〔小説〕朝起きたらアザラシになっていた その２
途中からだと話が見えないから ↓最初から読んでね！
（･ω･っ）Зだけどマスクを着けていない！！うかつだった！！
ここは半分ボケだが半分本気だ。
人類の歴史は動物を介した伝染病の歴史でもある。
ペスト、梅毒、天然痘、スペイン風邪。
そして現在、毎日報道されるコロナウイルスは動物から人間に伝染したと推定されるように、突然変異から動物の体内にあるウイルスが人間に感染するケースは人類史の中で幾度とあり、逆もまた然りなのだ。
そんな訳で俺はドラッグストアで（･ω･っ）Зでも装着できるマスクがないか店員に尋ねるが、あるわけないので併設されている100円ショップで買ったゴム紐で結んでお面のように後頭部で固定させて解決。
（･ω･っ）Зだけどポイントカードは忘れない。梱包用の新聞紙も忘れずもらってゆく。
荘子（そうし）の話に「胡蝶（こちょう）の夢」があって…パシャパシャうるせーよ！
学習院らしき制服の一団がスマホで撮影するからシャッター音でうるさく、フラッシュ焚くのまでいるから一喝したら何か捨て台詞を吐いて去っていった。
マスクとゴム紐とタバスコを1枚3円のレジ袋に入れて歩くなんてありふれてるだろと言いたい。
残ったゴム紐を手提げレジ袋に通して首からぶら下げるようにした。これで貴重品も含めた荷物の持ち運びが楽になった。
「胡蝶の夢」の話がまだだった。でも、その前に体重と身長が変わったか気になるので工事現場のお兄さんに100円ショップで買ったメジャー渡して測定をお願いする。
メジャーで測定される俺のそばに煙草の箱を置いてから彼らが職場で使うトイカメラで記念撮影される。
正直愉快ではないが無料でお願いしたのだから、これが代償だと割り切る。
体長180センチ。
体重は市営プールに入って体重計に体を載せる。スイミングスクールの子供たちが
「エビフライだ！エビフライだ！」
連呼するので一喝しようと思ったけど母親が出てきてクレームつけられると面倒だから黙って出入口に向かう。視界に入った掲示板を見てポイントカードが貯められるようになったのを知り、入るときに頂いたレシートを手に再び会計へ。
（･ω･っ）Зだけどポイントカードは忘れない。割引券も忘れずもらってゆく
体重110キロ。人間のころと身長、体重ほぼ同じ。
そうそう「胡蝶の夢」忘れるとこだった。その前に便意を催したので川で用を足す。マスクも体毛もドブ川臭い。川岸に置いてきた財布とスマートフォンが無事なのを確認すべくまずは財布を開く。身分証も無事にある。身分証の顔写真を見て昨日までは冴えない中年男だったのを自覚する。
身分証の顔写真を変更しないとまずいよな？それ以前に俺の戸籍あるの？2002年に（･ω･っ）Зのたまちゃんが住民票をもらったとニュースになったけど、俺の場合、保険証も無いと生活に困る。年金手帳もないと老後が不安。
確認のためにキックボードでバス停に移動して区役所へ向かう。
ハンドルで操作してブレーキをと考えたのだけど、（･ω･っ）Зのヒレが届かないので返品しようかとも思ったが、スケートボードに買い替えるのも面倒なので畳んだまま使うことにする。
フック付きロープで体に固定させたキックボード背負ってバスに乗るとICカードが届かないので運転手にお願いしてタッチしてから後ろの座席に座ろうと思ったが、座席を汚すので地べたに転がることにした。キックボードも忘れずそばに置いてから車内の路線図を見て区役所前の停留所を確認する。
俺の大脳は今どうなっているのだろう？前頭葉もどうなっているのか気になる。空間認識や記憶力は今のところ変化を感じない。こうやって考えている間にも女学生たちが俺より高級なiPhoneで俺の撮影に躍起だ。
首をかしげて媚びを売ってみる。
女学生たちが黄色い声をあげた。車内は撮影会場となっている。
ぼんやり女学生たちを見つめるとふと、カフカの『変身』の内容を頭の中でなぞっていく。
『変身』の主人公は親兄弟と一緒に実家暮らし。そんな環境に甘えて「働きたくない」言う引きこもりに似たシチュエーションだ。
家族がトレイに食べ物を載せて主人公の部屋の前まで運んでくるところはテレビや漫画で見た引きこもりそのものだ。
しかし、俺は実質的に15歳から家事全般を不器用ながらこなしてきた身分であり。親兄弟との関係は悪くないが介護費用でギリギリの生活で援助は期待できない。介護のために俺が寝るスペースも使用しているため。帰省しても泊りはビジネスホテル。
こういった状況なので一人…もとい一匹でこの「東京砂漠」
…いや、温暖化で新海誠のアニメ『天気の子』のように雨が降りしきる現状では
「アスファルトジャングル」
とでもいうべき。
この「アスファルトジャングル」を俺一匹で生きてゆかねばならない。
などと感傷に浸ってみたが、隣人の存在を思い出す。
一匹と一人に訂正だ。
俺は野生肉食獣の（･ω･っ）Зなので俺と隣人はさしずめ『美女と野獣』。
このヒレと尾びれでは美女の手を取って踊れないのが残念だ。
すっかり忘れていた「胡蝶の夢」の話がまだだった。道教の大家、荘子が寝ていると…バスが区役所前へ向かっている。降りなければ！ボタンが届かないので女学生に頼んで「次止まります」のボタンを押してもらう。
這って進みながら「鬼滅の刃」に登場する嘴平伊之助(はしびら いのすけ)みたいに頭の皮を取ったら実は女みたいな顔だったりして。などと妄想するも10代の時にお金もらって漫画のキャラクターが着こなす恰好するコスプレをして歩いた時に,
「男でもいいか」
と横でボソっと呟かれて背筋が寒くなるという恐怖体験談を思い出したので頭の皮を取ったら冴えない中年男のほうがいい。俺の中でそう結論がでた。
いま区役所の窓口で住所氏名を書き込んでいる時点で伊之助と違って文盲（もんもう）ではないし安全運転を心がけるので猪突猛進とかありえない。
むしろ五反田駅や品川駅で見かけた信号無視するウーバーイーツの自転車宅配のほうがはるかに猪突猛進している。あいつらいつか死ぬぞ。
そういやキックスケーターがやけに高価で重いと思ったら最高時速30キロ出す電動だった。（･ω･っ）Зも道路交通法を遵守して安全運転したいから警察署に行って免許証あれば（･ω･っ）Зでも運転していいのか聞いてこよう。
ニーチェの永劫回帰を語ったけど俺の生活も（･ω･っ）Зであること以外は特にこれといった事件も起こらないと思う。
俺が若いころにサザンオールスターズの桑田佳祐が監督した『稲村ジェーン』もこれといった事件も起こらずに終わった気がするんだが、あれはあれで好きだった。結構売れた映画なのにDVDにもなってないのがちょっと寂しい。
話を俺の生活に戻すが、仮に続編書いても「日常系」と言うジャンルの作品みたく何も起こらないので読者は怒らないでもらいたい。
でも、せっかく読んでくれているのだからささやかなサービスとして文豪の真似して知人に金の無心をするためのメールを書くぞ。
と思ったけどアマゾンで注文した『文豪たちのずるい謝罪文』が届いていないのでまた今度。
そんなこんな妄想にふけると呼ばれたので再び窓口へ向かって健康保険と年金は無事なのか？戸籍はきちんとあるか確認する。
区役所が俺のマイナンバーカードで照会した。全部無事だった。
（･ω･っ）Зだけど保険証も使えるから2か月に1度の歯石クリーニングも3割負担の500円でできる。
（･ω･っ）Зだけど保険証は忘れない。キシリトール飴も忘れずにもらってゆく。
でも、歯科医院で（･ω･っ）Зの歯石もクリーニングしてくれるかな？
できないと俺が困る。
野獣たるもの食らいつく牙がダメでは話にならない。あとで糸ようじとデンタルフロスを買い足そう。
歯科で歯石クリーニングに行ったら歯科技師が困るかと思いきや、いつものように座ろうとして（･ω･っ）Зなので腹ばいの楽な姿勢で何事もないように歯石クリーニングが行われててゆく。
俺（･ω･っ）Зなんだけど疑問を感じないのだろうか？人間とまったく構造ちがうんだよと思っていたら声をかけられたのでやっとか思ったら、
「もっと大きく口を開けてください」
言われたのでクロマグロを丸ごと食う勢いで口を開けてみせた。
「ありがとうございます」
歯科技師は淡々とお礼を述べながら歯石を取り除いてゆく。
手術前にやめてからタバコ吸ってないので大体40分で歯石クリーニング終了。うがいを終えてから歯科技師に、
「どうですか？」
と尋ねたら
「奥歯にシミが残ってましたねぇ、お茶やコーヒーを頻繁に召し上がってませんか？」
「毎日です」
「どうしても奥歯は磨き残しができますので、定期的なクリーニングをこのまま続けてください」
うーん、いつもの会話だ。
俺はいつものように保険証を提示して会計を済ませてからキシリトール飴を頂戴して帰宅する。
帰宅してから今朝どこに出かけようとしていたのか思い出す。
「豊洲新市場だった！マグロが俺を待っている！！」
翌朝5時、卸売業者がマグロに襲い掛からないよう俺の口へ京都名物の竹筒羊羹を咥えさせてから豊洲新市場の中へ入ることを許された。
卸売業者のおやっさんが『鬼滅の刃』好きなお孫さんにプレゼントするつもりだったのかも知れない。
だとしたら申し訳なく思う。
セリまでの待ち時間にアマゾンで注文した『文豪たちのずるい謝罪文』が届くのを待ちきれず、電子書籍で購入のちダウンロード。よし、読者に約束した文豪の真似した金の無心メールをかくぞ！
目ぇかっぽじって御覧あれ！
令和二年十月三十一日 竈門猫二郎宛
拝啓
貴兄から借りたお金を返さねばならないと用心していたのですが、ゆうべ借りた金を受け取ると豊洲新市場でマグロを買ってみんな呑んでしまい、今月お返しできなくなりました。たいへん悲しくなりましたが、どうぞかんべんしてください。
小生こんどFXをやろうかと思っていますよ。近況お知らせまで。
海豹安吾
竈門兄
たまに「毎日ヒロポン打って書いてた坂口安吾（さかぐち あんご）みたいですね」言われるので褒めてるのか貶しているのかわからない。両方だろう。
そんな妄想を繰り広げていると小腹がすいたのでパンと牛乳をレジ袋から取り出す。
人間だったころの習慣でレジ袋に白髪染めも入っていた。
（･ω･っ）Зなので白髪染めは必要ないのに…
俺は肩を落とした。あれ？（･ω･っ）Зだから肩はないか。
つづく。
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