会社:無力な私を助ける組織

 会社員でよかったこと、それは自分の無力さをカバーしてもらえることだ。

 いわゆる陰キャとして中高時代を過ごし、コロナ禍真っ盛りに大学生だった私は、キラキラした時期を味わったことがない。いつも誰かに憧れ、あんなふうになりたいと妬んでばかりの人生だった。
 だから、社会人になって、他者から価値を見出される何者かになりたくて、一生懸命頑張った。自分を偽った。背伸びした。

 しょせん一時しのぎの化けの皮、剥がれるのはあっという間だった。どうせ私は陰キャ、どう偽っても飲み会を心から楽しめる天性の陽キャにはなれない。作り笑顔をしすぎたせいで、家に着いたとたん目尻がけいれんし出す。酒のはずみで余計なことを言った、とひとり反省会がはじまる。
 仕事も思ったようにはできない。テレビドラマでみるキャリアウーマンは、しょせん偶像だ。身の丈を知って、自分のキャパにおさまる仕事しかしない。親切心から誰かの仕事を手伝っても、結局わからず迷惑をかけることになる。私は、無力だ。

 私は、無力だ。だから、会社の人に助けてもらう。だからこそ、会社の人に助けてもらえるよう、普段から愛嬌を振りまいておく。天海祐希みたいに、肩で風をきって颯爽と歩く女性にはなれそうもない。でも、せめて、じぶん一人でどうにもならなくなったとき、助けてやろうと思われるくらいには私に価値を見出してほしい。

 「一人で抱え込まなくていいよ」と言われる。それは私の精神状態を案じたがゆえの言葉か、それとも大きな問題になってお前が逃げ出す前にこちらに情報共有しておけよ、の意味なのかはわからない。でも、一人でできることが少ない私にとって、会社は自分の身を守ってくれる盾であり、同僚はその盾使いだ。

 これからもきっと、私は学生時代に想像していたよりずっと無力のままだろう。だから、せめて、助けてもらえる人でありたいと思う。やっぱり頑張らなきゃ。

#会社員でよかったこと

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