幽霊3(イ・ヨングァン、1965~ )

朝刊は訃音のようだ
ひとがしきりにしにつづける

ひとではないとみなして
ころしたのであろう
ひとですとつたえられず
しんだのであろう

ころしたかったと……ころしたであろう
ころしたかったが……ころしたであろう
ころしたかったのに……ころしたであろう

しんだひとは、
しにそうに哀悼するべきはずなのに

しんだものはあいかわらず
かおをぬがず
心臓をもちだしておかない

あいかわらず拉致中で
暴行中で
鎮圧中である

計画的に
即興的に
合法的に
ひとがしにゆく

戦闘的に
錯乱的に
究極的に、ひとがしにゆく

ああ、決死的に
総体的に
電撃的に
しんだものたちが、しなない

しんだものはあいかわらず失踪中であり
籠城中であり
投身中である

幽霊がふゆうする玄関たち、
朝刊は訃音のようだ



―――——―



保守政権9年間(李明博・朴槿恵)、韓国でデモに対する政治的弾圧が深刻化した真っ最中の悲痛を詠んだ詩。本文はもちろんハングルだが、珍しく、あえて作者が漢字にして強調しておいたところがある。それに従って、この訳でもほかはすべてひらがなにして、当該部分を漢字にした。しかし韓国語の語感とは違って、むしろひらがなが目立ってしまい、普通に書いて漢字の部分だけカタカナにするか、それともこのまま漢字の部分だけ韓国語版と同じく旧字体にするか悩み中である。

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