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軽率に屋上に上る高校生たち

わたしは映画が好きだ。
とにかく暇さえあれば見ている。
映画館でも、サブスクでも。

特に好きなのはホラー、スリラー。
なぜかはあんまりわからないけれど、人の恐怖の感情は愛情と表裏一体であることに興味がある、のだと思う。
単純にビックリするのもエンタメ的に楽しんでいる。


かと思えば、超絶ドタバタハッピーエンドストーリーも好きだ。
軽率にキャメロンディアスを起用するような。

「泣ける」系も見る。
当然めちゃくちゃ泣く。

とにかく映画が好きだ。
「映画は暗闇で体験するもうひとつの人生」と以前何かで見た。
本当にその通りだと思う。

わたしは評論家でもなんでもないし、
映画を「面白かった」「面白くなかった」で判断するのは野暮だと思っている。
そもそも監督が「面白いものを作りたい」と思っているのかわからないのだから。

だからどんなジャンル、内容でも受け入れて見るようにしているが、ただひとつだけ、個人的に思う描写がある。


軽率に屋上に上る高校生たち

特に青春ラブコメではすごい頻度で、
シリアスなストーリーでも学生時代の懐古シーンで、
大雨の中ずぶ濡れで泣きながら、
晴れた日にはキャッチボールするために、
どこで手に入れたのかわからない合鍵を持って、
ある人は自殺しようと、
またある人はその自殺を止めようと、
バチバチの殴り合いをしたり、
ヤンキーが昼寝したり、
はたまた告白するために

屋上に上っている。

どうしてもわたしはこの屋上に上る高校生のシーンを見ると軽く冷めてしまう。

屋上に上る青春は、現実的ではない。
製作陣の大人たちの「こんな青春送りたかったわ〜」という願望がうっすら透けて見える気がするのだ。

こんなnoteを見つけた。

とても興味深く拝見させていただいた。
おそらく、1980年代後半から、諸般の事情で学校やその他の施設で屋上に上ることが出来なくなったらしい。

悲しいけれど、それが現実。

わたしは1994年生まれの26才で、学生時代に屋上に上ったのは小学生のとき。
学校の歴史だか何だかの授業でクラス全員で上ったくらいだ。

でも映画ではそれはもう頻繁に上っているし
「いつもの場所」であることもしばしば。


屋上に上るという青春

確かに屋上に上ると青春感がすごい。
学生服と屋上はめちゃくちゃ合う。
牛タンとわさび醤油くらい合う。(是非試して!)

だけど、実際問題、今の中高生は学校の屋上に上りたくても上れない。

屋上に上るシーンはきっと、監督や脚本家の「屋上に上りたい青春だったわ〜」の現れだと思う。

しかも幸か不幸か、下手したら屋上に上ったことすらないはずの視聴者にもその「エモさ」は伝わる。

図らずも(?)「屋上に上りたい青春だったわ〜」の連鎖を産んでしまっているのだ。

「屋上に上る」という虚像の青春に憧れを抱いた若者がそれを後世に受け継ぎ、終わることのない渇望となる。

高いところは気持ちがいい。
金持ちはなぜかタワマンに住む。
屋上への憧れはすごくわかる。

でもそれを安直に青春の代名詞としていることに何だか残念さを覚えてしまうのだ。


後天性の青春

これはわたしの持論だけど、この世のどこを探しても、「青春しきった学生時代だった」と言う人はいないと思う。

ある人は勉強を、部活を、バイトを、恋愛を、何かしらを頑張ったり悩んだり楽しんだりして、泣いて笑って葛藤しながら成長した青春があったはず。

だけど、「そうじゃなかった方」を求めるのが人間だから、あらゆる事情で出来なかったことを青春に置き換えて、大人になってからふんわり望んでいる。
わたしが思うに、それこそが後天性青春の渇望。


わたしは佐賀県の田舎で生まれ育ったので、青春のほとんどは学校かゆめタウンで過ごした。


大人になって関西で暮らし始めて、グリコの橋を制服でうろついているJKを見たときには差を見せつけられた気がした。
わたしの後天的な青春は都会暮らしだ。

後天的な青春はそこかしこにある。
だから別に、屋上じゃなくたっていいはずなのだ。

もちろんこだわりを持って「屋上だ!」と結論が出ればそれが正解だけど、「これが青春っしょw」的なノリはやめていただきたい。(そんなノリはない)

とはいえ偉そうに書いたものの、

『君の膵臓を食べたい』では恭子と僕が初めて2人でちゃんと会話したのが屋上だった。

『殺さない彼と死なない彼女』は屋上のシーン無くては語れない。

『坂道のアポロン』、『ビーバップハイスクール』、『クローズ』など、学園×不良と屋上は天才的相性だ。

ちなみに吹奏楽部との相性もいい。


結局、屋上という後天性の青春に変わるものはないのかもしれない。(なんやねん)


有名な言葉だが、フランスの詩人アナトール・フランスは「もし私が神だったら、青春を人生の終わりに置くだろう」と言ったそうだ。

こんなにダラダラ書いたけど、
マジでつまり、そういうことです。

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