米食の変化から考える豊かさ
数年前まではグルテンフリーや、小麦粉アレルギー対策としてその立ち位置を生み出そうとしていた米粉は、今やひとつのブランドとして成立しようとしているようだ。2021年度の米粉需要は前年度に比べ4000t増え、過去最高の4万tになる見通しとなった。これは日本米粉協会が主要な製粉会社に聞き取りを行い、その返答からの予想値という事だ。
今までのデータを見ると、米粉の需要はコロナ禍にありながらも一定の数字をキープして減少の傾向すら見せなかった。ここ数年、需要は右肩上がりで来年度もさらに増えていくと予想される。
確かにここ数年で米粉製品を目にすることが多くなってきた。今まで小麦粉に頼ったパンや麺類が大半であり、小麦アレルギーを持つ人やグルテンに対して弱い体質の人はこれらの食品に手を伸ばすことすら出来ずにいた。それがこの米粉の登場により、新たな可能性を見せている。
しかし、矛盾しているようだが日本の国内で必要とされるコメの量は年々減少し続けているのが現状だ。では何故同じコメにも関わらず、この2者にはこれほど正反対の結果が表れているのだろうか? 私はこの情報から日本の現状がよく見て取れるように思う。
米は一度炊かなくてはならない。当然、生米をそのまま食べる人はあまりいない。少なくとも私の身の回りには。すなわち、食事をするにも事前の準備が必要なのが米であり、パンや麺などの粉ものほどの即効性がない食べ物だ。米を炊き忘れて朝食に困る、という経験をしたことがあるのは私だけではないだろう。
つまりは、現代人にとって米という食事は時間のロスが多い非効率的な食事になりつつあるという事だ。残念ながら、現代人はその繁忙な生活スタイルの中で、最も原初的な文化の発生地である“食”というものを手放そうとしている。そういったストーリーがこのニュースの背景には見えてくる。
日本人の米離れ、といった言葉が言われ続けているが、実際米が嫌いで仕方がないという日本人は少ないのではないだろうか。時間に余裕さえあれば炊き立てのご飯に味噌汁、焼き魚に厚焼き玉子で朝食を済ませたいと思う人は多いのではなかろうか。しかし、日々の仕事や人付合いがそれを許してくれないのである。
これは何とも虚しい話に思える。人生の豊かさを求め勤勉に働く実直な日本人だからこそ、余計に人生の豊かな時間を捨ててまで何か得体のしれないものに時間を費やしてしまっているのではなかろうか。
別に日本人なら米を食えとは言わないし、米粉が世界を救うとも思わない。しかし、何を食べるにしてもその食事という時間すらただの作業と化してしまうような現代社会に不安を覚えざるを得ない。もしかしたらこの記事を読むあなたにとって食事がただの作業と化してしまっている様であるのなら、もう一度“食”の豊かさを思い出してほしい。
食事をするという事は非常に豊かな時間になりえるのである。いち農業人として、食材まで気にかけてくれたらいう事はない。だが、まずは食事の時間を楽しめる心の余裕と、食の豊かさに気が付いてくれると嬉しい
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話は少しそれるが、どうしても米を炊き忘れてしまう私のようなタイプの方には高速炊きの機能が付いた炊飯器をお勧めしたい。お値段はやや高めだが、これがあるとないとでは生活の質が変わる。色々あるようなので調べてみるといいかもしれない。いくつか、おすすめを載せるので自分の生活スタイルに合ったものを選んでみるといいかもしれない。
おひとり様用高速炊き炊飯器。20分前後で炊けるらしい。本当か…?
ベーシックな炊飯器。使いやすい。
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