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オフィスは死んだ。もう戻るべきではない!

ここで手に入れられるのはただの居心地の良いワークスペースだけではありません。コミュニティや空間を通じた日々のルーティンへの刺激や変化、そして自分の人生にオーナーシップを持つことの大切さへの気づき。紋切り型で作られてしまう世の中のよくあるオフィスへのアンチテーゼから生まれた新しいサービスの誕生秘話をどうぞご覧ください。



新しくImpact HUB Tokyo(以下IHT)ではじまったCOFFEEHOUSEというメンバーシップ。

今回は代表の槌屋詩野さん(以下Shinoさん)とコミュニティ・ビルダーとしてブランディングやマーケティングに関わっているKodyさんのお二人に、どうしてCOFFEEHOUSEというサービスを作ったのか。その経緯や込められた想いなどについてインタビューしました。

「COFFEEHOUSE」とは、”The office is dead.”(オフィスは死んだ。)というメッセージのもと作られた月額11000円(税込)の新しいメンバーシップ。飲み放題のコーヒーと共に集中作業にも息抜きにも利用できる「もうひとつのワークスペース」です。印刷工場をリノベーションしたラウンジスペースで、自宅勤務の日々に刺激と交流の機会を加えることができます。また特典として、食の起業家たちによるランチやお惣菜、コミュニティメンバーとのミートアップ、茅ヶ崎の野菜販売やレスポンシブルな衣食住文化の作り手が集まるマルシェなど日々色々な催しが起きているコミュニティへ参加することができます。「働くこと」と「暮らし」をよりシームレスに接続し、ライフスタイルを本当の意味で充実させるためのひとつの選択肢です。

https://hubtokyo.com/announcements/coffeehouse_announcement


コロナ禍で高まったネイバーフッドへの要求


——まず、名前を聞くだけでも、いままでのメンバーシップとは違う雰囲気がありますが、COFFEEHOUSEをなぜ作ろうと思ったのですか。


Shino:2019年くらいから共同代表のポチエと、イギリスにあるジェントルマンクラブのようなものが重要なのではないかと、話していたのがはじまりです。パンデミックが起こり、一緒に食事をとりながら人と話せる場所だったり、心理的安心を確保したままさまざまな思想を持っている人たちが集まって自由に表現できる場所がない、というようなことを話していました。

海外のコワーキングの状況を見ていると世界中のImpact HUBも半数以上が閉館しており、今後私たちのようなワークスペースはどうなるのかということを調べていました。

そしたらネイバーフッド、つまり「家の近く」で集まれる居場所作りというニーズに応えるようなワークスペースが増えてきていることがわかりました。リモートワークの浸透も追い風になっており、私たちのワークスペースでもそのようなニーズに応えたサービスが必要だなと感じました。


——「居場所を探す」動きが加速した大きなきっかけは何にあると分析していますか?


Shino:私が知っている限り、あるトレンドがありました。いろいろな都市エリアで15分圏内で仕事や暮らし、消費や娯楽が済むことが重要になってきたというものです。

Eコマースが発達したおかげで人々の大型の商業施設への依存度は低くなりましたし、「わざわざ銀座に行って買い物をする」というような特定の街での消費行動も減ってきていると思います。いわゆる「15分都市」という考え方はパンデミックを経てさらに広まったと思います。


Kody:そうですね。パンデミックの影響もあり、私たちの消費の在り方が変わっただけでなく、「仕事をする場も住んでいる所から近い方がいい。どうせオフィスに通う必要がなくなったのだから、もっと自由に働きたいし、そこがサードプレイス的に使えればもっといいかも」という風に、働く場所、リラックする場所、人と会う場所などもネイバーフッドに持ちたいという価値観が次第に醸成されてきたと考えています。




働く場に自己投資するということ


Shino:価値観によって人が集まるという話だと、私たちがオフィストレンドを見ていたときにミレニアル世代の人たちが自分のワークスペースをどう確保するかについておもしろいデータが出てきたんですよ。

UKでできた「BIRCH」というコミュニティがあります。25歳〜35歳ぐらいまでのクリエイティブ業界の人たちが、集まったり、気軽に仕事に使える場所です。

ある程度自由に使えるお金を持ちつつ、自分の働き方を自由に選べる意思決定権も持っている層が、欧米には多くなってきていたので、それが機能してできた場所だと思います。

日本だとまだ大企業やたとえスタートアップに勤めていても、自由に自分の働く場所を選べて、なおかつそこに自己投資できるような層がそこまで多くない印象があります。

海外の働き方と日本の働き方と、世代がもつ影響も少しずつ違うので、すべてコピーはできないけど、そういう要素もCOFFEEHOUSEには取り入れようと思っていました。

自由に自分の働く場所を選べて、なおかつそこに自己投資をするという選択



Kody:欧米だとフリーランスにもなりやすいし、会社勤めだとしてもパンデミックの前からリモートワークを選べる自由がありましたよね。そのため、働く環境を自分で整えることや、そこで新たな刺激を得たり、出会いを得たりということに投資するのが珍しくなかったと思います。欧米でコワーキングスペースがいち早く浸透したのもそれを裏付けています。

そしてパンデミックを経て日本でもリモートワークを余儀なくされてしまった。しかし、住居スペースが元から狭く、いままで機材や家具など自宅での仕事環境を整えていなかった人たちにとって自宅勤務を続けるのは大変だと思います。実際、私の周囲からは集中力が続かないし、新しい出会いや刺激もなくなってモチベーションを保つのが難しいという声が聞こえてきていました。今のタイミングだったら日本でもコワーキングスペースで働くこと、そして働く場所に投資をすることが若い世代にも響くのではないかと考えました。


——なるほど、そういう流れからCOFFEEHOUSEが生まれたのですね。


Kody:そうなんです。ただの作業場としてではなく、コーヒーが飲み放題だったり、起業家やフリーランスのデザイナー、建築家やプログラマーなどが多く集まるコミュニティから受ける刺激だったり、またはレスポンシブルな衣食住文化の作り手が集うマルシェや毎週のお惣菜販売があることもワークスペースを選ぶ時の特典になるんじゃないかと思いました。

起業家やフリーランスのデザイナー、建築家やプログラマーなどが多く集まるコミュニティ


Shino:ニーズに関してはKodyとかなりディスカッションした覚えがあります。25歳から35歳ぐらいの、会社員で働いている人たち。その中でもおそらく日常の繰り返しや社会にモヤモヤしているであろう人たちにスポットを当てて、その人たちが少しでも柔軟な形で自分の働き方を少しシフトできる余白や日課を変える機会提供できるんだったら、それが一番だろうなっていう話をしていました。丁度、Kodyの友人やその周辺にいる人たちが当てはまりそうだったよね。


Kody:そうですね。思い浮かべていた具体的なペルソナは3人いて、多拠点を駆使しながらフリーランス的な動き方をしている人、大手クリエイティブ企業に勤めている人、そして外資系で週に1、2回は出勤しなきゃいけないけどそれ以外は自宅や自宅外で働くことが許されている人でした。そういう人たちは本業以外に副業を持っていたり、もしくは新しくプロジェクトや勉強を始めたいという要望もあるような人たちです。そんな人たちが多様な業種や働き方をしている私たちのコミュニティに接続することで、本当に自分がやりたいことに向き合って、言語化する機会がその人たちにとって良い刺激になるんだろうなというビジョンのようなものを持っていました。


名前の由来と時間制メンバーシップからの脱却


Kody:COFFEEHOUSEは現在あるメンバーシッププランの中で一番安価なのですが、例えば「HUBミニマム」や「ライトプラン」という名前にはしたくなかったんです。なぜCOFFEEHOUSEと名付けたのかということに大きなコンセプトが隠れています。そもそものヒントをくれたのは共同経営者のShingoさんでしたよね。


Shino:そうですね。彼が言っていたのは、昔イギリスでそれまでは集まる場所といったらパブ

だったものが、コーヒー文化の浸透により”coffee-house”と呼ばれるコーヒーを飲みながら議論を交わしたり、ニュースを共有したりする場所があったと。お酒がコーヒーに置き換わったことで酔わない状態で本質的な話を話せる場所ができたんですね。当時のイギリス社会では画期的で、このような歴史的な話も踏まえてこの名前にしました。

ある日のお茶の時間に談義するメンバーたち


Kody:また、そもそもこれまであったメンバーシップでは料金の違いは主に利用時間で分けられていました。HUB25だと月に25時間利用できて、HUB50なら月に50時間というように。


Shino:そうですね。かつてあったメンバーシップは今考えると冷たいネーミングでしたが、2013年ぐらいのときのコワーキング黎明期の時代は、時間課金の考え方が普通だったんです。

その頃は保証金を払い、オフィスを借りるということをしなくても起業を始められるということや、人生の時間の25時間をどこで過ごすか、そのポートフォリオを自分で決めることができる。それが起業家精神であるという考え方を伝えたかったんです。また、当時、他のコワーキングは入会金が当たり前だった時代。そんな中でデポジットもなしでその日からすぐコワーキングスペースを使えるようにし「そんなふうに起業って始められるの?」という驚きを提供したかったのです。


Kody:今回そういった料金体系から脱却しつつあるということは、上記で書いていたような役割はある程度終わったという事を意味してますか?


Shino:そうですね。今回のCOFFEEHOUSEに関していえば、逆にスペース売りをしていることになるのですが、それが今の時代の感覚にはフィットするんだろうなと思っています。あと常に考えているのが、その時代時代に応じてユーザーが欲しいと思っているものを提供する以上に、ユーザーが予想していない刺激や効果を生み出すことです。

たとえば、誰かがここに迷い込んできたとき、まったく想像だにしていなくても、使い続けるうちに影響されて、エンパワーメントやエンゲージメントが発生して、いろいろな刺激を受けながら変化や成長が起こる。私たちはそれがとてもおもしろいと思っているんです。スペース売りなんだけど、よくよく見てみるとそうでもない。それが普通の不動産業とまったく違うところだと思うんですよ。

COFFEEHOUSEで利用できるラウンジスペースの様子


Kody:たしかに。今回のプロモーションの時に”The office is dead. Don’t go back there.” (オフィスは死んだ。もう戻るべきではない!)という文言を使おうと提案したのですが、自分で見直してみてもかなり強烈ですよね笑。でもShinoさんと色々と議論するうちに、そしてチームやコミュニティの人たちの働き方を見ているうちに、ビルに詰め込んで働かせようとする企業やただおしゃれそうな家具を並べただけのコワーキングスペースなどに対するアンチテーゼを詰め込みたいなと思うようになっていました。そういう意味では時間制に縛られる働き方や「オフィスはこうあるべき」という固定観念からの脱却の意味がこのネーミングに込められているのかもしれません。


Shino:ともすると伝えたかったのは、「自分の人生にオーナーシップを持つ」ということなのかもしれません。


自分のルーティンを変える場所


Kody:そういう人たちをターゲットにしたいと話しをしたときに”The office is dead”と並列してあるテーマが、「日課を変えよう、ルーティンを変えよう」というものでした。

出勤というルーティンがコロナで変わり、自宅で働くことが一般的になりましたが、先述の通りそのルーティンを変えるきっかけに、このCOFFEEHOUSEを使ってくださいというメッセージを持たせました。

食の起業家が提供する日々の暮らしをアップデートするランチやお惣菜、レスポンシブルな衣食住文化の作り手が集うマルシェ、Controversial(物議を呼ぶ)なトピックをセーフスペースで議論するミートアップ、そして起業家やフリーランサーなど事業を創出したり自由な働き方を体現している人たちのコミュニティなど普通のオフィスではなかなか体験できない特典を用意しています。

このコミュニティ自体がQuestioning + Action = Impact (現状に疑問を持ち、行動を起こす事で、社会に何らかのインパクトを生み出す)を体現しているのでここで時間を過ごすうちに「自分ももっとオーナーシップを持っていいんだ」と感じてもらえれば本望だと考えています。


お互いに事業の提供価値を発表する起業家たち


The Office is Dead の意味するもの

—— ”The office is dead”というメッセージを来てくれた人たちは実際に利用してみて、ここをどのように捉えたのでしょうか。


Kody:お試しで見に来てくれた人がいて感想を教えてくれたのですが、「このコミュニティには多種多様な事業や働き方を実践している人たちが集まっているので、多様性がある。そういう人たちとつながって、話して、初対面でも本質的なところを話すから、今までの自分が出勤していたオフィスがどれだけつまらないものだったのかっていうことにここに来てはじめて気づきました。」と。

私たちが伝えたかったメッセージやおもしろい人達に出会えるという価値観を感じてくれたのが嬉しかったですね。


Shino:”The office is dead”というのは空間として死んでいるだけではなく、人と出会うことや、深い話ができるという体験としても死んでいるということも表しています。

日本ではこういうネガティブなキャンペーンは嫌われるからこそやったほうがよいんじゃないかという話をチームの中でしました笑。このキャンペーンがうまくいくかどうかはわかりませんが、私たちが、私たちらしくない限りそこに共感する人たちは集まらないと思ったので、結果的に良かったんじゃないかなって思っていますね。





——社会情勢やニーズの変化からはじまった新しいメンバーシップについての議論でしたが、大切にしているのはただ単に働く環境を整備するだけではなく、刺激的なワークスペースに飛び込むことで日々のルーティンに刺激や変化を与えることでした。そうしてやがて「自分の人生にオーナーシップを持っていいんだ」と鼓舞され、働くことと暮らしがシームレスに繋がる。それらをひっくるめた、あるひとつの選択肢としてこのCOFFEEHOUSEが生まれたような気がします。この場でどんな出会いや新しいハプニングが起こるのか、とても楽しみです。


そんなCOFFEEHOUSEですが、現在、初月半額キャンペーンを実施中です。また、友人やパートナーとともに登録すると全員が2ヶ月間半額になります。


興味をお持ちの方はまずぜひ一度、私たちのコミュニティを見にきてください。
コミュニティ・ビルダーと共にコミュニティの雰囲気を体感したり、館内のツアーに参加できるオープンハウスを毎週実施しています。

お申し込みは下記のページよりどうぞ!

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeHocloCjucnukK41LqV4mHDTH5t2RbhyfIlzhbnkTyBBsuNg/viewform?vc=0&c=0&w=1&flr=0




このインタビューに出てきた人たち
槌屋詩野(Impact HUB Tokyo 代表取締役)


Kody(コミュニティ・ビルダー兼マーケティング&ブランディング担当 )


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