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同期のオススメエッセイを読んでみる #6


僕は読書家だ。たぶん、同世代の中では結構読んでると思う。でもそれは文芸、特にミステリや青春小説みたいなエンタメっぽい小説が大半を占めていて、それ以外の学術書や新書、ビジネス書なんかは全然読みたいと思わない。いや、嘘。読みたいと思うことはあるけど、毎回「やっぱええか」と思ってしまう。なんか途中で飽きそうだし、同じ値段で物語が読みたいし。でも、たまに自分の得意ジャンル以外のものを読むのも悪くないよなとも思っていたので、その相反する気持ちの中間地点を取るように読んでみたのが、エッセイだった。物語ではないけど、文学性は高くて、普段あんまり読まないジャンル。ということで読んだのは、ひらいめぐみさんの『転職ばっかり上手くなる』だった。

著者のひらいさんは20代の間に6回転職した「転職のプロ」…というより「転職マニア」で、『転職ばっかりうまくなる』は転職活動中に感じた不満や驚き、転職してたどり着いた職場での出来事を、軽やかだけど剥き出しの文章で綴ったエッセイだった。ぼくは転職経験はないし、当分するつもりもないのだが、2年前の就職活動では相当苦渋を味わってきたので、ひらいさんの初めての転職活動を綴ったパートではちょっと共感できすぎてしんどかった。そう、この本、わかりすぎてしんどいのだ。たぶんぼくはひらいさんほど自分を強く持っていないし、ひらいさんほど不器用ではないのだけれど、それでもひらいさんが転職活動や新しい職場で社会と自分の間にあるギャップを思い知っていく姿には、自分のかけらがたくさんあって心が軋むような気がした。(営業職の人は『ほほえみ地蔵』の回だけでも読んでみてください。わかりすぎてしんどいです)
でもひらいさんは、社会の中で傷ついたり、失敗したりしても「私にはこれが向いていないことがわかった!」と、終始前向きに生きていて、素敵な考え方だなーと思った。うん、とても素敵なエッセイでした。

ところで、話が少し変わるのですが。
あまたあるエッセイの中から『転職ばっかりうまくなる』を選んだのは、職場の同期が教えてくれたからだった。腹の底の見えない営業スマイルが、割と普通に笑顔だったりする愛すべき同期は「これ面白いんだよ」とこの本を貸してくれた。白白しい笑みを浮かべて「たぶん君は好きだと思う」とか言って。

人から勧めらる本を読む確率って、結構フィフティフィフティだと思う。当然、思いっきり片思いしてる大好きな人が読んでる本は寝る時間を削ってでも読みたいし、酔うと本気で殺したくなるようなセクハラ発言をしてくる大嫌いな上司がバイブルにしてる本なんて絶対に読みたくない。ただ、ある程度仲が良い人、もしくはそんなにどうでも良い人が勧めてくるものってのは、正直手を出さない確率が高い。たぶん今回読んだのも、このnoteと、同期がある程度仲が良い人の中でもかなり仲の良い人で、信頼している人だったからだった。

とはいえ結局、読書は人柄とか関係性で決まるものじゃなくて、好みとかタイミングとか色々あってアタリかハズレかなんて運だと思う。

ただ、「君は好きだと思うよ」と言われて買った本が、ほんとに自分の好みだった時、本が面白かったことの喜びと、相手が自分のことをよくわかってくれている喜びが二重になって、より良い読書体験になるなぁと感じる。

今回は、そんな話でした。


#転職ばっかりうまくなる
#ひらいめぐみ

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