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嵯峨野綺譚~カミノキ神社~

 ついこの間までな、大きな榎(エノキ)の木ィがようけ生えとったんやけどな、台風でな、折れてしもてん。
 榎の葉っぱの影でな、祠の前に立つとな、昼間でも薄暗かったもんや。涼しいてな。
 皆、ようお参りしはった。朝晩燈明絶やさんとな。
 いまではもう、スカスカや。殺風景なもんや。木ィ、みな切ってしもた。
 昔は子供の遊び場でな。
 狭い境内をぐるぐるぐるぐる走り回っとった。
 子供減って、もう、遊ぶ子おらんな。
 夏になるとな、神社の横の道で、ラジオ体操やるんや。近所のおっさんやらおばはんやら子供やら、みな集まって。
 テント張って地蔵盆もしたな。福引やってフォークダンスしてな。賑やかやった。
 子供減って、いつの間にや知らん、やらんようになってもた。

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