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「エデンの思い出」 本多裕樹 詩

「エデンの思い出」







時はどこまで、あるか

どこまで、恋の想いは消えて、思い出される

悲しいことなのだろうか

思いの炎も立ち行くに

草木もまた燃えて広がる

夜道もまた明るく

昼のような星の光に私たちは恋を思い出す

その微かな火さえも

一度、点じれば世界を焼き尽くす

人間の心臓は幽霊を漂わせた憂鬱に苦悶する

それは火だということ

炎は体を蜘蛛にわだかませ

月を見よ

どこまでも深淵な

月を崇めよ

どこまでも高き神秘

お前をもって私は愚かになり

夢を見るのだ。影ひろがる光の世界

アルシオンの光は大地をつつむ

時の終わりも来たもので

君の心を知るにいたるか。月よ

恋は、

お前の心にあったものだろう

月をどこまでも追い求め

神秘の女性をながめている気分だ

果てはあった

ありえる限りお前の中に私はいる

月の女神は立ち現れて

花の園も見てみたい

そこはアドンでエデンなのか

天国を期待してはその深淵を行きどこまでも

月の世界に魅せられる

アルテミスの神殿の予感がそこにはあった

恋の矢に打たれ

私は鎖骨を崇める

火は心臓を煮え溶かす

いつしか命も消え去りて

霊なる姿とあいなりて

神々の世界を旅すると思いきや

白き世界にただ一人立ちて、茶をすする

大地の世人、何も知らずただ、傍観する人

人はあって、恋は消えない

乙女を見つめるだけで満足で

おのこの思いは満たされる

16歳ともなれば、皆、虜になるはずだ

そうして、あらゆる生ける者がアドンの地へと導かれる

果ての果て、

お前はいたか

もう、声も忘れた

ただ、私は灰になり

鉄の時代は終わった日に

水となって風となる

黄金境を夢に見て、花の咲く場所を探している

ただ、懐かしき君よ、

時の終わりは過ぎ去りし、

もう、この世界は無いことを

ただ、世界は終わっても

私たちがいるだけで、天空も消えて

何もかもが消えて、

青空に見える星

夜空の暗黒に昼

光の世界が開ける日に我らは恋のうちに昇天する

お前だけを見ていた

お前があらゆる形を世界に広げて

すべての乙女が

あらゆるパーツに分けられて

お前を今でも見ているのだ

君は誰でも君を見て

どこでも、その原型を探してきた

君は世界にどこにでもありえして

時の終わりまでその映像が映写される

ある一人の乙女の人生が劇場となり

私たちは、恋の微かな炎を灯してくれるのだ

君は今

天空にありて、

私には

天空は消えて

果てにあるエデンでの思い出を糧に

今日も迷い生きるのであった

華やかな

泉に

水に

浸り

その時

湿原の中に埋もれて

何かを探しているのだ

花の香りのするところに

私はどこにいても思い出し探す

お前を

君を

あなたを

静寂に秘められた知恵を探し

見つけるまで

花を

華を

その香りを

思い出す

懐かしき

夏の

春の

冬の

秋の死

あなたは私の目を閉し

深淵な叡智を教えてくれるのだった。

ああ、

ああ、

白き世界で花一輪をながめ

知恵の果実を食したのだ



令和6年4月18日 本多裕樹 

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