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VISITOR'S CARD

リラクゼーションの繁忙期と言われる夏が終わる前に、久しぶりに夜のシフトを入れてみました。
当日でも空いている時間にシフトインできる柔軟性がリラクゼーションマッチングサービスの良いところです。

リモートワークの日は、有り余る体力というか、エネルギーが行き場をなくしてしまいます。
体力を発散するためだけなら、ジムや空手で汗を流すのもいいけれど、どうせなら疲れた誰かを癒すために使いたい。
そんな初心に帰って予約を待っていると、新しい出会いが訪れました。

予約リクエストを送ってくれたお客様のニックネームは、外国人のお名前。どうもアジア系の男性ようです。
教えてもらった都心の住所を訪ねると、ちょっとびっくりするぐらいの高級ホテルのようなタワーマンションでした。

持ってきたヨガマットを前に抱えて、恐る恐るエントランスに入ります。
コンシェルジュに軽く会釈して、そのまま通り抜けようと、エレベータホールまで向かいました。
そして、エレベータのボタンを押そうとした時、ボタンを押せないことに気がつきます(笑)

エレベータのボタンは、鍵がなければ押せない仕様になっているようです。
かといって、部屋番号を呼び出すためのインターフォンもありません。
オートロックなら、普通は部屋番号を呼び出すためのインターフォンがあるはずなのに、どういうこと?
よく分からず、教えてもらおうと、コンシェルジュのいる受付に向かいます。

「ご訪問の方ですか」
コンシェルジュの方に尋ねられて、そうですと答えると、英語で「VISITOR'S CARD」日本語で「お客様ご訪問カード」と書かれた用紙を差し出されました。
「ここに、ご来館者様のお名前と、訪問先の方のお名前をお書きください」
と言われ、受け取ります。

この時、この高級マンションは、訪問者が入居者に直接連絡できないようなセキュリティの高い仕組みになっていることに、やっと気がつきました。
ここまで徹底したマンションに呼ばれるのは、初めての経験です。

VISITOR'S CARDに最初は焦って本名を書いてしまったけど、それではお客様は私だと認識してくれません。
仕方なく私のニックネームで書き直しました。
私はお客様の本名を知らないので、訪問先のRESIDENT'S NAMEには、お客様のニックネームを書くしかありません。

「フミコさん、ですか」
コンシェルジュの方に怪訝そうな顔で聞かれて、はいと答えます。
「訪問先のお名前は、こう伺っているのですね」
そうですが、お名前は違うのですか?と訊いたけど、答えてはもらえずスルー。本当にセキュリティが高い。

このコンシェルジュの方は、私のことをいかがわしい仕事の人だと思っているのかな。
何となく居心地の悪い気持ちでいたけど、訪問先に電話してくれて、訪問の許可が出て、エレベータのボタンを押してもらえることができました。

やっと辿り着いたお客様は、がっしりした体型で、同年代のシンガポール人でした。
日本語が上手で、緊張する私を笑顔で出迎えてくれます。

シンガポール人と聞いたけど、少し突っ込んで聞くとモンゴル系と言われて、合点がいきました。
モンゴルの方は、何となく全身のバランスの中でも頭部が大きくて、しっかりしている印象があります。
そのせいもあるのかないのか、凄く頭が良いイメージです。

お客様は、筋肉がすごくて硬くなりやすいのか、腰痛がひどいとの事。
正に足圧が打って付けの身体です。
もともとシンガポールでは足圧によく通っていて、東京でもお店を探していたけど、今まで足圧のお店を探し当てられないでいたとのこと。
そんな中、リラクゼーションマッチングサービスで私を見つけてくれたそうです。
日本にはどうして足圧のお店があまりないのか、シンガポールにはたくさんあるのにと聞かれました。
そうですよね、私も不思議に思っていますと答えます。

足圧の人の体をほぐす効率は手技に優ると思うけれど、日本人は人が人に踏まれるような、どちらかというと見栄えの悪いサービスを好まないのかもしれません。

足圧整体は、海外では普通なのに、日本では施術のカテゴリとしてすら、なかなか認められない散々な現状。
悲しい現実だけど、それを私より嘆いてくれる希少なお客様に出会えました。

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