2020年 4月7日「蠱毒と肩書きの話」

うちのマンションの一階。
マンションの入り口にほど近いところの一室。
その部屋の前には泥だらけの子供用の赤いスニーカーと虫籠がいつも置かれている。

数週間前から虫籠の中を窺っている。
バッタが多い。
しかし数日空けてみるとそいつらはもうピクリとも動かなくなっていた。

そしてまた数日空けて見るとカマキリやクモがぶち込まれている。蠱毒なのか。
共食いを起こしているところも何度か見かけた。

あれは飼っているわけではないらしい。
虫籠に入れただけ。

確かに虫籠に入れたからって〈飼う〉ことにはならない。

いい大学を出たからといっていい人間というわけではないし、母親だから子どもを育てるというわけでもないのだ。
そういうものだ。

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