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オカルトと都市伝説の庭で「お月さま」を考える

◇ 約4,800文字

見上げるのか見下ろすのか

 かぐや姫で有名な「竹取物語」は、月に関するオカルトでは高頻度で引き合いに出されてきた。粗筋を(ブラウザ換算の)3行で記しておく。
 主人公かぐやは、竹から生まれて3ヶ月で絶世の美女へと成長したため、5人の貴公子に熱烈な求婚をされて、やがては帝(天皇)からも求愛されるのだが、総てを振り切って月へと戻ってゆくというストーリーである。
 月から迎えにきた使者は「かぐや姫は月の民の一族であるが、罪を犯したために卑しい者のところへしばらく預けたのだ。罪が償われたので迎えにきた」と言っている。その罪状は不貞だったという説もあるが、絶世の美女に生まれたのに求婚を断り続けることでカルマが落ちるのだろうか?逆の境遇のほうが、罰としては辛いようにも思えるが…。

 こうした昔ばなしを"異星人に関する伝承"とする思想は根強い。かぐや姫は宇宙船に乗って母星である月に戻ったとされ、浦島太郎は竜宮城に表現される惑星へのアブダクションと結びつけるような論調だ。
 近現代では、悪事がバレてしまったら月に代わってお仕置きされる伝説もあるらしい。ともあれ、太古から現代まで日本人は月や地球の向こう側には特別な想いを持っている。

 もちろん、月に魅了されるのは日本人だけではない。
 仏教での月は「極楽浄土」(あの世)であり、地球は「命の象徴」(起源)とされ、地上は「煩悩の土地」(この世)なのだという。この場合の地球(=命)とはユートピアであるシャンバラと考えられ、幾つかの候補地はあるが、以前に考察した地底王国アガルタの首都もその1つとされる。
 仏教での「煩悩の土地」という表現は、竹取物語での「卑しい者のところ」という言葉と同一であるように感じる。欲望が渦巻いている地球に向けて神聖な輝きを放つ存在として、お月さまは洋の東と西を問わず世界各国で日常や信仰の一部であり続ける。


お月さまの基本スペック

 以上が前置きとするならば、自己紹介をするような流れで月の基本的な情報を確認しておかなくてはならない。

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1. 地球と同じ46億年で、地球に多くの影響を与える
2. 捕獲説、分裂説、双子説、衝突説 の誕生説がある
3. もっとも近い天体であり、平均的な距離は38万km
4. 直径は3,474kmであり、冥王星よりも大きい
5. つねに地球からは同じ面しか見えない

 上から順番にコメントをつけてゆくと、太陽系の中心である太陽の誕生が46億年前なので、(太陽系の外から来ていなければ)月も年齢は同じということになる。
 潮の満ち引きや、地球の生物にも周期的な影響を与えており、生物の発生や進化のプロセスに不可欠な存在だと言われる。また、月の存在が無ければ地球の地軸は大きく傾いていおり、現在とはまったく異なる気候になっていたとされる。

 生成期の地球に火星くらいの大きさの巨大な天体が衝突して月が誕生したという巨大衝突説(ジャイアント・インパクト説)が有力とされていて、立証はできていないが、近い結果となるシミュレーションは計算されているようだ。地球と月は構成される成分が似すぎているという分析結果があり、本当に月面から持ってきた岩石を分析したの?と疑われたとしても無理はないが、仮説に仮説を重ねれば組成の近似は説明できるらしい。(仮説の2階建ては眉唾とも言えるが)
 月の誕生など考えもしなかったので、なんとなく捕獲説のようなイメージをもっていたが、すこし考えれば、引き合ってオフセット衝突するか(スイングバイで)進路が変えられて離れてゆくのは解りそうなものだ。双子説も同様に、同じ距離を保ち続けることが難しいように考えられている。
 ともあれ、月が地球観測の目的で「意図的に配置されたもの」という宇宙船説でない限りは、巨大衝突説がもっとも信憑性が高いとされる。

 ミステリアスなのは、直径が(水星より少し小さい程度の)3,474kmと大きな天体であること。木星や土星ならまだしも、地球ほどのサイズの惑星に直径で4分の1もある衛星が回っているのは不可思議だと考える人もいる。
 また、地球との距離が平均38万kmであることも不自然だとの指摘もある。地球からの距離で月と太陽は1:400であり、大きさの比率も1:400なので、地球からは同じ大きさに見える。それにより皆既日食という神秘的な現象を見ることができるのは、本当に単なる偶然なのか?と、感じざるを得ない。
 重力が地球の6分の1であることは、言うまでもなく皆さんご存じだろうが、成分が地球と似ているのに重力が少なすぎじゃない?と訝る声もある。

 月の自転が地球との公転周期に一致しているため、地球からは裏側が観測できないというのも偶然だろうか?裏側では地球からの管制がとどかないため、ほとんど着陸が実現できていないこともオカルトの要素になっている。ミステリーの宝庫である月の裏側の世界については、別の項でじっくり考察してみたい。


人間にとっての小さな一歩

 月は「現代に生息する地球人が初めて足跡を残したとされる天体」と認識している。奥歯にモノが挟まったような書き方になったが、(以前の考察コラムで記した)"4大文明といわれる古代文明以降の人類として"初めて月面に到達したのが1969年のことである、という意図を含んでいる。そして、本当に足跡を残したのか?という(非常に根強い)疑念が存在していることを踏まえての婉曲表現になっている。

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 米国のアポロ計画では、2~10号までは月周回の飛行に向けたミッションであり、7号からが有人での打ち上げ、そして11号から17号までが月面着陸をミッションとしていた。有名になった13号では失敗しているが、それ以外の6回は月面着陸に成功している。
 しかし、この計画にはいくつかの都市伝説が存在している。もっとも有名なのは【1】実際は月面に行っていない という陰謀論であり、【2】月面の地球外生命体を隠避している というオカルトがあり、さらには【3】18~20号も打ち上げられている という都市伝説まである。

 地球から月までの経路にはヴァン・アレン帯と呼ばれる人体に有害な放射線が飛び交う領域を通ることは承知している。月の周回軌道に乗って着陸船を切り離すこと、月面を離脱して司令船とのランデブーからドッキングの成功、大気圏への再突入、その何れもが気の遠くなるような難易度だと想像できても、やはりアポロ計画は(ハリウッドでの撮影ではなく)月面への着陸を成功させたと考えている。
 公開されている映像で不自然だと指摘のある現象は、さまざまな人が考察しているので、ここで改めて記述するつもりはない。アポロ計画で月面上に設置した反射板によって月と地球の正確な距離が計測されているので、物理的な設置があるという意味でも着陸が成功したと考えるのが普通ではないだろうか。(当然、異論も反論もあることは認める)

 アポロ計画以降、50年以上も有人探査が行われていない理由として、成果に見合うような費用対効果が得られないという見解が一般的になっていて、そういった論調を何度も目にしてきたが、果たしてそうなのだろうか?
 アポロ計画の費用は、現在の貨幣価値で約1,350憶ドル(14兆円)ほどらしいが、現下のウィルス対策への拠出費用に比較しても、その規模は桁1つほど小さい。
 そして、アポロ計画によって実現した新素材や燃料電池の開発、集積回路とコンピューターの発達、合理的なシステム設計という概念が産まれたことは、米国の産業に多くの寄与をすることになる。当然、伸びしろが大きい時代だったこともあるが、お釣りがでるくらいにモトは取れているのである。
 どちらかと言えば、強力なライバルであったロシアが(おもに経済的な理由で)月面を目指さなくなったことが大きいと思っている。

 直接の関連性は解らないが、中国が打ち上げた無人探査機の嫦娥4号が2019年1月3日に世界で初めて月の裏側に着陸を成功させると、同年の11月に米国が2024年に月面有人着陸を目指したアルテミス計画を発表している。この計画は2028年の実施に延期されているが、月を足掛かりにした火星有人探査を2033年に実現するロードマップも示された。
 中国による偉業とアルテミス計画の発表は、偶然にタイミングが一致しているだけなのかも知れないが、やはりライバルの出現は米国にも強力なモチベーションとなっているだろう。


中国は裏側でなにを見るのか?

 先にも書いたが、中国による月の裏側への着陸は初めての快挙である。有人飛行による裏側の観測はアポロ8号の乗組員だけであり、写真の撮影ですら4回しかないことから、最大の謎を秘めた場所とされている。

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 2019年の初夏のころ、NASAの探査機が月の裏側にある(太陽系で最大級の)クレーターに重力が集中している場所を発見した。その場所は、月の南極にあるエイトケン盆地の中心部であり、そこはまさに同年1月に中国の嫦娥4号から出陣した探査車の玉兎2号が調査に向かった場所なのである。
 嫦娥4号で実施する科学調査は、低周波電波天文観測、地形・鉱物組成・地下浅層の構造調査、中性子線および中性原子の測定となっているが、重力異常の原因が地下300kmに存在している「金塊」によるとも言われており、もし調査中に中国の目がドルマークになったとしても、それは無理からぬことである。

 南極のエイトケン盆地では、クレーターのエッジが影になって太陽光がまったく当たらない場所があり、氷の状態で水が存在していることが明らかとなっている。2番目として「月面の知的生命体を隠避している」というオカルト説を紹介したが、この水の存在からも月面には月由来の生命体(知的生命体)が存在している可能性があると考えている。
 序章で登場した、Mr.都市伝説こと関暁夫氏は「月には6種類の地球外生命体が存在する」と語っており、それが本当ならば月も賑やかな場所になってそうだ。おそらく、他の惑星からも月へ飛来しているだろうが、個人的には外来の異星人よりも月面オリジンな生命体の存在が、我々にとって重要なファクターである気がしている。

 玉兎2号は2週間ごとにおとずれる昼の時間帯に充電し、(耐用年数は1年とされたが)現在でも観測を続けている。2枚目の画像のように歩みはゆっくりだが、一帯一路のように西へ西へと着実に進んでいる。
 そして、2019年8月に玉兔2号は、小さなクレーターの内部に小ぢんまりと存在する「異常な色のゲル状の物質」を発見したのだという!残念ながら中国の当局(国家航天局)が公開している画像はモノクロであり、その物質の正体やそこに存在する理由については現時点で不明である。(上画像の赤枠の内部)
 公開情報による推測では、隕石の衝突によって生じた火山ガラスではないかという説が(残念ながら)有力視されているようだが、詳細なカラー画像や観測データが公開されないことには仮説の域をでない。

 嫦娥4号には何かを採取して帰還するミッションはないので、 それは2028年以降に実施される米国のアルテミス計画に期待するより他はなさそうだ。その時は、公表される情報よりも公表されないことで飛び交う憶測のほうに興味を持ってしまいそうだが、そんな屈折した好奇心による色眼鏡で見てしまう人は少なくないだろう。それほどまでに、陰謀や偽装にまみれた真偽のつかない情報に侵されてしまっていると言えるのだ。


お詫び

 月に存在する生命体と人類の関連性についての考察や、3番目の「アポロ18~20号は幻だったのか」というオカルトを回収しないまま4000文字を大幅に超えてしまった。まだ都市伝説の入り口なので、紙面をあらためて次回に続けることをお赦し願いたい。
【続く】

後編の「お月さま」をもっと考える は コチラ です

また、シリーズの目次と序文は コチラ です!

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