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中欧旅行記③:フランクフルト~ベルリン

本日も移動日なり。

フランクフルトとベルリンを結ぶICE(日本でいうところの新幹線)は座席が早めに売れてしまうと、旅の聖書「地球の歩き方」に書いてあったので、ホテルのビュッフェで優雅に朝食をとったあと、すぐホテルを出て中央駅に向かった。太陽がまぶしい、爽やかな朝だ。

あらかじめ欲しい切符の行き先と出発時間を書いたメモを持って窓口に向かい、おばちゃんに見せる。この「メモ見せる作戦」は友人から教わった技だが、聞いていたとおりすんなり目的の切符が手配できた。ひとまず目的を果たして意気揚々。

ついでに学割がないか聞いたところ、そんなものはないという。続けて、

"Bahn card bajao oiau bo pa hie otob u a9u"

と笑顔で教えてくれた。ありがとう、さっぱりわからん。ドイツ人の英語力はぼくのヒアリング力を超えているほどに流暢。"Bahn card"ってなんだろう。JRビューカードみたいなもんかな。

駅の中をうろうろしていると、ソーセージ屋を発見。ドイツといったらソーセージ、そしてフランクフルトで売っているこれはまさにフランクフルトソーセージ(違う)。見た目は色気も素っ気もない300円弱の茶色い棒が、鬼のように美味い。うまいうまい。パリっとした歯ごたえの皮、肉汁のほとばしる中身、適度な塩味とほのかに香草のかおり。適当に買ったのにうますぎる。ドイツ人はいつもこんないいもん食ってるのか。うらやましいぞ!

ベルリン行きICEは1030出発。自分で改札して、乗車。ベルリンまでは4時間である。車窓からはドイツの田舎街が諸処に見られた。緑の中に点在する、赤い屋根々々の集落。自分の知らない場所にも人が営んでいる、というあたりまえをしみじみ感じる。車で旅をすることができれば、ああいう場所にもふらっと寄れるのだろうなあ。

長い時間の着座で尻がゴワゴワになる。1430ベルリンZOO駅に到着。ZOO駅周辺はブティックや銀行などの商業施設が立ち並び、オープンカフェは午後のひとときを過ごす御仁でにぎわっている。高層ビルこそないけれど、なかなかに都会だ。動物園もあって上野駅あたりみたいだなー、などと思う。線路の高架下には、紫色の香りを放つアダルトショップ街。イヤーン。

まずはベルリンでの宿を手配すべく、観光案内所に向かう。が、建物がいっこうに見つからない。近くにはいるはずなのだが、どの建物かわからない。地図とにらめっこしながら30分位は迷っただろうか、仕方なく道行く人に尋ねたところ、「あれだ」と、先程から目の前にあった建物を指さした。ありがとう、一応言っておくけど、日本人がみんな地図を読めないわけじゃないからね。

案内所でホテルの予約をしてくれた初老のおじさんは朗らかないい人だったが、予約端末がフリーズしたらしく、ぽんこつめ、こいつは最近ずっとこうなんだ、などと端末とシステムマネージャーに向かってキレていた。

電車48時間乗り放題カードも手に入れて、いざぷらぷらせん、と思った頃合いに急激な眠気に襲われる。時差ボケだろうが、こんなに急に来るものだろうか。そういえば昼ごはんも摂っておらず疲れてきていたので、早めにホテルに向かうことにした。道すがらカイザーヴィルヘルム教会に寄ってみる。雄壮なたたずまいだが、先の大戦で破壊されたという傷跡が印象的であった。

ホテルはZOO駅からSバーンを二回乗り継いで20分、ベルリンの東の玄関・リヒテンブルグ駅にほど近い場所。雰囲気はホステルだったが、部屋はシングル、バストイレ付きで一泊5,000円くらい。

ホテルの周辺は広い道の脇に同じ高さの建物が並び、人の往来は少なく、ZOO駅周辺とは全く違った雰囲気だった。一言でいうと、活気が無い。別の街にいるような気にもなってしまう。

ここはむかし東ベルリンだった場所だ、ということに気が付くのに少し時間がかかった。壁が消えてからもう15年になるけれど、未だに旧時代の面影が残されているのだ。画一的なアパートの群れ、権威的な公園の造り、極端に少ない商業施設。当時はこの状態が標準だったのだ。パン屋とドラッグストアで買い物をしたが、店員が超無愛想なのも共産時代の名残だろうか。気のせいか。

ホテルの窓から、西に沈んでいく夕日を眺めていた。ほんのちょっと前まで、この土地は今とは別の政治に支配されていたのだ。その中で、個々人はどんな思いでいたんだろうか。社会主義国であることの喜びをかみしめていた人がいただろう。しかし、ぼくと同じように夕日を眺めながら、西側の生活に憧れた人もいたんだろうな、などと思いを馳せてみた。

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