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【#2宮本 純子】災害看護の現場と学術研究の場をつなぐ存在に

HuMAの活動に携わる人々に注目するインタビュー。第2回目は、大学で看護学の教壇に立つ宮本純子さん。将来の災害看護を担う人々の育成に携わりながら「自分のフィールドは災害の現場」と話す、宮本さんの想いとは。

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“看護”という共通言語

災害人道支援のファーストミッションは2008年、中国西部大地震での活動でした。勤務していた兵庫県災害医療センターからJICAの支援チームの一員として派遣され、病院で現地の医師や看護師たちと連携しながら被災した人々の看護にあたりました。

中国と日本の医療従事者が入り混じる現場。しかし不思議と、次はどんな処置をすればいいのか、何を準備しておく必要があるのか、言葉で表さなくても互いに理解して動くことができました。

言葉の壁はあっても、私たちには“看護”という共通言語があったのです。それぞれが自国で患者さんに向き合い続けていることによって生まれる連携。その力強さを実感しました。

宮本看護師(中国西部地震)
中国西部地震被災地の病院に臨時で設けられたICUにて

日本と世界の看護の違いを感じたのも、中国での活動がきっかけです。日本の看護は世界の中でとても丁寧だと言われていますが、実際に被災地では私たちのケアが高く評価され、日本の看護の強みを再認識することができました。

一方で、海外の看護から学ぶ点もありました。日本では、看護師は医師の指示を受けて動くという認識が一般的ですが、世界ではそうではないのです。看護師が現場を取り仕切り、チームをマネジメントすることも多くあります。「私たちができることは、まだまだたくさんある」他国から来た看護師たちはそのことに気づかせてくれました。

現場で触れる人々のたくましさ

被災地でのHuMAの任務の一つに「ヘルスプロモーション」というものがあります。これは、人々が健康を維持するための知識・情報を提供したり、生活上のアドバイスを行ったりする活動です。

2014年から2016年にかけて、ホンジュラスで特にこの活動に携わってきました。産前産後の母子の保護や避妊の大切さ、デング熱など危険な感染症の予防、栄養と生活習慣病の関連性。世界には、このような知識や情報が浸透していない地域がまだ数多くあります。

正しく知って病気を予防することで、救える命があるはず。今後もこの活動にはしっかりと関わっていきたいと思っています。

宮本看護師(ヘルスプロモーション)
ホンジュラスの小学校で手洗いのデモンストレーション

私は今、大学で災害看護・国際看護の分野で教壇に立っていますが、自分にとってのフィールドはあくまでも被害を受けた人々がいる現場です。

学生たちに現場の生の声を伝えていくことが自分の使命。また、反対に大学での研究から得た手法を身につけて現場に還元することも自分の立場だからこそできることだと思っています。

現場での災害看護と学問としての災害看護。両者をつなぎ、将来的にはこの分野についての知識・センスを備えた人たちが被災地で力を発揮できるような状態を目指したいと考えています。

災害は起こってほしくないものではありますが、災害があったからこそ出会えた人たちがいます。被災しながらも笑顔を忘れない現地の人々、資材や設備が不足する中で一緒に考え工夫して医療活動を行ったチームのメンバー。彼らと共に過ごす中で、人が本来持つたくましさに触れる時、私は自分の原点に返ることができるように思うのです。

宮本看護師(現地の皆さんと)
2012年フィリピンを襲った台風の被災地で 人々は温かく、優しい

災害医療支援活動には多くの方々の支援が必要です。一人ひとりの協力が支えになります。HuMAについて、より詳しく知りたい方はこちら

[TEXT:堂本 侑希(広報ボランティア)]

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