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023 選ぶことと選べないことについて

 どうも、シタシマです.大学での発表会がようやく片付き、春休みに突入しました.発表の後始末などもあり、しばらくは羽根をのばせそうにないのですが、今までよりも時間が確保できそうなので、有意義に使えたらと思います.やりたいことたくさんありますしね!
 今日は、前回のnoteでちらっと紹介した2冊の小説のうちの1冊について、その感想を書こうと思います(前回のnoteは下からぜひ).小学生の時に読書感想文を書いた記憶がないのですが、大学生になった今、チャレンジしてみようと思います.

 読んだ小説は蓮見圭一氏の『水曜の朝、午前三時』です.文庫の帯には「胸の内に他の誰かを思い描かない既婚者などいるはずがない」と書いてあり、父に勧められたときにはドキッとしました.「お父さんもそうなのか...」と.しかし、不倫などといった類の話ではありませんでした、お父さんごめん.

人生における先天的なものと後天的なもの

 この小説は、主人公である「僕」の義母、直美による自身の半生を療養中の病院で回想したテープ音源を軸に進んでいきます.小説では彼女の祖父が戦争犯罪人であり、直美を含めた家族が、その影響を引きずっていることが描かれます.生まれたときから戦争犯罪人を先祖に持つという「先天的な属性」と、家を飛び出してホステスとして働くという彼女自身が選択した「後天的な属性」.そんな2つが対比されているように思いました.物語が進み、大阪万博でとある男性に恋に落ちる直美ですが、その恋も相手の持つ「選べなかったこと」によって叶わないものになってしまいます.こうした「選べなかったこと」と「選びとったもの」の相互作用が濃く浮かび上がる小説でした.

選ば(べ)なかった選択肢について

 ここで同名の英題を持つ歌を引き合いに出してみます.フォークデュオ、サイモン&ガーファンクルの『Wednesday Morning,3A.M.』です.個人的には、自分の犯した罪によって恋人と別れを告げなければならない男の心情を描いた曲だと勝手に解釈しているのですが、このnote内ではひとまずぼくの解釈で進めます.曲中の彼は自分の罪、つまり自ら選んでしまった行為が引き金となって恋人との別れを選びます.一方、小説における直美は、相手が選べなかったことによって関係が引き裂かれたわけで、不条理さを感じないではいられませんでした.
 しかし、それを回想している直美は後悔に苛まれているわけではありません.「もし結ばれていたらと考えない日はなかった」としつつも、むしろそれらの出会いに感謝しているようでした.どうしようもないこと、ありえたかもしれないもう一つの道、それらをもう届かないものとして夢に見続けるのか、それとも踏み台にして、過去の失敗も明るく照らされるような道を歩くのかが自分次第であるという、恥ずかしいくらいに当たり前のことに、改めて気づかせてくれるお話でした.
 話は逸れますが、蓮見氏によるこの小説も、サイモン&ガーファンクルによる同名の曲が収録されたアルバムも、それぞれにとってデビュー作のようです.これは意図を感じずにはいられませんが、どうでしょう、なんなんでしょう.

これから選ぶこと

 生まれたときに既に持っているもの、つまり「選べなかったこと」は「変えられないこと」でもあります.両親だって、整形を除けば顔や体だって、選んで生まれることはできません.一方、後天的なものはすべて自分で選んだものです.ぼくには進学や就職といった、進路がその代表として浮かぶのですが、ぼくの一番の後悔は大学受験です.高校で死ぬ気で勉強することから逃げたせいで、自分の現状と目標の間にある差に目を向けないまま、3年間が過ぎてしまいました.向かうべき方向に向かって、正しい足取りで努力でできなかったことを後悔しています.そして今、秋田で建築を勉強しています.もし高校で努力して、今よりいい大学に行けていたら、建築家の指導を受けて、刺激的な出会いもたくさんあったかもしれません.けれど、秋田を知ることはなかったと思います.今の友人にも出会えていません.さらには、自分からいろいろな人に会いに行こうと、行動することもなかったかもしれません.そう考えると、過去の失敗も報われるような気がします.
 小説の中で直美は最後に、

重要なのは内心の訴えです.(中略)耳を澄まして、じっと自分の声を聞くことです.歩き出すのは、それからでも遅くはないのだから.

とテープに自身の声を吹き込みます.ぼくも、いろいろなことを知り、失敗しながら、自分のやりたいことを見つけられるよう、努力しないといけません.父がこの小説を勧めてくれたのは、ぼくの数々の失敗を見ているからこそだったのだろうと、振り返って思います.

 今回は、小説の感想文を書いてみました.なんだか自分が普段言わない言葉ばかりで書いた感じがして、どうも恥ずかしいです.そもそも小説の感想を書くのが難しかったです、それもネタバレとかしないで.ただ、自分の感想を外に出すことで分かることが多々あるので、定期的に続けたいと思います.そのときはまた是非お付き合いください.

ではまた.


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