ドラマ『琅琊榜』で習いたかった中国語～第二十一集①

サブタイトルは「瀬戸際の攻防」。琅琊榜のドラマ全体を通して最初のクライマックスの続きだ。宮羽の説明が続く。

卓家の子どものみ殺害した宮羽の父親は、再度謝玉に生き残った方の子ども（蕭景睿）も殺すよう命じられたが、拒んだために命を落とした。その後莅陽長公主は、景睿のそばを片時も離れず守ったため、謝玉は殺し損ねたままになる。

しかし景睿が謝家と卓家の「両家の息子」になったため、天泉剣の使い手である卓家との関係が深まり、卓家を利用するために景睿を殺さない事にしたのだ。卓家は謝玉に散々利用され、莅陽長公主にも長年騙されていたのだ。

知られる訳にはいかなかった経緯を暴かれ、宮羽や卓家を殺そうとする謝玉。そこにそれを止めようと謝玉に実子・謝弼がすがる。謝玉に似ないで善良な息子の必死の訴えをむごい言葉で謝玉は一蹴し、戦闘が始まる。

你再说一次

謝玉の兵が卓家と宮羽を襲う。成り行き上景睿、蒙大統領、南楚の公主らも参戦する。この事態に懸鏡司（皇帝直属の諜報員）である夏冬は、のろしをあげた。打ちあがったのろしを見て、謝玉の屋敷の外に兵を率いて控えていた誉王が屋敷に乗り込もうとした。

しかし屋敷前に陣取る巡防営（都の警固組織だが謝玉が影響力を持つ）の欧陽遅がそれを阻んでいた。職務外と思われる行動をする欧陽遅のもっともらしい物言いに誉王が言った。

你再说一次
ーもう一度言え

琅琊榜～麒麟の才子、風雲起こす～第21話
誉王

▼你(ní)　二人称で誉王が目下の欧陽遅に言うので「お前」

▼再(zài)　副詞「もう一度」
次に来る動作について繰り返すことを表している。

▼说(shuō)　動詞「言う」

▼一次(yīcì)　一回

この文章を直訳すると「再」と「一次」がの意味が被るようで違和感があるかもしれないが、「再说一次」を定型文として覚えた方が良さそうな言葉だ。相手の言葉が聞き取れなかった時に「请你再说一次（もう一度言ってください）」などのようにも使う。

誉王の場合は聞き取れなかったのではなく、見え透いた建前を言って意に沿わない欧陽遅に対する苛立ちや不満から来る言葉だが。

那么我呢

欧陽遅より皇子の方が当然立場上偉いので、誉王がどうしてもと言うなら通すが、護衛やその他の兵は一人も通さないと言う欧陽遅に誉王が声を荒げたところに言闕様が登場！

那么我呢
ーでは私なら？

琅琊榜～麒麟の才子、風雲起こす～第21話
言闕

▼那么(nàme)　接続詞「それでは」「それならば」

▼我(wǒ)　私

▼呢(ne)　
一定の場面で名詞の直後に疑問を表せる文末助詞。ここでいう場面は、誉王が条件付きで謝玉の屋敷に入れる（実質的に入れない）状態の話になっていることである。それを受けて言闕さまが「では私（が入ろうとした）なら？」という疑問にできる。

言闕様が続けて欧陽遅に言った。

你让不让我进去啊

你让不让我进去啊
ー私も入れぬ気か？

琅琊榜～麒麟の才子、風雲起こす～第21話
言闕

▼你(nǐ)　二人称でやはり言闕様の方が立場が上なので「お前」

▼让不让(ràng bù ràng)＋我 (wǒ)＋进去(jìnqù)
第十集①でも扱った兼語文。「～させる」と言う意味の「让」を「让不让」と反復疑問文にして詰問の語気にしている。第九集①でも扱った「进去」は「 进（入る）」に方向補語「去」がついて、屋敷の外にいる言闕様の現在地から見て屋敷の外から中へと離れるニュアンスがつく。直訳すると「私を中に入れさせるのか（入れさせないのか）」という意味になる。

▼啊(a)　文末助詞で疑問の語気を表す

反復疑問文なので「私を入れさせるのか、入れさせないのか」という詰問で肯定形と否定形いずれのニュアンスもあるが、字幕は「私も入れぬ気か？」と本質的な状況に沿った日本語ですっと入って来る表現になっている。

言闕様と過去に何かあったのか、一国の皇子である誉王に対するよりも強気に出られない欧陽遅。やむを得ず屋敷内の兵数で卓家たち「元」客人たちを抑えられるとみて、謝玉自ら屋敷の門前で言闕様と誉王を追い返そうとする。

息子の豫津を迎えに来たという言闕様が、明らかに尋常ならざる状況で帰るわけがなかった。謝玉の屋敷前で多くの兵士が刀を抜いて一触即発の状態なのに丸腰で謝玉ににじり寄る言闕様！

言闕様の事ばかりになってしまったが、屋敷内ではもちろん激しい攻防戦が繰り広げられ、色んなやり取りがあった（雑な説明）。その様子についてはぜひ本編でご確認ください。私が言闕様贔屓でなかったら、そちらに文字数を使ったことでしょう。