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「権利濫用」「安全配慮義務」「過失」「正当事由」等の一般条項をどう使うか!?

「一般条項」と耳にするとき、どのようなイメージがあるでしょうか?

トランプのジョーカーのように、ここぞ!というときに使える優れもの? それとも、実体がよくわからず苦手意識のあるものでしょうか?

7月10日刊行予定の『ケース別 一般条項による主張立証の手法 ――実体法と手続法でみる法的構成の考え方―― 』では、そんな「一般条項」の使い方に光を当てた実務解説書です!

民事法、商事法、清算・倒産法、知財法、労働法といった各法分野における主要な一般条項を取り上げ、主張立証の勘所を徹底解説します!

「どこまで主張・立証すればいいのか?」
「どのように主張・立証をすればいいのか?」

といった疑問に対して、ケーススタディで理解することができます!

今回は発刊に先立ち、編著者の

中島弘雅先生(慶應義塾大学名誉教授・弁護士)
松嶋隆弘先生(日本大学教授・弁護士)

による「はしがき」を先行して公開!

研究者で、弁護士でもあるお二人が「一般条項」に関心を持ち、本書刊行に至った想いに、ぜひ触れてみてください!

 一般条項は、要件事実的には規範的構成要件とも呼ばれ、通常の要件事実と区別される。その主張・立証に際して、評価根拠事実・評価障害事実に区分し、対立当事者に主張責任・証明責任を分配するのが一般的であるが、分野によっては他の類型もあり一様ではない。また前述の一般的な場合でも、過剰主張を許容する性質上、どこまで主張・立証すればいいか、悩みは尽きない。
 このような一般条項は、実定法分野のいたるところに存在し、法律学習者
にとっては学びのための躓きの石として、実務家にとっては主張・立証のた
めの難所として、立ちはだかっている。成文法国であるわが国において、一
般条項は、制定法が時代の変化についていくために不可欠の仕組みであるが、性質上内容がブランクであるところから、その内容に関しては、具体的事例の集積から帰納的に分析することにならざるを得ない。その意味でいうと、一般条項は、わが国において成文法と判例法とが交錯する領域であるといっても過言ではない。
 われわれ両名が法科大学院や法学部で民事手続法の講義を担当していて毎年悩まされるのは、過失や正当事由といった一般条項(規範的構成要件)に弁論主義が適用されるのかといった問題や、規範的構成要件について証明責任を観念できるのか、仮にそのままでは観念できないとして、規範的構成要件の評価基礎事実(評価根拠事実・評価障害事実)について、証明責任類似のルールを適用すべきかといった問題にどの程度触れるべきかという点である。もちろん、講義時間の制約もあって、講義の中では、主に過失や正当事由といった一般条項(規範的構成要件)について触れるのが精一杯であるが、現行法上、一般条項はそれ以外にもたくさんあり、しかも、各法分野ごとに固有の問題を含んでいる。

 本書は、各種法領域から代表的な一般条項を取り上げ、ケーススタディの方法により、その主張と立証の方法を解明しようというものである。第Ⅰ部総論の後、基本編として、第Ⅱ部及び第Ⅲ部において、民事法と商事法分野の代表的なトピックを取り上げ、それぞれ実体法、手続法の双方から光を当てて理論的・実務的検討を加えている。続く第Ⅳ部以下では、応用編として清算・倒産法、知財法、労働法分野の代表的な一般条項を取り上げ、必ずしも実体法・手続法の区分に拘泥せず、総合的に検討を加えている。一般条項の主張・立証の方法は法分野ごとに多様であるが、上記のように一般条項を鳥瞰することで、主張・立証についての「コツ」を読者に提供することができるのではないかと考えている。

 本書は、「法律のひろば」誌において、われわれ両名の共同監修にて連載した企画「一般条項における実体法と手続法の交錯」(75巻7号(2022年)〜76巻3号(2023年))をベースとしたものである。同連載では、民事法、商事法における一般条項のうち代表的なものを選び、実体法、手続法の双方から光を当て、検討を試みた。幸いにして同連載が好評を得たことから、単行本として刊行することとなった。単行本化にあたっては、検討項目を増やすとともに、同誌に掲載した各論考についても必要な加筆・修正を各執筆者にお願いした。
 われわれ両名としては、本書が一般条項の主張・立証に悩む実務家諸氏のみならず、この分野につき理論的検討を志す研究者にとって、良きガイドブックとなることを願ってやまない。

 令和6年5月
                         中島 弘雅
                         松嶋 隆弘

『ケース別 一般条項による主張立証の手法』はしがき より

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