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中央旅行記⑲:ハルシュタット

2004年に中欧4ヶ国を旅した時の記録です。目次はこちら
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起きると窓の外で車が水を跳ねる音がする。雨かあ。のそのそと起き支度を整え、朝食で腹を満たし、まずは駅に向かい明日のミュンヘン行き切符を手配。雨は降ったりやんだり、この旅行で初めて傘を使うことになる。

午前中は森と山に囲まれたヘルブルン宮殿へ。庭園見学はツアーのみであったため、それに参加。ガイドも参加者もみんな現地人で、何を話しているのかさっぱりわからない。が、ガイドが粋な人で、庭園名物の噴水の仕掛けをコミカルに操ってくれた。

宮殿は、先のシェーンブルン宮殿に比べると簡素な感は否めない。が、豪華な邸宅であることは間違いない。こんなにたくさん部屋いるんだろうか(いやいらない)、と1Kのアパートに暮らす貧乏学生は思ってしまうのである。

1200ころバスで街まで戻って、ハルシュタットツアーの出発までミラベル宮殿あたりをうろつく。さむいのに花が綺麗に咲いている。地元の小学生に中国人と間違われ「ニーハオニーハオ」声をかけられたので「ウォーアイニー」と適当に応えておく。

さて、ツアーの出発間際になったところガイドから

「日本語ツアーがオーバーブッキングだから英語のほうに移ってくれないか」

とのこと。日本語ツアーのほうが嬉しかったのだが、このガイドの英語がたいへん聞き取りやすかったので、まぁいいか、と承諾。いやー、なんだかぼくも旅慣れたもんですなあ、と自分をほめてあげる。ちなみに、このガイドは英語のほかスペイン語・ドイツ語・イタリア語を操る。なんだこれ、カルリンガルとかいうのか。

ハルシュタットにさしかかった頃、雨が本降りとなってしまった。雨のむこうに白くぼやける湖畔の街や山々は、それはそれできれいなのだけれど、空が青かったらもっときれいだったんだろうなあ。バスを降りて船に乗る。

同じ船に乗っていた、一人旅であろう日本人男性に声をかけてみた。会社を1月休んで旅行中だという。ぼくの行程やら男の一人旅についてやら話していると、やはり日本人の母娘が話しかけてきた。後にわかったことだが、ぼくと同郷。ザルツブルグに語学留学中の娘に母が会いに来ており、今日がその最終日なのだか。この母娘に、一人旅の男性と共に、今夜の食事に誘われた。とても感じの良い方たちだったので、快諾。

そんな話をしていると船が駅についたので下船し、ハルシュタットの街をしばし見学。雨がひどく、足元がびしょびしょ。自由時間を経て、帰りのバスに乗車。爆睡。

バスが到着してから先の3人と待ち合わせし、モーツアルト広場のレストランへ。サーロインステーキの玉ねぎソースをチョイス。これが日本人の胃にあった量で、味もグッド。

食事をしながら、いろいろな話をした。旅行のことや留学のこと、就職のこと地元のこと東京のこと。娘さんは、あと4ヶ月もある留学が終わったらとりあえずのんびりして、できれば地元で働きたい、といっていた。

「4ヶ月”も”」という感覚は、よくわかる気がする。ザルツブルグは好きだし留学も楽しいけれど、もう片方はやはり住み慣れた場所に引っ張られる。短い旅行のぼくですらもっている、”郷愁”だ。

そんなわけで、すこし遅くまでしゃべっていた。とても楽しい時間を過ごせたことを、3人に感謝したい。お母さんにごちそうになった。ありがとうございます。

3人と別れてホテルに戻り、洗濯物を持って街なかのコインランドリーへ。店番が「ホームアローン」の小さい方の泥棒に似た強面のおじさんでびびったが、ものすごく親切な方で、機械の操作から両替まで丁寧に教えてくれた。

生憎の天気ではあったが、素敵な出会いがあり心温かくなった一日だった。

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