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ヲトナの夏休み推薦図書

みなさま、酷暑の折、いかがお過ごしでしょうか。

お盆休みの計画に出遅れてしまった方。

あるいは冷房の効いた快適な空間ーあなたを優しく冷やすのが弊社製品であるならこれ以上に喜ばしいことはないーでゆっくり過ごされる方。

そんなあなたの夏休みに、ヲトナの推薦図書を紹介したい。
一身上の都合で、かなり偏りのあることには予めご了承いただきたい。


おしゃカフェで待ち合わせるあなたに:
サガン『悲しみよこんにちは』

新潮文庫です

まず見た目。薄くて軽い。
そして見た目も涼しげで良い。

もうすぐ18歳になるセシルに、プレイボーイ肌の父レイモン、その恋人エルザが、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごす。そのひと夏の間の色々な恋愛模様や各々の思惑が描かれる…というような内容。

瑞々しく、ときめきの止まらない素敵な小説だと思う。

短いながらも、奔放な父娘(どちらも!)の絆と、南仏のきらめく夏の情景が生き生きと感じられるはず。

これを読んでいる、というだけで、なんとも言えない玄人感がする。兎に角オシャレなのだ。

内側から発光するツヤ感があるのだ。

この本を片手に、カフェで待ち合わせをするような人に、私はなりたい。


なんちゃって哲学をしたいあなたに:
サリンジャー『フラニーとズーイ』

ズーイはこんなイメージ(「永遠に僕のもの」より)


名門の大学に通うグラス家の美しい末娘フラニーと俳優で五歳年上の兄ズーイのお話。

宗教観に関する話が盛りだくさんで、正直言ってついていけないところもあった。二人とも頭の回転が速すぎて、よくわからない領域に達している。

しかし、それはそれで刺さる言葉も散りばめられていて、フラニーとズーイのなんだかんだ言って兄弟愛あるところにほっこりさせられる。

村上春樹の本が好きな方は、彼に影響を与えたサリンジャーの作品として、ぜひ手に取ってみて欲しいと思う。

私のおすすめのセリフはこちら。

十六歳以上で潰瘍持ちじゃないやつなんて全員スパイだ。


HowよりWhyを考える革命家のあなたに:
SKY-HI 『マネジメントのはなし。』

目がキレイ〜〜


これは親愛なる同期の影響で読み始めた本。

まだ途中だが、SKY-HI自身の日本の芸能界に対する問題提起や彼のアクションを通して、芸能界だけではなく働き方や生き方に関して考えさせられることがある。

褒められて伸びる人種である私にとって、彼のマネジメント論はとにかく腑に落ちる内容。

褒められて伸びたい。
褒められれば、私はたけのこにだってなれる。

納得性もあるし、個性を殺さないというのは素晴らしいと思う(私たちは往々にして、自分の主張を押し通すあまり他人の個性を蔑ろにしてしまうことがある)。

自分が上に立つ立場になっても、私は人を褒めて伸ばしたいし、個性を殺さず活かしたい。

Shining oneを聴きながらTHE FIRST裏話を読むのが最近のマイブームである。



ヘンテコで刺激的な親戚が欲しいあなたに:
夏目漱石『彼岸過迄』

夏目漱石の後期三部作の第一部

夏目漱石は、私の好きな作家の一人である。

真面目で頑固でロマンチストで、尚且つ胃弱である。
他人事とは思えないのだ。

『彼岸過迄』は夏目漱石の作品の中でも個人的に結構上位にランクインしてくる。

恋愛小説でもあり、家族小説でもあり、ヘンテコな人のちょっとした武勇伝的なものでもあり、何なら不思議な冒険チックでもある。

色々なストーリーを孕んでいるのだ。

漱石の後期三部作のうちの一つで、『こころ』に向かって段々と物語味や悲劇性が増してくるのが良い。


「君はまるで一筆書きの朝貌だね」

死ぬまでに一度は言われてみたくないか?

とにかく時間を持て余すあなたに:
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』

ロシアの3兄弟のお話です


世界文学の城とか、最高傑作とも言われるこの本。
時間を持て余して仕方がない方にはぜひ挑戦していただきたい。

一口にまとめると、ロシアのあるえげつない父親とその3人の息子たちによる愛憎劇、とでもいうべきか。

これも『彼岸過迄』然り、ある側面では家族愛、ロマンス、宗教観、貧困問題、差別偏見、などなど、見方によって色々な物語が複雑に絡み合っている。

一人の登場人物につき、名前の呼び方が5段活用くらいしていて、中には別人物のものと酷似していたり、全く同じものもあったりするので、正直慣れるまでは頭の中がカオスそのものだった。

時間と精神的余裕がないと取りかかれないような作品ではあるが、一読の価値はあると思う。

夏休みが開けることに絶望しているあなたに:
ユ・インギョ『明日も出社する娘へ』

最後に、こちら。

始まるということは、終わるということ。
夏休みは永遠ではない。

社会復帰むじぃわあ〜となったら、一度この本を手に取ってみて欲しい。

いわゆるバリキャリの著者が、働く娘に宛てたメッセージをまとめた本である。あっけらかんとして、心が軽くなるような内容だ。

誰かに侮辱されたらこう考えるといい。あなたはわたしを侮辱する権利があるが、わたしにはそれを拒否する権利がある。

職場では、「少女らしさ」は家に置いてきてほしい。大人である社会人が働く社会はプロの世界だ。(中略)職場で「私は永遠の少女」と主張するのは、迷惑を通りこして犯罪に近いと思う。

劇的にタフで、いかにも爽快ではないか。


ほかにも好きな文章は色々あるが、最後に一つだけ。

耳が二つあるのは、嫌な話を右から左へ聞き流すため。

うるさいなあ、嫌だなあと思った時は、頭の中でムーディ勝山を再生しようと誓った。

ムディ川淳二


それではみなさま。

素晴らしき夏休みを。

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