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人事課題において従業員の「期待」をどう捉えるか

こんにちは。WorkTech研究所の友部です。
先日のnote「データ活用を阻む3つ壁」において、データ活用は「課題解決」という目的における手段だ、というお話をさせていただきました。今回は一歩踏み込んだ話をしたいと思います。

事業やサービスの分析でも、人事の分析でも、課題解決として「不満をなくす(あるいは満足度高める)」ことを目的にすることがあります。事業やサービスであれば利用頂いているお客様の不満をなくすため、分析して課題をクリアするための事業やサービスの改善を行います。

人事であっても同様です。会社の中には様々な不満があると思います。働く環境に関する不満として、人間関係や業務環境、評価やキャリアなど、従業員の方々は会社や組織に対して不満を持っています。こういった不満を解消するため、人事の方々は人事制度の策定や施策を実行しています。

こういった不満が何かを分析することが重要ですが、キーとなるのが「期待」です。従業員が持っている「期待」が、実際の会社や組織と「ズレ」るとそこに不満が発生すると考えています。もちろん、それ以外にも不満が発生する要因はありますが、「期待のズレ」を如何になくしていくか、が従業員の不満解消の糸口だと思っています。

今回はこの「期待」に着目して、人事課題の解決をどう行うのか考えていきます。

「期待のズレ」から生じている「不満」

仕事をする中で、一緒に働く人にも働いている組織に対してイライラしたり不満を持つことはたくさんあると思います。

私自身もそうで、このイライラを自分なりに分析してみると、自分が抱いていた期待が外れた時に起こることが多いかなと感じています。ある人に対して「こういうお願いしたらこういうアウトプットを出してくれるに違いない」と想定していたら全く違うアウトプットが出てきたり、会社に対して「うちの会社はもっと成長を促すような環境があるのだろう」と期待していたらそれがなかったり・・・。そういった「期待」と「現実」のズレが大きければ大きいほど、不満として現れる可能性が高いです。

期待と現実のズレ


働く環境に対して、働く人それぞれが「期待」を持っています。やりがいのある環境や、成長できる環境、快適に業務ができる環境など、期待するものは様々かと思います。そしてこの期待は、その人の過去の経験や記憶に基づいて形成されます。

そのため、期待には明示的ではないものがあります。例えば、比較的社内ルールが整備された大規模の企業から起業して間もないベンチャー企業に転職したとしましょう。大規模の企業では当たり前のようにあったもの(インフラや業務サポートの仕組みなど)が整っておりません。この前職では「当たり前だったもの」が明示的ではない期待であり、気づかぬうちに不満がジワジワ溜まっていくことになります。

働く人自身が認識できている明示的な期待であれば、不満も認識しやすいため表に現れることが多く人事としても対処できます。しかし明示的でない期待は働く人自身も認識できていないため、明確な不満として認識されるまで時間がかかってしまい人事として対応するのが遅くなってしまうことがあります。

「期待のズレ」をなくすには

では、従業員の「期待のズレ」をなくすにはどうしたらよいでしょうか。人事としてやることは以下の2つとなります。

  1. どのような期待を持っているか明確にする

  2.  期待と現実のズレを埋める

…と当たり前のことを書いておりますが、それぞれについて説明していきます。

1. どのような期待を持っているか明確にする

従業員の期待を知る上で、人事はたくさんの情報を集める必要があります。

前述したように期待は人それぞれの経験や記憶から形成されるので、従業員の経歴やバックグラウンド、役職や職種など、期待を掴む上でのヒントとなります。これらは人事ですでにデータとして取得しているものも多いため、有効に活用できると思います。

また、自社のブランディングや採用過程でどのような期待を醸成しているか、も把握する必要があります。これは明示的な期待にやすいので、入社する人がどのような期待を持っているのかわかりやすいです。

しかし、"人事における「データ活用」を阻む 3つの壁"で書かせていただきましたが、人事が保有しているデータだけから物事を判断してしまうことは問題です。従業員の期待が何かを明確にするのに、必要十分な情報が集まっているか、心がける必要があります。新たに従業員から情報を引き出すために、従業員サーベイを利用する方法もあります。方法としてはここでは2つの方法を紹介します。

「期待は何か」を直接的に問う方法
「あなたは会社に成長環境を期待していますか」「あなたは報酬に期待していますか」というような形で期待を直接的に質問します。一番のメリットは出てきた結果がわかりやすく、人事として扱いやすいという点です。一方で、従業員が認識できている期待は抽出しやすいですが、明示的ではない期待を見つけることは難しいです。

「期待が何か」を分析により推定する方法
働く環境への満足についての設問と、働きがいやエンゲージメントに関する設問の相関分析により、「期待が何か」を推定することができます。働く環境への満足に関する設問は、例えば「あなたは会社の成長環境に満足していますか」「あなたは報酬に満足していますか」といったものがあります。これらの設問の中から、働きがいや満足度に関する設問との相関が強い設問を見つけます。

ある設問が働きがいや満足度に関する設問との相関が強いということは、その設問のスコアを上げれば働きがいや満足度が上がる可能性があります。これを働きがいにつながる期待と見立てます。もちろん相関に過ぎないので因果関係は不明ですし、もっと複雑な分析もできますが、期待の仮説を立てるという意味では分析のファーストステップとして有効な手段です。

いずれにしても、まずはきちんと情報を集めて、従業員の期待を明確にするということが大事です。サーベイを使えば期待を可視化できる可能性も高まります。その期待に対して、会社や組織として足りていないところを施策で補ったり、従業員が持っている期待を修正したり、ということを行います。

2. 期待と現実のズレを埋める

期待が明確になれば、現実とのズレを埋めることで不満を解消することができます。期待のズレをなくすため何らかの施策を行いたくなりますが、その前に注意しなければならないことがあります。それは、明確になった期待が会社や組織に対して期待していいものかどうか、ということです。

そもそも会社や組織が実現できない・もしくは実現する予定のない期待は、満たされることなくずっと不満として残ります。このような場合は、会社・組織のやること/やらないことを明確にして、正しい期待を持ってもらうことが重要です。特に、やらないことをメッセージングすることは期待の調整として重要なアクションだと思います。

よって期待と現実のズレを埋めるには、まずその期待が会社や組織に対して期待してよいものなのか、を見極める。会社や組織に期待して良いものなら、期待のズレを埋めるため人事施策等のアクションを行い現実を期待に近づけていく。一方で、会社や組織にそもそも期待できないものであれば、会社・組織のやること/やらないことのメッセージングを行い期待を調整する、ということになります。

期待と現実のズレを埋めるには


働く人自身が、自分の期待を明確にする

最後に、働く人自身はこの「期待」をどう捉えるとよいでしょうか。

私自身これまで何度か転職してきましたが、何を期待しているか、が明確な転職ほど入社後のモチベーションを高く維持できる傾向があったかな、と感じています。逆に漠然とした期待で転職すると、モチベーションの維持で苦労した印象です。

漠然と「何かいい会社なんだろうな」と明確な期待がない状態では、これまでの職場で「当たり前にあったもの」がないと気づくたびに不満が湧いてきました。一方で、働く環境に対して「この事業に関わりたい」とか「この人と仕事をして成長したい」などという明確な期待がある場合には、細かい不満があったとしても致命的にはなりませんでした。

普段何気なく仕事をしていると、自分が会社や組織に何を期待しているのかを考える機会はあまり多くありません。転職するタイミングで初めて自分が何を期待しているのか考えることがあるかもしれませんが、会社を選ぶ明確な基準がないまま漠然と良さそうな会社に魅力を感じてしまうことも多いかと思います。

人生の価値観も働き方も多様化しており、会社や組織に何を期待するかもバラバラなはずです。パフォーマンス高く働くことができたり、転職においても会社選びの基準として役立ったりするので、自身が持つ会社や組織に対する期待を明確にする、働き方の「あるべき姿」を定義できると良いと思います。

人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方などWorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、引き続きお気軽にお申し付けください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。