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審判の絶対的裁定者性と相対的判定者性

先日、アメリカンフットボールのスーパーボウルを見ていてふと思ったのですが、アメリカ発祥のスポーツは、一連のプレーが終わってゲームが途切れたときにボールを審判に預けます。

アメリカンフットボールではランプレーにしろパスにしろ、ダウンが終われば一度ボールは審判の手に渡り、それから攻撃側のチームに渡されます。

バスケットボールでも、得点が入ったりボールがコート外に出たりファウルがあったりしてプレーが止まったら、選手は審判にボールを渡して、また再開のために審判がボールを選手に渡します。

野球では上記2競技ほどではなく、投球がバウンドしたり、打者が打球を当てたりしてボールに傷が付いたときに、主審がポケットから新品のボールを出して投手や捕手に渡します。ボールがボールパーソンから直接選手に渡るわけではない、ということでは共通しています。

一方で、ヨーロッパというかイギリス生まれのスポーツでは、そこまで審判がボールを管理することになっていません。

サッカーではキックオフにしろ、得点が入った後にしろ、ボールが外に出たりファウルで止まった場合にしろ、必ず審判がボールに触れるとは限りません。基本的には選手間、あるいはスローインやコーナーキック、ゴールキックの際にボールパーソンから直接選手にボールが渡されます。

ラグビーでも同様ですね。

テニスでも同じで、ネット際に居る審判はボールを持ちません。新しいボールをボールパーソンから選手が受け取ります。

これって何でこうなっているのか、正確なところは分かりませんが、個人的勝手な解釈では審判が絶対的な存在として試合に関わっているか、あるいは相対的な存在か、という違いにあるんじゃないかなと思っています。

アメリカンスポーツでは選手が審判に対して異議を唱えることは基本的には許されていません。やったら退場です。日本のプロ野球では結構頻繁に選手や監督が判定に文句を面と向かって言っていますが、同じことをやるとメジャーではあっさり退場処分を食らいます。

逆にサッカーでは、本来はもちろん良くないことですが、抗議してナンボみたいなところがあります。ペナルティエリア内で守備側がファウルをしてペナルティキックになってしまったら、まずどこのチームでもやらかした側の選手達が審判を取り囲んで抗議します。もちろんサッカーでも選手や監督が度を過ぎた抗議をしたらイエローカードや退場処分になりますが、そうそうありません。

審判がプレーに対する判定を裁定者として下すアメリカ的スポーツと、どっちか分からない時だけ出てきて判定して普段は目立たない方が良いイギリス的スポーツ、という見方が出来るでしょうか。

ここから、イギリスとアメリカの文化や国民性の違いにまで踏み込むと安易な文化論になってしまいますが、英米文化の違いよりも島国・大陸文化の違いの方が大きい気もします。適当な意見ですが。

今ではたいていのスポーツでビデオ判定やチャレンジ制度(それに類する制度)が備わってきましたので、審判への異議も形が変わりつつあります。また、国単位の文化も今では人も情報も入り混じり、どの国にも色んなスポーツをする人と見る人がいます。

もともとはどうあれ、審判と選手の関係性、試合への関わり方、ジャッジの下し方については、アメリカ的なものとイギリス的なものとの中間ぐらいに、どのスポーツも収斂していくのではないですかね。

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