外部クリエイティブパートナーと紡ぐ社会へのメッセージ/SOLIT代表・田中美咲さんインタビュー 【後編】
2024年4月に開催される、北米最大級のバンクーバーファッションウィークに初参加が決まった日本発オールインクルーシブファッションブランド「SOLIT!」。インタビュー前編では、代表の田中美咲さんに「想いを届け続けられる自分であるために」をテーマにお話を伺いました!
後編では、外部のクリエイターとのパートナーシップを通して実現する未来についてお話を伺います。「想い」を実現していきたいと願っている全ての人へ、世界への挑戦を続ける代表の田中美咲さんのインタビューをお届けします。
▽前編はこちらです
伝えたいメッセージをより遠くへ届ける
外部パートナーシップの考え方
ー美咲さんはメディアへの露出や、イベントへの登壇なども積極的に行われていると思いますが、自分たちのメッセージをより遠くの人へ届けていく時に気をつけていることや、意識していることはありますか。
田中 大衆向けのメディアである新聞やテレビなどは、「より多くの人に伝わるように、わかりやすく表現する」という性質上、私たちが大事にしている想いや情報などが抜け落ちてしまうことがあります。でもそれは、100ある私たちの想いを10の軽さにして、浮力をつけて遠くに飛ばしてもらっているようなもの。90は抜け落ちてしまいますが、それを理解した上で協力関係を作る。そして10の情報から関心を持ってくださった方が調べた時に、ちゃんと50だったり、100だったりの想いが伝わるものにたどり着けるようにしておきたいなと思っています。
あと、多様な人たちがいれば多様な伝わり方があるはずなので、言葉だけでなく、様々なツールや手法を用いて表現していきたいとも思っています。例えば10代・20代だったらTikTokが伝わりやすいツールかもしれない。自分が当事者のように感じられるドキュメンタリー映画という形が、より伝わる人もいるかもしれない。ポップアップなどで直に関係者と触れ合うことで伝わる人もいるかもしれない。そうやって、色々な形で私たちの想いを表現し、伝わる接点を作っていきたいです。
ー私たちHubでも、2022年に開催されたドイツでの「iF DESIGN AWARD」の授賞式の密着ショートドキュメンタリーを作らせていただきましたが、こちらの反響はいかがでしたか。
田中 本当に有り難かったです。当時は、コロナ禍の真っ只中。本来であれば世界一のデザインアワードであるこの「iF DESIGN AWARD」にはみんなで授賞式に出席したかった。ですが当時、渡航費の高騰やワクチン対応などもあり、準備を全員分間に合わせることはできませんでした。だから「もう私1人で行って、授賞式の様子はスマホで撮ろう」くらいに思っていたところだったんです。
それを映像として記録していただき、さらにiF DESIGN AWARDの代表の方のインタビューも行っていただけたことで、受賞の背景がより伝わるようになりました。世界のあの舞台で自分たちの活動がちゃんと評価され、祝福の拍手をもらえたんだということ。それを温度をもって仲間に伝えることができ、私たちの自信に深くつながった作品になりました。
ー自分たちでの発信も積極的にされているSOLIT!さんですが、外部のクリエイティブパートナーが関わったことで、どんな違いがありましたか。
田中 外部のパートナーが入ることの最大のメリットは、そこで起こっていることを私たちの持つ主観だけではなく、客観的な視点を含めた多層的なコンテンツとして届けられるようになることだと思います。
自社メディアで発信をすると「新商品が出ましたよ」とか「受賞しましたよ」というニュースとして届けることは出来ます。でも、例えば今回のドキュメンタリーであれば、インタビューを通した私からのメッセージだけではなく、その背景にある思いとか、そこから辿り着くことができた舞台の雰囲気だとか、他の人からの声だったりとかを含めて伝えることが可能になりました。
結果、「何度も見たよ」と言ってくださる方がいたり、すごく深く共感してくださる方が出てきたり、仲間内でも、今回の受賞に対して受け取れる温度感が全く違ったり。自社メディアでの発信だけではできない伝え方ができたことが、本当にありがたく、嬉しかったです。
ー外部のクリエイティブパートナーの存在が、SOLIT!にどんな価値を生んでくれると期待していますか。
田中 社会の中における自分たちの活動の価値を、客観的に俯瞰した視点から表現することができるのは、内部ではなく、外部のクリエイターさんだからこそできることなんだと感じています。
やはり社内のクリエイターだと「自分たちの想いをどう伝えるか」という、内側から外側へ向かった矢印にばかり注意がいってしまいがちです。でも外部のクリエイターさんだと「外から見て、今、社会の中でSOLIT!の立ち位置はここで、こういう可能性のある組織なんだ。だからこそこのデザインで、こういう伝え方をした方がいい」といった視点で提案をしてくれることが、自分たちの解像度をあげるためにとても参考になります。
自分たちが内側にいるからこそ見えないものを、可視化して伝えられるクリエイティブが生まれる。これは、ものすごく意味のあることだと思います。
想いを実現していきたいと願っている人へ
ー最後に、想いを実現していきたいと願っている人へ美咲さんからメッセージをお願いします。
田中 「この人生で成し遂げたいこと」が見つかっているということは、既にその時点で、本当に素晴らしいことだと思います。しかし一方で、その「成し遂げたいこと」を本当に成し遂げられる人は、残念ながらそう多くはありません。
では成し遂げられなかった挑戦は、意味のないものでしょうか。私はそうは思いません。その人が「想いを持って挑戦をした」ということそのものが、社会がまた一歩、理想の未来へ向けて前進できたということだと思うんです。だから、成し遂げたいと思っていることに対して挑戦することは、素晴らしく、そして社会にとって必要なこと。だからこそ、もし失敗してしまってもまた立ち上がって挑戦を諦めないことが大事なんだと思います。
そして、挑戦をしたいと思った時、「自分1人でできることには限界がある」ということを、早々に受け入れて、とにかくいろんな人に助けてもらいながら進めることを心からお勧めします。絶対にその方がいい。その時に「仲間になって欲しい」と言えなくてもいい。ただ誰かに「助けて欲しい」と言えるだけでいいんです。
いろんな人に話を聞いてもらったり、助けてもらっていると、元々やりたかったこととは違うところに行き着くかもしれません。でもそれはそれで人生!と楽しみながら、いろんな人たちと手を取り合ってやっていけると、きっとあなたの想いはたくさんの人に届いていくのではないかなと思います。
ー美咲さん、素敵なメッセージをありがとうございました!
Hub.craftにて制作させていただいた前回のショートドキュメンタリー『SOLIT! 明日に差す光 / SOLIT! A Bright light of hope』内のインタビューにて、 iF DESIGN AWARD CEOのウーヴェ・クレメリング氏は美咲さん、そしてSOLIT!についてこのように語っていました。
これこそが、想いが多く共感を呼び、世界レベルで評価されるまでに成長したSOLIT!、そして田中美咲さんの魅力を、まさに表現してくれている言葉のように感じます。今回のインタビューを通して、美咲さんのメッセージの強さ、純度の高さの秘密に、またひとつ近づけたような気がします。
Hub.craftは、SOLIT!のオフィシャルパートナーとして、2024年4月に開催されるバンクーバー・ファッション・ウィークへ同行。また新たなドキュメンタリー作品の制作を通して、SOLIT!のミッションをサポートしてまいります。想いの詰まったランウェイへのチャレンジはどうなっていくのか。ぜひみなさま、楽しみにお待ちください!
▽美咲さんのインタビュー前編はこちら!
▽SOLIT!のバンクーバー・ファッション・ウィークへの挑戦はこちらから!
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