤務。米国系統合医療サービス企業に1年勤務。 フリーランスジャーナリストとして独立後、統合医療や自然療法分野の取材を国内外で継続し、医療消費者への教育活動、統合医療に関する翻訳書籍の出版を行う。
1998年から始めたゲルソン療法の取材経験は日本でもっとも豊富で、米国ゲルソン・インスティテュートから日本アンバサダーに任命される。
ゲルソン療法のワークショップを開催するほか、ゲルソン・クリニックへの入院希望者に通訳として同行する業務も行う。
ゲルソン療法の患者教育を担うゲルソン・エデュケーター育成、ゲルソン療法専門医の育成にも携わる。
2019年6月、『Dr.マックス・ゲルソンのゲルソン療法 細胞から回復する高カリウム低ナトリウム療法 セオリー編』を出版。

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