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ドラマ『琅琊榜』で習いたかった中国語~第三十三集②

サブタイトルは「雪中の訴え」の続き。誉王と夏江に仕掛けられた離間の計にまんまと嵌まり、梅長蘇を見限った靖王。靖王府までやって来た梅長蘇の話を何もかも受け付けず、背を向けてしまう。


萧景琰 你给我站住

そんな靖王に梅長蘇(=林殊)が叫んだ。

萧景琰 你给我站住
ー蕭景琰 待つのだ

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第33話
梅長蘇

▼萧景琰(Xiāo Jǐngyǎn)
靖王の本名。本来梅長蘇の立場で靖王をこのように呼ぶ事はあり得ない。第二十六集でもあったように「君主・先祖の名前を書くことを避ける習慣」と同様、口にするのも本来憚るので、梅長蘇が主君である靖王をこのように呼ぶことは失礼に当たる。

たしかに劇中で靖王を「景琰」と名前で呼ぶのは、皇帝・静妃・誉王や林殊など親や年上の兄弟、ごく親しい人物に限られる。

他の中国ドラマでもあえて怒りを覚えている相手に本名をフルネームで呼ぶことがあるが、この呼び方を梅長蘇がしているということは、あえて「林殊」として叫んだと私は思っている。

▼你给我站住(nǐ gěi wǒ zhànzhù)
セリフが早かったので自信はないが、二人称「你」をたぶん最初に言っており、続く「给」は「~のために」で動作・行為の受益者(ここでは「我」)をみちびく。最後に動詞「站(立つ)」+結果補語「住」で「立ち止まる」という意味になる。結果補語「住」があることで、直前の動詞に停止・固定・阻止のニュアンスが加わる。

全体で「蕭景琰、私のために立ち止まれ」が直訳だが字幕の方が日本語として自然である。叫ばれた靖王が立ち止まった。

萧景琰 你有情有义 可你为什么就没脑子

リスクしかない衛崢の救出を「利益のために臆することなどできない」などと言う靖王に再度梅長蘇(むしろ林殊)が怒鳴りつける。

萧景琰 你有情有义 可你为什么就没脑子
ー蕭景琰!情義がありながらなぜ能がないのだ

琅琊榜~麒麟の才子、風雲起こす~第33話
梅長蘇

▼萧景琰(Xiāo Jǐngyǎn)
また靖王は本名で梅長蘇に呼ばれた。やはり林殊がブチ切れていると思う。

▼你有情有义(nǐ yǒu qíng yǒu yì)
「有」は存在を表す動詞「ある」、「情」は「人情」、「义」は「正義」「義理」を表す。「おまえは情があり義の心がある」ということだが、字幕では人情と義理をまとめて「情義」としている。

▼可你为什么就没脑子
(kě nǐ wèishénme jiù méi nǎozǐ)
「可」は第十二集でも出て来た接続詞「~だけれども」、「为什么」は「なぜ」、「就」はおそらく強調の副詞、「没」は「無い」という否定で前文の「有(ある)」との対比になっていると思われる。何が無いかという「脑子(脳)」である。

全体で直訳すると「蕭景琰!おまえは情があり義の心があるけれども、どうして脳が無いのだ」である。字幕はコンパクトにまとまっている。

ここまで臣下が直球で言うわけがないので、絶対に林殊だ・・・彼は靖王に言った。対処を間違えて無理やり衛崢を救出しようとした結果、「命まで落としてどの面下げて祁王に会う?」「林殊に何と言うのだ?」と。

もっともな指摘に近くの柱をこぶしで叩く靖王。怒鳴った後の呼吸を整えて「梅長蘇」に戻った林殊が「殿下」と呼びかけた。梅長蘇は靖王が意固地になった理由も分かっており、靖王は13年前の赤焔事案の時、その場に居なくて助けられなかった痛みと後悔がずっとあった。それで梅長蘇の言い分も聞けないほど靖王は感情的になっていたのだ。

落ち着いて靖王府に入り、蒙大統領が衛崢救出の襲撃を江左盟が行った時の話をしたことで、靖王や配下の列戦英はやっと梅長蘇たちが何もしなかった訳ではないと知り狼狽した。だからちゃんと話聞けば良かったのに・・・

このあたりで一度、琅琊榜のエンディングを飛ばして見ている方も歌詞の字幕を読みながら梅長蘇の歌を味わっていただきたい。見始めて数話の頃と比べると私の場合はより切実な梅長蘇の思いを感じるようになってしまった。

靖王が離間の計に嵌まって意地になってしまった理由もよくわかるが、梅長蘇の切実さを思うとこの回はつい靖王に攻撃的な文章を書いてしまったかもしれない。靖王ファンの方々、どうか言闕さま派の私をご容赦ください。


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