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誰得ドット絵メイキング『福島第一原発』

明日3月11日で、東日本大震災から12年ですって。時が過ぎるのが早いですね~。

なお今回ドット絵メイキングをおとどけする『福島第一原発』は1年前に記事タイトルに使ったものです。いやほんと、時が過ぎるのが早い!

まずは資料を見る

いくらあの事故が世界に強烈なインパクトを与えたといっても、記憶のなかの福島第一原発は「なんか水色の立方体」くらいの曖昧なもの。ドット絵を描くにあたっては、きちんと姿を確認したいところです。

実は事故後、東京電力がサイト内に事故直後の様子やその後の成り行きをまとめたページを作成しているので、それを見に行ってみましょう。

サイト内に事故前後の写真が点在しています。

事故当時の12年前にさんざん見たはずなのに、意外と見覚えのない「こんなになっていたのか」という写真も散見されます。というのも、事故直後こそジャーナリズム魂で現地へ向かったTV等が、しばらく立つと現地へ社員を送らなくなり、報道の機会を減らしたらしいのです。

当時は民主党政権なので報道への政治的圧力は現在のように強くはなかったようですが、財界は原発推進だからCM減少を恐れたという見方もあるようです。「報道への圧力」と言われるとパッと「政治が」と思ってしまうところですが、そこで思考停止してはいけないんでしょうね。

ま、今回はそういう話じゃないんで、作業を前に進めていきます。

事故前のキレイな福島第一原発

ひとまず、事故前の福島第一原発(1号機)を作ります。ほぼ立方体なのでドット絵描きにはやさしいフクイチちゃん。地球には鬼の顔ですけどね。

単純な形状ですが、細かいところを描きたいのでキャンバスのサイズは32x32ドットにしました。サクサク進めていきます。

手順①②③

①まずは立方体を描きます。
②微妙に縦長らしいので少し背を高くしつつ仮の色で塗っていきます。
③上下を区切る節目のような線を入れつつ色を整えます。

昭和のお風呂っぽい形状に惑わされたわけではないのですが、この段階で手前向きのカドに中間色を配置して面取り(=カドを丸くする)をしたのは失敗でした。丸めてやわらかい印象にしても仕方ないですからね。これはあとで直すことになります。

手順④⑤⑥

④正面(左向き)に白い模様を入れていきます。なんなんだろうこの模様。
⑤側面(右向き)にも白い模様を入れます。以前はここで完成でした。
⑥先ほどの反省点、カドの丸みをなくしてパキッとした形状に修正します。

以上で事故前のフクイチちゃんが誕生。元気な原子炉建屋です。

メルトダウンさせる

続いてメルトダウンさせます。「いや、させないでよ」と思いつつ、メルトダウン後の様子を作っていきます。「これきりになりますように」と思いを込めて、です。

手順⑦⑧⑨

⑦実際の事故にあわせて上半分を吹き飛ばし、縦横の"骨"を描きます。
 露出した建屋の内部構造は保留し、とりあえず暗い青色で潰します。
⑧内部構造を細かくは描けないので「ヤバイもののコア」がある様子を
 "赤いドーム的なもの"を描いて示します。
⑨縦横の骨を支える斜めの"小骨"を描き足します。

もう、なんというか密度が高くてギチギチです。存在するものをどう描き込むかに終始するので、ドット絵のノウハウについて語ることもありません。

手順⑩⑪⑫

⑩さらに、爆風で折れて垂れ下がった小骨を描き足します。
⑪微妙な差ですが、暗い面(右)のブルーが"さわやカラー"すぎるので
 少し彩度を下げて荒廃した感じを出します。
⑫骨(柱)1本1本にフチドリをつけるのは無理なので
 毒々しい"ヤバ色"のオーラ的なものをまとって完成です。

完成って言うの、おかしいですけどね。「終わり」です。

東電会見こぼれ話

ところで以前、機会があって東京電力の定例会見(主に事故対応の報告をする)に何度か参加したことがあるんです。近年になっても「パイプが折れれてて水漏れしてた」(もちろんただの水じゃないですよ)みたいな報告がそれなりにあって。まあそれ自体は普通によくあることなんですけど、記者たちに状況説明を求められた東電広報のエライ人が「よくわかりません」みたいになるなんとも困った空間です。

この会見、TVはとっくの昔の関心を失っていて、"また何か起きたとき"に使えるように「代表カメラ」と呼ばれる各社で共有する映像を撮りにくるだけ。出席者の多くは、新聞系の記者とフリージャーナリストらしいです。

ま、東電側も「真摯な態度で事故対応に臨む姿を見せねばならない」という動機で儀礼的に続けているものですから「地味にうまく行ってませんよ(要約)」と報告するだけの、こう言うと不謹慎かもしれませんが不毛な会見です。

ただ、ある日の会見で、ひとりの東電女性スタッフの姿から気付くことがありました。

会議室の奥には"東電のエライ人"が立って「こんな不始末がありました」的な報告をし、その前方にポツポツと記者たちが座って報告を聞いて頭を抱えているのですが、さらにその背後に東電広報スタッフが控えているんです。その日は男性がひとりと、女性がひとり。

ところが会見が始まって1時間ほど過ぎたあたりでこの女性スタッフが妙にそわそわし始めたのです。基本的には立ってその場にいるだけなのですが、ちょっと左右に動いたり。はじめは「東電社員も退屈なのね」と思っていたのですが、やがて足踏み運動を始める女性スタッフ。その動きは早く、大きくなり……。

なるほど、トイレへ行きたいんですね!

この時ちょうどエライ人は記者から突き上げを食らっており、明らかに話が長引く展開。というより、長引いたからこそのモジモジ&ソワソワです。見ているこちらは「今ならトイレ行けるのに」と思うところですが、きっとそうはいかないんでしょうね。長引いたからこそ、スッと終わるかもしれないし。前方にエライ人がいるわけですから、こっそり退出するのも無理な状況です。

でも、このまま長引けば「メルトダウン」は免れません!

どうするんですか、「東電廃炉会見で女性社員がメルトダウン」なんて見出しが新聞に踊ったら! あまつさえ「汚染水が……ううん、処理水でしたね」なんて書かれて……冗談にしてもひどすぎます! 海に流せばいいとか言わないでしょうね!? よくないよ!

……なんてバカなことを考えていたら意外にスッと話は終わりまして、無事女性スタッフはドアを開けつつ小走りに退室し、メルトダウンは回避されました。よかった! 心の底から良かったと思います!

でも、この「人にやさしくない感じ」。これってすごく危ういものだと思うんです。「会見の終わりをスタッフが控えて待つ」という表面的なルールにこだわり、トイレにも行けない。女性はただガマンさせられ、隣の男性スタッフも気付いているだろうに「ここは俺に任せて」のひとことも言えない。

会見で聞いたどんな不始末よりも、「またやらかすんじゃないかな、東電は」と思った瞬間でした。

もう、かんべんしてください。

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