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軍事費ランキングとテクノロジー信頼度ランキングからみるニュース記事の解釈

昨年における世界の軍事支出が過去最高になったというニュースがありました。

世界の軍事費が過去最高に 米中がけん引、国際平和研
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44345070Z20C19A4EA4000/

1位は当然アメリカで、次いで中国サウジアラビアと続きます。日本は9位で金額的にはほぼ横ばいだそうです。

このニュースを読んで一つ疑問に思ったのが、ドルベースの金額でランキングしているのだから人件費が高い国はその分順位が高くなるのではないか、ということです。

アメリカと中国とインドと日本でそれぞれ兵士(自衛隊員)に支払われる給与や福利厚生、年金などの1人あたりの総額で見たら結構な差あるのではないでしょうか。

また、国土が広い・国境線が長い・人口が多い、といった特徴がある国家の軍事費は当然ながら高くなります。これはその国家の軍事的性向とは関係ない理由です。

分かりやすいランキングとして、ドルベースでの金額のみで順位付けするのはしょうがない部分があるんでしょうが、これのみを持ってその国の軍事力や軍事行動の可能性を図るのは早計でしょう。

軍事支出、日本は世界第8位 : トップ10諸国で唯一対GDP比1%割れ
https://www.nippon.com/ja/features/h00207/

同じデータではなく1年前(2017年)のデータに基づく昨年のニュースですが、各国のGDPにおける軍事支出の割合を比べると、順位は大きく変動します。日本の軍事支出のGDP比が少ないですが、人件費・物価を考えると世界的に見てさらに実質的な比率は少なくなるとみてもおかしくありません。

だからといって他の国と同じくらいまでのGDP比にまで上げるべきだというつもりもありません。その分の支出をどこかから持ってこないといけませんし、その分他の支出が減らされますからGDP比2%まで上げる=事実上今の2倍にするとなると反発も大きいでしょう。

GDP比で見たら正確・公平かというとそういうわけでもないでしょう。国家における軍事支出がその国の財政にどれだけ負担をかけるか、というのは国家の体制や政治制度にも寄るでしょうし、そもそもその軍事費が出る大元は何かにもよります。軍事費の大元は税金、というのは当然ですが、サウジアラビアのような資源国が原油生産量を増やして軍事費を増やすのと、日本のように資源や国営企業の利益もあまりない国が福祉費や教育費を削って軍事費を増やすのとでは、負担のしやすさが全然違います。サウジアラビアの軍事費が高くGDP比率も高いですがそれで国家が崩壊寸前か、かというとそうではないでしょう。戦前戦中の日本のようなジリ貧・ドカ貧になる様子は見られません。GDP比率だけで高いからダメ、低いからOK、というわけでもないでしょう。

ニュース、特にデータや統計に基づくニュースを読んだときにそれをそのままなぞって頭に入れるのではなく、一つ二つ考えた上で頭に取り込むようにしないといけないなあ、と思っています。

ただ、そう思っている中で読んだニュースの中で、どう頭に入れたら良いのか迷うような者もあります。

日本はテクノロジーを信じない? アメリカの会社による調査で明らかに
https://www.huffingtonpost.jp/entry/japanese-technology_jp_5cc6ae17e4b04eb7ff98334f?ncid=tweetlnkjphpmg00000001

こちらのリンク先のニュースでは、「テクノロジーを信頼するかどうか」というアンケートで27カ国中、日本がロシアと並んで最も信頼する割合が低かったそうです。

画像にしかなっていないので順位を書き出してみますと、

1,中国 91%
2,メキシコ 90%
2,インドネシア 90%
4,インド 89%
5,アラブ首長国連邦 88%
6,ブラジル 87%
7,コロンビア 86%
8,アルゼンチン 84%
9,シンガポール 81%
9,サウジアラビア 81%
9,マレーシア 81%
12,南アフリカ 79%
13,イタリア 78%
13,香港 78%
15,韓国 76%
15,カナダ 76%
17,オランダ 75%
18,スペイン 74%
19,アメリカ合衆国 73%
19,トルコ 73%
19,フランス 73%
22,オーストラリア 72%
23,アイルランド 71%
24,イギリス 69%
25,ドイツ 68%
26,ロシア 66%
26,日本 66%

となります。ぱっと見で傾向らしきものが見えなくはないですが、一つにまとめるような傾向はなさそうです。

しかし、そもそも「テクノロジーを信頼する」というのがどういう概念として、どのような設問・回答のアンケートだったのかがこのニュースでは分かりません。

調査会社エデルマンの英語のホームページを検索すると、2018と書いてありますがこんなのが見つかりました。

https://www.edelman.com/post/trust-in-technology-2018

抜粋すると、
・技術への信頼は急激に低下した
・一般の人々の間ではテクノロジーへの信頼は強いが、次のイノベーションの波への信頼は低い
・テクノロジーは積極的に信頼を構築していない
というトピックがありますが、その下の方にも、自動運転や労働力や貧富の格差や倫理などについて書かれています。

この二つのアンケートは同じものではありませんので、必ずしも同一の観点から試みられたアンケートではないでしょうけれど、テクノロジーがもたらす影響についての基本的な姿勢は読み取れそうです。

おそらくは、
・テクノロジーは社会的に良い影響をもたらすかどうか
・新しいテクノロジーによって生活は良くなるか
・テクノロジーは社会や人間のためになるか
という観点でのアンケートなのではないかと推測します。

もちろんこういった推測が思いっきり的を外している可能性もあると思いますが、ここら辺まで考えないと先の「日本はテクノロジーを信じない?」という見出しのニュースを読み取れないのではないでしょうか。
まさか、「日本人は『洗濯機では衣類が洗えない』とか『テレビには小人さんが入っている』とか思っている」という解釈をする人はいないでしょうけれど、先述のハフポストの記事の文章だけでは単なるニュースリリースと大差ないのではないでしょうか。

そしてニュースリリースを書き直しているだけのニュース媒体は今後、必要性は低下していくのはいうまでもありません。そもそものニュースリリースがネットで読めるでしょうし。

既存メディアを批判的に立ち上がったはずのハフポストがこういう記事を出しているのはちょっと残念な気がします。


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