2020年 3月31日「鬼のツノの話」

夜中。
ウヒャウヒャと地獄の風景を描いた図録を眺めていた。
ぐらぐらと煮えた釜で鬼が霊を茹でたり、針の山で串刺しにしていたり、舌を抜いたりしているやつだ。

しばらくボーッと眺めているとハッとする。
〈あっ! この鬼、ツノがない!〉
えらく驚いた。
ツノがない鬼がおるなんて。

そうなると目尻にグワッと力が入った。
〈コイツも! コイツもだ!〉
なんていって、ツノのない鬼を探した。

一頻りツノない鬼を見つけて一息ついて考えた。
ツノのない鬼って、いじめられたりしたのかな。
職場関係とか大変なのではないだろうか。

調べてみると、図録の鬼にツノがないのは書き手の塩梅だそうだ。
そもそも、書物に描かれる鬼にツノが生えているのは「人ではないもの」を表現する為だという。
なまはげもそうだ。

人間在りて鬼も在り。
人間在りて怪異も在り。

随分昔から、ボクは視えないもの達の虜だった。

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