【医師論文解説】医療現場の悲鳴!医師・看護師が病院を辞める原因はこれだった!?米国病院のリアルすぎるデータから【OA,済】
背景
米国の病院で働く医師と看護師のウェルビーイング(well-being、健康と幸福)が深刻な問題となっている。
コロナ禍で医療従事者の疲弊が一層顕著となったが、パンデミック前からも高いバーンアウト率が報告されていた。2017年の調査で医師の42%、看護師の44%がバーンアウトと報告している。
米国外科医総監が医療従事者のバーンアウトに警鐘を鳴らす声明を出すなど、公衆衛生上の重大な脅威と位置づけられている。
しかし病院経営陣からの支援は得られておらず、労働環境改善も思うように進んでいない。
方法
60の米国内Magnet認定病院(看護環境の優れた病院に与えられる認定)で、医師5312人、看護師15738人を対象に横断研究のアンケート調査を実施。
調査項目はバーンアウト、メンタルヘルス、ワークライフバランス、職場環境、患者安全・ケアの質、ウェルビーイング改善策への評価など多岐にわたる。
統計解析には多水準モデルを使用。個人と病院レベルのデータを考慮。
結果
医師の32%、看護師の47%が高度のバーンアウトを報告。バーンアウトは職場間で大きなバラつきがあった。
看護師不足、労働環境の問題、業務管理の困難さが、医師と看護師のバーンアウト、不満、離職意向と強く関連していた。
ほぼ半数が経営陣への不信感を報告。患者安全文化の欠如も目立った。
直接的な労働環境改善を望む者が多く、リジリエンス訓練は優先されていない。
看護師のバーンアウトが医師と看護師の離職率と関連していた。
論点
Magnet認定病院でさえ医療従事者のウェルビーイングは深刻な状況にある。他の病院ではさらに問題が大きいと推測される。
経営陣と医療従事者の関係が極めて悪化していることが示唆された。
患者安全文化の欠如が、医師の不満と離職意向、看護師の全てのアウトカムと関連があったことは注目すべき知見。
労働環境の直接的な改善が求められているが、リジリエンス訓練は優先されていない。
結論
病院医療従事者は高いストレス下にあり、Magnet認定病院でさえ深刻な人材流出の危機に瀕している。
経営陣による看護師確保、労働環境改善が喫緊の課題である。リジリエンスよりも労働条件改善がはるかに重要と考えられている。
文献
Aiken, Linda H et al. “Physician and Nurse Well-Being and Preferred Interventions to Address Burnout in Hospital Practice: Factors Associated With Turnover, Outcomes, and Patient Safety.” JAMA health forum vol. 4,7 e231809. 7 Jul. 2023, doi:10.1001/jamahealthforum.2023.1809
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