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【医師論文解説】手軽な反面、命取りか!? 超加工食品の本当の姿【OA】


【背景】 食品の加工度に着目した「NOVAフード分類」が1990年代後半に提唱されて以来、超加工食品の健康影響が注目されるようになりました。超加工食品とは、ジャンクフード、インスタント食品、清涼飲料など、工場で化学的に transformされた ready-to-eatの食品を指します。原材料が抽出され、多くの添加物が加えられ、本来の食品とは異なる物理的・化学的性質を持つことが特徴です。

近年、世界的に超加工食品の供給が増大し、消費シェアが拡大しています。豪州・米国では総エネルギー摂取量の42-58%が超加工食品由来とされ、中進国でも16-30%に達する地域があります。利便性の高さから普及が進んだ一方、栄養素の偏りや添加物、加工残渣物質などの健康影響が危惧されるようになりました。

【方法】 本研究では、2009年から2023年6月までに公表された超加工食品と健康アウトカムに関する45本のメタ解析を対象に包括的レビューを行いました。メタ解析ではコホート研究、症例対照研究、横断研究の結果が統合されていました。

レビューでは、まず独自の「証拠確実性分類」を設定し、各メタ解析の結果を「確実(クラスI)」から「証拠なし(クラスV)」の5段階に分類しました。次にGRADEシステムで、エビデンスの質を「高」「中」「低」「非常に低」と評価しています。

さらに、メタ解析の異質性(I2統計量)、予測区間、過剰有意バイア ス、小さな研究のバイアス、最大研究の有意性など、複数の統計学的指標も検証しています。

【結果】 45のメタ解析のうち、32件(71%)で超加工食品摂取量の増加と有害な健康アウトカムの正の関連が認められました。

確実な証拠(クラスI)が得られた主な疾患は以下の通りです。 ・心血管疾患関連死亡リスク比1.50(95%CI:1.37-1.63) ・精神疾患合併症オッズ比1.53(95%CI:1.43-1.63) ・2型糖尿病発症リスク比1.12(95%CI:1.11-1.13)

強い証拠(クラスII)が得られた主な疾患は以下の通りです。 ・全死亡リスク比1.21(95%CI:1.15-1.27) ・心疾患関連死亡ハザード比1.66(95%CI:1.51-1.84)
・2型糖尿病オッズ比1.40(95%CI:1.23-1.59) ・うつ病ハザード比1.22(95%CI:1.16-1.28) ・睡眠障害オッズ比1.41(95%CI:1.24-1.61) ・肥満オッズ比1.55(95%CI:1.36-1.77)

GRADEの質評価では、疾患の22%が「低」、42%が「非常に低」と判定されました。一方、2型糖尿病や肥満など4件が「中」と比較的高く評価されています。

【論点】 本レビューでは、超加工食品の摂取増加と死亡リスク、心血管代謝疾患、精神疾患などの深刻な健康アウトカムとの正の関連が強い根拠で示されました。一方、がんや消化器疾患、中間的代謝リスク因子については、エビデンスが限定的でした。

超加工食品が健康に悪影響を及ぼすと考えられるメカニズムは以下が指摘されています。 ・栄養の質の低下(糖質過剰、食物繊維不足など) ・添加物の影響(合成甘味料、防腐料、着色料など) ・加工過程で生成された発がん性物質(アクリルアミド、ヘテロ環式アミンなど) ・包装からの環境汚染物質曝露(マイクロプラスチック、ビスフェノールAなど) ・食品マトリックスの変化による消化・吸収の変化

ただし、いくつかの課題もあります。メタ解析間で異質性が高かったり、精度が低い研究があったりと、質的なばらつきが認められました。また、超加工食品内の亜種間での影響の違いを検証する必要もあるでしょう。

【結論】
本研究は、超加工食品の過剰摂取が有害な健康リスクを高める可能性が高いことを実証しました。特に死亡リスク、心血管代謝疾患、精神疾患との関連が強い根拠で示されました。

研究チームは、超加工食品の摂取を減らすための包括的な公衆衛生対策と、さらなる病理生理学的メカニズム解明の必要性を訴えています。

つまり、手軽で便利な一方で、超加工食品には健康リスクが潜んでいます。科学的根拠に基づき、可能な限り控えめにすることが賢明であると考えられます。

【所感】
食生活の西洋化が進む中で、超加工食品の摂取増加は避けられない流れですが、その健康影響は看過できません。

【引用文献】
Lane, Melissa M et al. “Ultra-processed food exposure and adverse health outcomes: umbrella review of epidemiological meta-analyses.” BMJ (Clinical research ed.) vol. 384 e077310. 28 Feb. 2024, doi:10.1136/bmj-2023-077310

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