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27日目スペイン・ポルトガル 3,000kmのロードトリップスペインベテラン撮影コーディネーターのぶらり旅

27日目 

昨夜温泉に行こうと決めたのにAが起きてこない。11時になったので起こすと、「11時!? 11時!?」と信じられない様子。まぁそういう日もある。

Aが朝食をとって支度をして、これから昼ごはん前に二か所の温泉に行くのは無理なので、予定変更して先にポリーニョという街を見て、ランチを済ませてから温泉に行くことにする。

車中Aが20代の時に出演した連続ドラマの撮影場所が、この地方特有のお屋敷PosoConde de Gondomar ゴンドマル伯爵邸だったと分かる。何とその街は今から通る所。帰りに時間があったら寄ってみよう。彼女は当時毎週マドリッドから飛行機でビーゴに来て、車で迎えに来てもらっていたので、どこだったのかうろ覚えだった。30年も前の事だ。しかしバヨナからこんなに近かったことにAは驚いていた。シンクロニシティ

ポリーニョ

1時間ほどでポリーニョに到着。今日もうまく路駐できて、早速旧市街に歩き出す。古い街並みは風情がある。メインストリートの1軒のJoyeria Lorenzo 宝石屋ロレンソの二階のショールームにガリシアの陶器メーカーSargadelos サルガデロスの商品がたくさん並んでいるのが通りから見えた。独特のデザインと紺と白色が特徴。店に入って、サルガデロスが見たいのですが、と言うと、この奥と二階にあるのでご自由にどうぞ、と言われた。下だけでもかなりの数だが、上はフロアー全部。数百種類はある。店主が上がってきた。私が日本人なので普段使いには小さめの器の方がよく使うことを言うと、いくつかコメントをして、日本市場にこの会社が進出しようとしたときに、輸入業者から「これはこの値段では売れませんね。」と言われその理由が「品質の割に安すぎる」という事だったと教えてくれた。私は規格外になった小ぶりの皿を一枚ポリーニョ記念に買う。この店の事も思い出すだろう。梱包を待つ間小さな版画が目につき、聞けば「ガリシアの作家でこの水飲み場はアントニオ・パラシオスのものだが、彼を知っているか?」と聞かれたので、「はい、ニグランデ先日素晴らしい教会を見ました」と返事。「彼はこの街の出身で、市役所とこの水飲み場は彼の作品です」とのこと。ここでもまたあの建築家。またしてもシンクロニシティ

階段の写真を見ながら街の歴史もいくつかコメントしてもらい、街歩きがより楽しみになる。

市役所

店を出ると正面にアントニオ・パラシオスの幟が下がっている。言ってみると図書館。上の受付で何か展示でもしているのか?と聞くとまだ準備中。先日イベントが行われたようだ。市役所の建築家のサイトを教えてくれた。

アントニオ パラシオスの建築物

メインストリートに戻り、市役所へ。遠くから見ても際立った外観は美しい。中は二階までしか入れなかった。広場には建築家が座ったベンチがあり、その横の通りには彼の名前がついていた。母親がこの街の出身だからここで生まれたのだろう。街を歩き続ける。屋根裏部屋のある特徴のある建物がいくつもある。Fuente del cristo 水飲みの塔もあった。

ガリシア料理のランチ定食

一時間ほどうろうろして、ランチのレストランRestaurante Castroに行く。ネットでおいしそうな写真を見て行ってみたら、街の外れで沢山の車やトラックが停まっている。トラック運転手たちが行くところはおいしいと相場が決まっている。すぐにテラスの席に通され、今日の定食のメニューが出てきた。前菜6種メイン6種から一つずつ選んで、飲み物とパン付きで12€、デザートをつけると13€。前菜に私はガリシア風スープ、Aは鰺のフライ、メインはエイひれのガリシア風煮込み、Aは悩んだ末これは豚の後ろ足、肩のすぐ下にある肉片のオーブン焼きを頼む。ガリシアスープはキャベツ、ジャガイモ白豆を多分肉の骨でとっただしで作ったスープ。野菜たっぷりで熱々が出てきてうれしい。エイひれはアンダルシアではフライにして食べるがここでは煮る。独特の風味でおいしい。しかし量が多くて食べきれなかった。申し訳ない。食べている間もどんどん人が出て行って入ってくる。とても人気のある店で、ガリシアらしい質の高い料理が食べられて良かった。

温泉外観

いざ温泉 Termas Prexigueiroへ。ここから40分位だ。行ってみたらなんと前回来た所だった。記憶力がなさすぎ。しかしすいていてうれしい。のんびり6つの異なる温度の露天風呂を二か所の水風呂やシャワーで体を冷やしながら入る。サウナはあったけれど機能していなかった。二つの風呂は硫黄のにおいがきつい白く濁った熱めの湯。日本人好み。一時間半で一人6,40€。タオル、ビーチサンダル、水着、飲み水を持って行くことをお勧めする。日影があまりないのでキャップをかぶっている人もいた。

時間になってふと見るといつの間にかどこもすごい人。ちょうどすいている時間に来て良かった。外でアイスキャンディーを食べて水分も補給し、満足したので温泉はこれで良しとする。

邸宅エントランス付近

帰りにGondomarに行く。ゴンドマル伯爵の邸宅はものすごく大きな木に囲まれていて、外からは全く見えない。Privado(プライベート)と書かれているが、Aは入ろうと言う。ちょっとドキドキ。彼女が出演したのは18世紀のガリシアの様子をガリシア人の女流作家が書いた原作をもとに作ったドラマだったそうで、彼女は隣の富裕層の女性を演じ、この路を馬車で遊びに来たそうだ。入り口はこっちだったと案内してくれる。車が沢山とまっているので、人はいそうだ。手入れされた花もいくつか咲いている。「この扉の向こうまで馬車で乗り付けた」、とAがドアを開けると私たち位の年代の女性が出てきた。40年ほど前にここに嫁いできた方で、私たちがここに来た事情を話すと、とても愛情をもって大切にしているこの家の色んな所を案内してくれた。話の時々に英語が出てきて、どうもオックスフォード大学出だと分かる。天皇陛下御夫妻と同じだ。夏の間は家族50人がここに避暑に来ているそうだ。冬は湿気が多いのでそれほど来ないという。ブドウ棚がテラスに張り巡らされ、裏庭にもブドウが続く。去年は200Lのワインが作れたそうだ。裏には14ヘクタールの森や畑もあり、ほぼ自給自足の生活だとか。18世紀にはこの家と教会ぐらいしかない、いわゆる領主の家。小作人や使用人がさぞ沢山いたことだろう。小さな礼拝堂では今でも毎日曜日ミサを開いているので、「来ても良いわよ」とお誘いを受ける。

礼拝堂 邸宅から見た村

庭の栗の木は樹齢100年以上。この木についての詩を聴かせてくれた。私がここまでの道は素晴らしい森林浴の場所だと言うと、「森林浴」という言葉は知らなかった。これからは心して楽しむわ、と喜んでもらえた。

石壁に囲まれた庭

今日はシンクロニシティ続きのうえ、彼女と宝石屋さんというとても素敵な人たちとの出会いもあった、とてもディープな一日だった。
いつかここで撮影されたドラマを見てみよう。


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