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ゲルソン・インスティテュート・アンバサダー氏家京子 連載コラム第2回「野菜ばかりで冷えないの?」

この記事は2020年1月10日、ヒューロムWEBマガジン naturise「ゲルソン・インスティテュート・アンバサダー氏家京子 連載コラム第2回『野菜で治すクリニック』」に書いた記事を転載しています。

ゲルソン療法の効果

 《野菜食が治療法》という世界でもめずらしい治療を行うメキシコのゲルソン・クリニック。多くのがん患者さんが訪れていますが、気になるのはその効果です。
 食事療法の効果を数字で示すのは難しいのですが、ゲルソン・クリニックで治療した皮膚がんの患者152名の5年生存率をカリフォルニア大学サンディエゴ校「がん予防&コントロールプログラム」チームが調査し、次のように発表しています。(悪性黒色腫、25~72歳、入院時期:1975~1990年)

 ■ゲルソン・クリニックの治療
ステージⅠ・・・100%
ステージⅡ・・・100%
ステージⅢA・・・82%
ステージⅢA&B ・・・71%
ステージⅣA・・・39%

 例えば「ステージⅠが100%」というのは、「その診断から5年後に患者さん全員が生きていた」という意味です。「ステージⅢAで82%」はとても高い数字です。
 同じ病気を診断されて一般の治療を行った患者の最新の5年生存率は次の通りです。

■一般の治療(米国Melanoma Research Alliance、2019年)
ステージⅢ 63.6%
■一般の治療(全国がんセンター協議会、2017年)
ステージⅢ 53.1%
時代が進んでも、一般の治療に比べてゲルソン療法の5年生存率が高いとわかります。

どのように治すのか

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ゲルソン・クリニックの野菜食治療には、次のことが含まれます。

●野菜と果物の搾りたてジュース
●野菜を主食にした食事
●サプリメント
●コーヒー浣腸

この4つの組み合わせで、身体に自分自身を治す力「治癒力」を取り戻させます。
 最近、治癒力や自然治癒力という言葉はよく使われますが、治癒のためには言葉の通りに「力」=「エネルギー」が必要です。
 実際、ゲルソン療法の野菜食は、患者さんの身体が簡単にたくさんの「エネルギー」を生み出せるようにシステム設計された治療食になっています。

治癒力を生むシステム

 治癒力不足で病気が進行しているとき、体のエネルギー工場「ミトコンドリア」ではシステム障害のような状態が発生しています。システム障害は細胞に過剰な水が溜まることで発生します。水溜りの環境にあるミトコンドリアはエネルギーを作れません。そのため、ゲルソン療法では細胞内の水はけを良くすることにフォーカスした食事を行います。
 水溜りの原因は細胞内のミネラルバランスの狂いです。とくに、カリウムとナトリウムの比率が表のように逆転していて、多過ぎるナトリウムが水溜りを増やしています。

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このような細胞のミネラルバランスを健康な状態に戻すために独特な野菜食を採用しています。

自然なミネラルバランス

 この野菜治療食のいちばんユニークな特徴は、塩を使わないことです。細胞内の水溜りを長期化させるナトリウムを減らし、その代わりに減ってしまったカリウムを増やし戻すためにそうします。
 食材の自然なミネラルバランスを保ったまま食事をすると、カリウムとナトリウムを次の表のバランスで摂取することになります。

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 塩を一粒も使わずに食事をしますが、食材に元々含まれているナトリウムを摂取しているため、必要量である1日600mgをクリアすることができるようになっています。

効果が出ると体温が上がる

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 「ジュースをたくさん飲んで野菜ばかり食べていると体が冷えるのでは?」と心配する声をよく聞きます。
 細胞に過剰な水が溜まり病気が進行している患者さんは皆、寒がりです。温暖なメキシコのクリニックでも、入院時の患者さんは夏でも重ね着をしています。
 ところが、治療がスタートすると日毎に基礎体温が上昇し、冷えから解放されます。
 これは、高カリウム低ナトリウムの野菜治療食が細胞の水溜りを解消するからです。細胞が十分なカリウムで満たされ始めると、ミトコンドリアは順調にエネルギーを作るようになり、その副産物として同時に熱も発生します。こうして治癒力が上がるのです。

■参考書籍
『Dr.マックス・ゲルソンのゲルソン療法 細胞から回復する高カリウム低ナトリウム療法 セオリー編』、氏家京子著、2019年発行

ゲルソン療法に関する日本語HP
ゲルソン・クリニックのHP

このコラムを書いた人
氏家京子(うじいえ・きょうこ)

1972年生まれ。
健康雑誌の編集部に6年勤務。米国系統合医療サービス企業に1年勤務。 フリーランスジャーナリストとして独立後、統合医療や自然療法分野の取材を国内外で継続し、医療消費者への教育活動、統合医療に関する翻訳書籍の出版を行う。
1998年から始めたゲルソン療法の取材経験は日本でもっとも豊富で、米国ゲルソン・インスティテュートから日本アンバサダーに任命される。
ゲルソン療法のワークショップを開催するほか、ゲルソン・クリニックへの入院希望者に通訳として同行する業務も行う。
ゲルソン療法の患者教育を担うゲルソン・エデュケーター育成、ゲルソン療法専門医の育成にも携わる。
2019年6月、『Dr.マックス・ゲルソンのゲルソン療法 細胞から回復する高カリウム低ナトリウム療法 セオリー編』を出版。

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