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「拳児」原作:松田隆智 作画:藤原芳秀


SF(少し不思議)ではないカンフー漫画

こんにちは。ひろつかさです。
今回とりあげる古面白い漫画は「拳児」です。

特に1980年代は格闘漫画の中でも中国拳法は非常によく出ています。
北斗の拳や闘将!!拉麺男もモチーフになっていますし、もっと有名なところでいうとドラゴンボールの亀仙人が使う流派「亀仙流」も中国拳法がルーツでしょう(そもそも初期設定が西遊記ですしね)
当時はジャッキー・チェンを始めとしたカンフー映画ブームだったそうですが影響力が見て取れるようですね。

さて、1987年から1992年までサンデーで4年間連載されたこの漫画ですが、ただの格闘漫画ではありません。
もちろん少年漫画らしく、ライバルとの戦いや人との出会いの中での成長を描いているのですが、それ以上に当時(もしくはそれより少し前)の中国の文化や思想、武術としての技術論などが織り込まれた非常に少年漫画らしからぬ重厚感を秘めた漫画です。

というのも、この原作の松田隆智という方は元々ただの漫画原作者ではなく、元々日本の古武術や中国武術について精通した中国武術研究家で、ファンタジーではない技術としての中国武術を日本に定着させた人物といわれています。
漫画原作者が中国拳法をテーマにしたのではなく、中国拳法を理解した人間が漫画原作を書いたという方が認識は正しいでしょう。

そのため、指一つで体を爆散させたり(北斗の拳)、腕から虎が出たり(闘将!!拉麺男)、甕を殴ってその破片で攻撃したり(闘将!!拉麺男)、主人公の腕を複製してその腕から機械の虎を出したり(闘将!!拉麺男)はしません。
拉麺男すげえな。

あくまで正当な記録に基づいた中国拳法を主軸に扱っているのは今までの漫画でも、この作品位なのではないでしょうか。

どんな作品?

さて、本作品のストーリーですが、ちょっと長いので以下に要約してみました。

剛拳児は東京に住むヤンチャな小学生で、祖父・侠太郎から八極拳を学び、正義感の強い性格に育ちます。
祖父が中国に渡り消息を絶った後も拳児は修練を続けながら成長し、中学・高校時代には横浜の中華料理屋のオーナー、張 仁忠と出会い、本格的な八極拳の修行を始めますが、不良グループとの抗争で無期停学処分を受けてしまいます。拳児は祖父を探すため台湾と香港を経由して中国へ旅立ち、台湾では八極拳の達人、蘇 崑崙に師事し、香港では閻 大旺の下で世話になりますが、閻 勇花たちのグループのトラブルに巻き込まれ…。

大きく、幼少期編・中高生編・中国編と分かれますが、どれも盛り下がることなく読めます。幼少期編はまさにプロローグといった形で少年サンデーらしくしっかりと前振りを描きつつ主人公がどういう心の成長をしていくかを描き、中高生編ではライバルの出現、そして中国にわたることを想定した転換が起こります。最後に台湾を経て中国にわたるという祖父探しの長い旅に繋がります。
祖父探しの旅といってももちろん宛てなど無いので、いろいろな地域を放浪し、時に学び、時に戦い、そして中国社会の文化の中で成長していきます。

おすすめポイント

この作品の見どころは何といっても、主人公の成長(裏にいるライバルの成長)と中国社会の描写が深く結びついていく様でしょう。
特に儒教文化が根付いているので、礼儀に厳しく、立場というものを重視した描写が至る所にあります。
それ自体の良し悪しではなく、そこで生きていくということはどういうことなのかということまで理解ができる様しっかりと描き切っているのは原作の精緻さは元より藤原芳秀先生の絵の重厚感、間の使い方のたまものです。

もちろん、格闘シーンについてもしっかりと描いており、この藤原芳秀先生は元々池上遼一先生の弟子で、現在ではゴルゴ13シリーズ・鬼平犯科帳シリーズを作成する「さいとうプロ」でさいとうたかを先生亡き後の作画チーフをする劇画調漫画家の重鎮です。
そんな人の描く格闘シーンですから薄っぺらいわけもないです。
初期は幼少期編ということで描写も軽かったのですが、話が進むにつれて勝負に勝つための集中したときの表情、負けた時の悔しげな様子などドンドンと濃度が増していく様は、最近の綺麗なバトルものを読んでる人にも味わってほしいものです。

最後に

ということで、今回は拳児をとりあげました。
劇画タッチの漫画は、今のポップな漫画に読み慣れている人はちょっと手が出しにくいかもしれません。
ですが、池上遼一の「トリリオンゲーム」がアニメ化されたりとちょっと身近になってきていると思いますので、是非この機会に読んでみてください!!

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