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中小企業が採用市場で勝ち、エンゲージメントの高い仲間を集めるための採用広報とは?【前編】

*この記事は、2020年2月時点のものです。

大阪市北区に本社を構える株式会社Be&Doは、Webアプリケーション「Habi*do(ハビドゥ)」(https://habi-do.com/)の開発、導入運用支援を行っている企業です。

株式会社Be&Do ホームページ
https://be-do.jp/

社員数13名という規模ながら、2011年の創業当初からWebを通じた企業広報や採用広報に取り組んでいたというBe&Do。採用市場では、売り手市場も相まって、中小企業では、「母集団すら集まらない」「人材採用が難しい」と言われる中、そのほとんどの社員をリファラル経由で迎え入れることに成功しています。そのポイントは、積極的な外部への発信でした。

Be&Doの自社広報の取り組みの狙いや背景、そして、この規模感でも自社の採用広報メディアを通じた外部発信に取り組むべき理由とは何なのか。ポイントを探っていきます。(取材/編集:Keisuke Dojo)

インタビューした人
橋本 豊輝(Toyoki Hashimoto)
株式会社Be&Do取締役/COOとして、マーケティング、セールス、企画・開発など事業推進の舵取り役を一手に担う。前職では、新卒採用の求人広告・採用コンサルティングのセールス、営業企画などの経験を持ち、取材者の道場とは前職の同僚の間柄。

自分たちは何者なのかを発信し、共感してくれる人を集める

道場:
本日はよろしくお願いします。まず、早速ですが、スタッフブログとして、自社の社員が発信する採用広報メディアとして取り組まれてきたと思うんですが、その背景を教えてください。

橋本:
Be&Doの前身のキャリアステージという会社を含めて、2010年頃から自社ブログメディアを通じて外部に発信し始めたんですけど、本格的に取り組み始めたのは、2011年頃ですね。時代的に、スマートフォンやタブレットなどのデバイスが普及し、また同時に、人と人をつなぐツールとしてSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が普及し出したのもこの頃です。FacebookやTwitterなどが、日本でも使われるようになってきて、それによって、人々がインターネット上の情報に触れる機会が増えたように思います。運用をし始めた当初は、採用だけが目的というわけではなかったんですけど、共通して課題だったのは、「自社の認知をどうやって高めていくか」ということを模索していました

道場:
まずは「自社のことを知ってもらう」。それが、起点だったということですね。

橋本:
はい。当社は即効性があって、誰が見ても分かりやすい商材を提供しているわけではなく、創業当時から「人と組織のイキイキ」を実現するための企画を世の中に提供していたので、「自分たちは何者なのか」「どんなことを考えているのか」を外に発信していかないと見込みとなるお客様にも知ってもらえないと思っていました。会社情報や事業データの一部を見るだけでは「どんなことをしてくれるのか」「信頼できる人たちなのか」というのが、伝わり難いですよね。当社の会社規模が小さいのもあり、会社としてのブランドや信頼を作っていくには、当社で働いている「人」にこそ、フォーカスを当てていくことが大切だと考えたんです。

道場:
無形サービスだけに、「誰がやってくれるのか」は大切な要素ですもんね。

橋本:
はい。当社の事業自体も、人々のモチベーションをテクノロジーを活用して解決するIT企業としてシフトをしている時でしたので、インターネットをフル活用して情報を発信していくのは当たり前だよね、という発想もありましたね。幸いなことに、代表の石見も僕自身も、個人的にブログで書くことは抵抗なくやっていたので、「みんなでやっていこう」とトップも一緒に走り出せたのが大きかったかもしれません。そのため、この取り組みに対する会社の理解も早かったですね。

道場:
自社の認知を高めていく、このようなWebによる発信はBtoB企業ほど取り組んでいる企業は少ない気がするのですが、どうして、御社のようなBtoBの企業が、しかも、この13名の組織サイズで取り組もうと思ったんですか?

橋本:
ぶっちゃけて言うと、当時、細かな戦略面まで考えられていたかというと、そこまでの余裕はなかったんですよね(笑)。ですが、思い立ったことは、「やってみよう!」というのが当社のポリシーでもあるので。当時から企業として大切にしていた根底にあったのは、「人と人のつながりは、どこで、どのようにつながるのかわからないよね」という、ご縁を大切にしています。目先ですぐにお客様となったり、入社したりといった結果につながらなくても、長い目線でつながりを作るということですね。当社は、これまでの経験からも、ピンチの時にこそ、広く浅いつながりが、救いとなったり、学びとなったり、というのを経験しているんですね。だからこそ、「自分たちは何者なのか」ということを発信し、共感してくれる人たちを集めるということは、当たり前のようにやれているのかもしれませんね。

道場:
そうですよね。僕もこれまで「つながり」に助けてもらうことが多いと実感しているので、長い目でつながりを作ることが大切だというのは同感です。創業時の人材業から事業内容も変化し、今は自社開発のテクノロジーカンパニーとして取り組まれているわけですが、当時はデザイナーや開発エンジニアは全くいなかったんじゃないですか?

ご縁と発信がさらなるご縁を呼ぶ。リファラルという人と企業のつながりを生み出し、0→11名に

橋本:
はい、全くいなかったです。ゼロスタートだったのですが、先ほどお伝えしたように、ご縁を大切にしていたので、外に発信することはWeb上に限らず、人伝いにやってきたんですね。実は、うちの会社って、リファラルの連続なんですよ。Be&Doが立ち上がる時の社員はゼロ。私自身も、代表の石見が立ち上げた人と組織の研究会(APO研究会)に参加したことがきっかけでした。ちょうど転職を検討していた時期に、お電話させてもらって、すぐにその日にお会いして、「どう?面白くない?」とお誘いいただいて。

事業拡大のフェーズで、必要になるエンジニアの方、デザイナーの方、マーケティング、セールスの方がいたのですが、人のつながりを大切にして、ずっと発信をしていたからなんですよね。周囲の人が、「そういえば、Be&Doさんが募集をしていたな」と思い出していただけるというのは、とても大きいんですよ。それに、私たちにタイミングがあるように、求職者にもタイミングがあります。そのタイミングが一致しないと採用できないのですが、その時にご縁が無くても、一度出会ってつながりを保っておけば、後々にタイミングが合うことがあると思うんですね。実際に、今、当社のサービスのUX まわりのリニューアルなどを手伝ってくれている方がいるんですが、業務委託で参画してくれているんですけど、最初にお会いしたのは10年前なんですよ。その時は、お互いにタイミングが合わなかったのですが、正社員という形ではなくても、一緒に働けているわけです。10年越しで一緒に働くことになるって、なかなか無いですよね(笑)。

道場:
それはすごいですね!石見社長も橋本さんも、ご縁を大切にするというスタンスが前提にあって、リアルでやっていることをWebにも持って来て、融合させているという感じなんですね。お話を聞いていると、リファラルを上手くやろうと思うと、そもそも根っこの組織の文化が大切なんじゃないか、って思ったんですよ。

橋本:
組織文化は、本当に大切だと思いますね。リファラルは流行っていますが、飛びついてもすぐに成果は表れないと思います。代表の石見も、僕も、「うちの会社はこういうこと目指しているんだよ」ということを折に触れて、いろんなシーンで社内で、繰り返し、話をしているんですね。それが積み重なって、組織文化になっていくと思いますし、儀礼的に「朝礼で話す」とかではなく、日常のコミュニケーションの中に含まれていることで、社員が自然にSNSや自社メディアで発信する内容も、無理やり感や認識のズレがなく、一本の幹が通うように落とし込まれていくんだと思います。

道場:
たしかに。理念の浸透は、社員の内面(感情面)に訴えかけて、どう世の中ゴト、自分ゴトと捉えるかというのは大切ですもんね。日常のコミュニケーションの中で、それが行われているからこそ、自分たちの存在意義も再確認できる気がします。ちなみに、自社の採用広報メディアは、外部の人たちからの反応はありますか?

橋本:
実は、嬉しいことに、結構見てくれているんですよ。コンテンツを更新した後に、Facebook等のSNSでも流すのですが、そこで発見してもらって、「何か楽しそうなことやっていますね」「会社の雰囲気良さそうですね」って言われることが多いです。当初は、マーケティングを意識したわけではありませんけど、つながりを持った方々には、しっかりコンタクトを取るご縁を大切にしていたおかげもあり、一気に増えるよりも、ジワジワと徐々に増えていっていたなと思います。

タイミングを企業都合ではなく、求職者側に預ける

道場:
Be&Doさんが、採用メディアで伝えたかったことは何だったんですか?読み手に対して、何を感じて欲しかったんですか?

橋本:
僕たちは、「人と組織のイキイキ」を掲げている会社です。そういった想いを持っている会社なんだから、自分たち自身がイキイキと働いていないとね、というのが根底にあります。だからこそ、社内の様子などもオープンにしていきたいし、逆に、「人と組織のイキイキ」を掲げている会社が、面白そうじゃなかったり、つまらなさそうだったりしたら、何も説得力もないですからね(笑)。そういった会社には、お客さんも相談したいとは思わないんじゃないかなと思うんですよ。

道場:
自分たちが掲げている大切なものを体現するためだったんですね。なるほど。先ほど、オープンという話もありましたけど、世の中のユーザーは「透明性」を求めていると思うんですよ。ユーザーの方が逆に情報を持てるようになって、立場が上になってきていますよね。企業が隠しても、隠し切れないんです。そのユーザーサイドの要請に応えていかないと、人が集まらなくなると思っています。

先ほどのお話の中にもあったんですけど、正社員だけが自分たちの事業をサポートしてくれるステークホルダーではないと思っています。働き方の選択肢が多様化している中で、あえて起業したり、あえてフリーランスを選んだりしている人もいると思います。正社員の雇用契約を結んだ人たちだけが、エンゲージメントの高い人たちというわけではないですよね。もっと、自社に関わってくれる人たちを大きな枠組みで捉えないといけないって思います。

橋本:
それは、めっちゃありますね。正社員だとか、フリーランスだとか、そういったのは関係なく、組織へのエンゲージメントは大切だと思います。私たちも、フリーランスやパラレルワーカーの方とも契約していますけど、一様にみなさんコミットしてくれるんですよ。そして、応援してくれるんです。

道場:
正社員という枠組みだけに捉われていると、選択肢が狭くなるのかもしれませんね。これも、タイミングだとも思いますし、副業やパラレルワーカー的な働き方が普及してくると、「一緒にやりたいかどうか」という選択になっていくんじゃないかな、って思うんですよね。つまりは、物理的なものよりも、精神的なつながり、心で繋がっていくような感覚ですかね。その企業のファンになって、そこから、たまたま参画するようになったという。これこそ、ご縁かなって思います。

そう考えると、Be&Doさんの事例のように、「活動のタイミングを企業側ではなく、求職者側に合わせてあげる」、そして、「情報を発信し続け、しっかりと見える場所に置いていくこと」が大切になっていると思うんですね。企業側の都合だけで時期を決めたら、機会損失が生まれると思うんですよ。どうしても、採用活動だと単年予算主義になりやすいので、難しいところですが。

橋本:
中長期視点のもとで、会社としての価値を、人に対する考え方を、変えていかないといけないですよね。単年度だけの予算主義で、採用活動や従業員の配置などを考えると、どうしても限界が来るんですよね。自分たちがビジョンに向かって走っていく中で、そして、必要なタイミングで共感する人が集まってきてくれる。そんなイメージなんですよね。短期間で出会って、面接数回だけでお互いを判断するのは、正直かなり難しいですよ(笑)。

道場:
それこそ、出会った人材のプールを作っていくイメージですよね。Be&Doさんの場合は、ご縁をつなぐ、つながり続けるということ。すぐにお互いの機会が来なかったとしても、短期の刈り取り発想ではなくて、ゆるく網を張っておくようなイメージで。そのために、Webで自分たちの情報を定期的に発信していくという発想なんですよね。そうすると、その人が見てくれたタイミングで、何かしらのアクションというのが得られるんじゃないかということですね。

ラブレターが欲しければ、まず自社のことを知ってもらうことが先

橋本:
はい。そう思います。Be&Doには、海外出身のスタッフが数名いるんですけど、彼らに話を聞くと、やはり日本の就職や転職は、かなり特殊だと口をそろえて言います。「みんな一斉にエントリーするし、その会社のことわからないのに応募するんだ」と。「じゃあ、海外では、どうやって就職や転職活動しているの?」って聞いたら、「Cover Letter」と言うものを出すらしいんです。

応募したい企業のホームページなど、ありとあらゆる情報を徹底的に調べて、「なぜ自分がそこに行きたいのか」「自分の専門性がどのように活かせるのか」、そういった内容を一週間ぐらいかけて、ラブレターのように書いて送るみたいなんです。逆に企業側も、通年採用で窓口は常に開いている状態を作っているようですね。採用されるかどうかは別として、タイミングが合えば、ポジションを用意しようということもあるでしょうし。

人材の採用や評価、配置などの考え方は、日本と海外でだいぶ違うなと考えさせられました。どっちが正解かは分からないですけど、就職や転職活動の時期を狙って、そこに網を張ると言うのは、一時的なリソースとしての作業員が欲しいというのなら良いのかもしれないですけど、「一緒に事業をコミットして、育てていきたいんだ!」という人を採用する時には、相当お互いのタイミングが合わないと、逆にリスクが大きいと思いますね。

道場:
かなりの確率論の話になるでしょうし、短期間では限界もあるので、お互いの理解度も上げられないですよね。それが、採用のミスマッチにもつながっているわけですが。

橋本:
そうですね。だからこそ、会社概要や採用データといった淡白な情報ではなく、「どんな想いで、どんな人が働いていて、どんな事業をやっていて、どんなエピソードがあるのか」をどんどん発信して表に出していくことはメリットしかないと思うんですよね。それは、従業員に対してももちろんですけど、取引先に対しても、ビジネスパートナーに対しても、もしかしたら、その社員の家族に対しても、社外のあらゆるステークホルダーに対して、「良い会社だね」「こんな感じなんだね」「こんな人がいるんだね」「安心だね」と知ってもらえると思うんですよ。

皆さんも、一人ひとりの人生を尊重して、イキイキと働ける方が良いって思っているはずですし、その家族も安心して行かせられるという後押しをしてくれることも大事だと思うんですね。これは、決して大手じゃなくても、負けないものを発信していくことで、勝ち筋はきっとあります

道場:
その想いの部分は、差別化できる企業のオリジナルの部分ですもんね。

橋本:
それと逆に、求職者側もある意味、情報を待ち受けているだけではなく、自ら取得しに行くといった形である意味、自立をしないといけないと思うんですよね。自分で、自分の働く場所の情報を取りに行く、探しに行くということことです。

道場:
そうですね。それを期待するのであれば、まず先に私たち企業側が、求職者に対して判断材料の元になる情報をしっかりと発信をしないと、判断するものもできないですからね。先ほどお話ししていたように、ユーザーサイドに立った、信頼ある情報、透明性のある情報、時にはマイナス面もあるかもしれませんけど、隠すのではなく、ありのままの等身大で。その課題に対してどのように向き合っているのか、そのようなスタンスこそが大切ですよね。採用ゴールではなく、定着ゴールに発想を転換することも必要かもしれませんね。

チャンスだと思うのは、逆に言えば、求職者の価値観も多様化していることだと思うんですよ。これまでのように「役職やポストを上げたい」「給与を上げたい」といった衛生的な志向が強いと、どうしても企業力に左右されがちで、中小企業は就職対象として検討の土俵にも上がりにくかったはずです。今は、ダイバーシティと言われるように、価値観が多様化しているがゆえに、「自分たちの求めるターゲットがどういう人なのか」という採用ペルソナ像を明確にできれば、中小企業でも勝てると思っています。自社が求める人たちが、「どんなツールを使ってて、どういう生活をしていて、何に興味関心があるのか」を理解しようとすれば、勝ち筋も出てくると思っています。

橋本:
そうですね。多様化している時代だからこそ、一人ひとりにしっかりと向き合わないといけませんね。そこは、私たちBe&Doが大切にしていることでもあります。モチベーション(動機付け)のスイッチは人それぞれ違います。どうやってスイッチを押すのか、は観察しないとできませんからね。

ポイントのまとめ

  • 自分たちは何者なのかを発信し、共感してくれる人を集める。

  • タイミングを企業都合ではなく、求職者側に預けて、つながり続ける。

  • ラブレターが欲しければ、まず自社のことを知ってもらうことが先。

この続きは、インタビュー後編に続きます。後編も是非ご覧ください!

採用戦略立案、採用マーケティング設計支援、採用ブランディング、採用広報など、インナーの理解を通じた戦略上流を中心とした支援をHRパートナーとして活動を行なっています。経営と近く、事業理解を必要とするサイズの企業の伴走型サポートがメインです。

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