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レビュー 『エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢』

日本を出て、世界で働くにはどうすればいいか?

そんな質問に答えるのが本書で、レジュメの注意点、コーディング面接を突破するためのコツ、転職やレイオフとの向き合い方といった、具体的なアドバイスがもりだくさん。

海外で働くことの良い面、悪い面について、両方フェアに説明しているので、落ち着いて考えることができます。

すでにアメリカで働いている人や、アメリカでエンジニアを目指す人はもちろん、日本人が苦手な、自分の成果を上司に伝える方法なども学べるため、ヨーロッパや他の国での転職を考えている人にオススメ。

また、エンジニアに限らず、日本の外資系企業への転職を考えている人にも、面接や会社の雰囲気など、事前の情報収集に役立ちます。

まずはレジュメと面接について、アメリカでは名前は自分にとって唯一ものではなく、ニックネームを使ってもいい、というアドバイスには、なるほどと思わされました。

個人的にはどうかと思いますが、白人のよくある名前をレジュメを書くと、黒人の名前に比べて最初の面接に進める確率50%増えるという調査結果があるほどです。

とにかく、日本人の名前は一発では覚えられにくいので、ぼくもニックネームを使おうと思いました。

そして、日本の企業で行うことはまずない、面接時の給与交渉についても詳しく書いてあり、参考になりました。

また、エンジニアの入社試験で重要となるコーディング試験について、問題を解くことよりも、問題へのアプローチのほうが大切という点に納得させられました。

何よりも大切なのは、「こいつと一緒に仕事をしたら楽しそうだ」と思ってもらえることで、そのためには、他人の意見を客観的に聞けるか?他人から学べるか?自分の意見を主張できるか?意見が対立したとき、自分の意見に固執せずに正しい判断ができるか?といったことが大切になります。

そして、コーディング試験を突破するために、面接対策本とウェブサイトでの学習がオススメされていました。

特に、以下の2冊の本の問題を全て解けるようになれば、コーディングそのものについてはまず問題ないとのことで、ぼくも転職前に取り組もうと思います。

・『Programming interviews exposed Secret to landing your next job
・『Cracking the coding interview 150 programming questions and solutions
CareerCup
Leetcode Online Judge

また、働き始めたあとに、自分の成果の自然にアピールをするための方法として、「マネージャーとのミーティング」の活用があげられています。

それは、週1回のペースで、自分が抱えている問題についてマネージャーと2人きりでの話し合いですが、自分の問題だけではなく、マネージャーが悩んでいること、チーム全体の問題についての情報を仕入れるようにしましょう。

そうすると、常にプロジェクト全体とチーム全体の背景を理解し、自分の仕事がどのように全体に貢献しているのかを考えることができ、自然と自分の成果のアピールにつながり、無駄な仕事も減らすことができます。

そして、日本ではあまり聞かないレイオフへの対策についても本書は触れています。

一番の対策は、常に「転職可能な状態」でいることで、具体的には、他社がどんな開発プロセスやツールを使っているかなどの情報を仕入れることや、広い範囲で通用する知識とスキルを意識的に取り込んでおくこと。

そうすることで、自分の勤めている会社以外でも、どこでも通用する自分を築きあげることができます。

著者は日本ヒューレット・パッカード社在籍中に米国駐在を経験し、日本帰任後に米国移住を決意して、Amazon.comを含むシリコンバレー・シアトルエリアの会社5社に勤務。

現在はMicrosoft CorporationにてSenior Software Engineerとして働く傍ら、シアトル周辺の日本人技術者を支援するNPO団体Seattle IT Japanese Professionals(SIJP)のVice-Presidentとして勉強会の企画や講演も行っています。

本書は、面接する側も経験した著者だからこそ書けるリアルな話がもりだくさん。

こういった本にありがちな、自慢話やハッタリ、アメリカ礼賛が一切無く、アメリカでの経験を率直に語られている点が好感をもてます。

エンジニアとしてではありませんが、ぼくもアメリカで駐在員として採用と育成に携わっていたので、アメリカでの採用や評価基準、転職や解雇事情について、本書の内容に違和感はありませんでした。

アメリカで生きていく知恵、たとえば同僚との付き合い方や、自己主張の重要性についても同意できるものばかりで、これから外資企業への転職や海外での転職を考える人にはおおいに参考になります。


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