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「時」の小学校

第一話:時間の冒険

ブンは15歳の少年で、暑い夏のある日、朝の光が窓から差し込む中で目を覚ました。外は不思議な黄色い光に包まれている。ブンは驚きながら窓の外を見つめた。外の景色が黄色一面に変わっているのは初めての経験だった。

「何だこれは……」

ブンがつぶやいたその瞬間、突然、稲妻が空を裂き、激しい爆発音と共にブンの庭に堕ちた。驚きのあまり後ずさりするブン。稲妻が落ちた場所には、黄色い「時計」がふわふわと浮いていた。まるで魔法のように。

「なんだ、これ……」

ブンはその時計に手を伸ばした。触れた瞬間、強烈な光に包まれ、次の瞬間には自分の家の庭ではない場所に立っていた。見覚えのある場所。それは、ブンが小学生の頃に遊んでいた公園だった。

「これは……まさか、過去に戻ったのか?」

周囲を見渡すと、そこには昔の友達、ニノと太陽がいた。しかし、彼らは激しく争っていた。ブンは二人に近づいた。

「おい、何してるんだ?」

ニノは涙目で太陽を睨みつけ、太陽も怒りの表情を浮かべていた。二人の母親も現れて、お互いを罵り合っている。

「ブンは、私のボーイフレンドよ!」

「いいえ、ブンは私のボーイフレンド!」

ニノの母は、「太陽って性格悪い」と言い、太陽の母は、「ニノは性格が悪い」と言い合う。状況はまさに泥沼状態だった。ブンはどうしたものかと悩んだ。

「あの……ちょっと待ってくれ。何が起こったんだ?」

ニノが涙ながらに話し始めた。「アレンが、ブンが太陽のことが好きだって言ったの……でも、太陽には、ブンが私と付き合ってるみたいって言ってたの。だから、こんなことに……」

ブンは唖然とした。アレンの根拠のない噂話が、こんな大騒動を引き起こしていたのか。ブンは冷静に考えた。過去に戻ってきた理由は、この状況を解決するためだろう。

「わかった。まず、みんな落ち着いてくれ。アレンと話をしよう」

ブンはニノと太陽を連れて、アレンの家へ向かった。アレンの家は公園からそれほど遠くない場所にあった。アレンは庭で遊んでいた。ブンが近づくと、アレンは一瞬驚いたようだったが、すぐにニヤリと笑った。

「おい、アレン。お前、なんでそんな噂を広めたんだ?」

アレンは肩をすくめて言った。「別に、面白そうだったからさ」

ブンは怒りを抑えながら言った。「そのせいで、ニノと太陽が大変なことになってるんだぞ」

アレンは少し戸惑ったようだったが、すぐに顔をしかめた。「でも、それってただの冗談じゃん。みんなもそう思ってたし」

ブンは深呼吸して、アレンに向き直った。「冗談じゃ済まないんだ。みんなが本気で怒ってる。だから、ちゃんと謝ろう」

アレンはしばらく考えた後、頷いた。「わかったよ。でも、どうやって謝ればいいんだ?」

ブンは微笑んだ。「まずは、みんなの前で真実を話してくれ。それだけでいいんだ」

アレンはブンの言葉に従い、ニノと太陽の前で謝罪した。二人は最初は驚いていたが、アレンの誠意を感じ取り、次第に和解していった。母親たちもまた、お互いに誤解を解き、平和な日常が戻ってきた。

そして、ブンは再び浮かぶ黄色い時計に手を伸ばした。再び強烈な光に包まれ、目を開けると、再び現在の自分の家の庭に立っていた。

「あれは……夢だったのか?」

しかし、ブンの手にはあの黄色い時計が握られていた。それは確かに現実だったのだ。ブンは時計を見つめながら、微笑んだ。過去に戻ってきたことには意味があり、彼はその意味を理解していた。

「時間は大切だ。そして、噂話や誤解は簡単に人を傷つけることがある」

ブンは心に誓った。これからは、友達との絆を大切にし、正しいことを伝えることの重要性を忘れないと。

その後、ブンはその時計を大切に保管し、いつでも時間の旅ができることを胸に秘めながら、友達との関係を大切にする日々を送るのだった。

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