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教育理念すら変えられる。東洋学園大学100周年の大きな挑戦が、大学業界にもたらす気づきを考える

大学のこれまでとこれからを深く考える周年のタイミングは、大学のブランディングを推し進める絶好の機会になります。2026年に創立100周年を迎える東洋学園大学も、100年という節目に、さらに大学を変革していこうと動いており、そのなかで新たに策定したものにすごく興味深いものがありました。今回は、こちらについて取り上げたいと思います。

100周年を機に、大学の芯となる考えを刷新する

東洋学園大学が100周年を機に定めたものに、新スローガンと新キャッチコピーがあります。スローガンとキャッチコピーってどう違うの?という気もしますが、プレスリリースによるとスローガンは全関係者に向けた行動指針で、新キャッチコピーはスローガンをよりわかりやすく表現した言葉とのこと。どちらも前向きな言葉で、とくに新スローガンは日本語、英語が混在していて、なんとなくJPOPの歌詞のような耳なじみの良さがありました。

  •  新スローガン 「進み続けることをやめない I WILL. I DO.」

  • 新キャッチコピー 「そのワクワクが、未来を変える。」 

とはいえ周年を機に、スローガンやキャッチコピー、タグライン、モットー、ステーツメントなどなどを策定するのはよくあること。衝撃を受けたのはそこではなく、東洋学園大学は100周年を機に教育理念を刷新したんです。え、いいの?ってなりません?最初リリースを読んだとき、思わず二度見しました。ちなみに刷新した教育理念は下記になります。 

「自他を活かしひらく」
自らと向き合い、各々の個性とフィールドを見出し、弛まず取り組み続け、自信をつけていく。自他ともに認め尊重し合い、能力を高め合い成長し続ける。

「社会と世界に向き合う」
グローバル都市・東京で、現代と世界の多様な課題に取り組む。リアルな学びのなかで理論と知識を実践し、よりよい社会となるように貢献する。

「支えあい未来をつくる」
社会や他者に支えられ存在することに感謝し、互いに支え合う。ともに生涯にわたって学び続け、未来に向かって挑戦を続ける。 

東洋学園大学プレスリリースより

新しい教育理念は、内容として納得できるものですし、人生100年時代といわれる今の時代にも即しているように思います。一方、どうしても気になってしまうのが、教育理念って変えていいものなの?というところです。

大学は教育・研究のための組織であり、なかでも私立大学の場合、軸足は間違いなく教育。つまり私立大学にとって、コアとなる活動の指針なわけです。これを変えるというのは、アイデンティティを揺るがしかねないのでは……そう思ってしまうわけです。

ちなみに東洋学園大学の場合、建学の精神である「自彊不息(じきょうやまず)」のもとに教育理念があり、これら2つを踏まえてスローガン、そしてキャッチコピーが策定されているとのこと。そういう意味では、かなり踏み入ったものを変えてはいるものの、考え方の“本丸”である建学の精神は守られているといえます。 

この大学スローガン「進み続けることをやめないI WILL. I DO.」は、本学に関わる全ての人の行動指針となるべく、建学の精神である「自彊不息」の精神と新たに定められた教育理念をもとに策定されました。

東洋学園大学プレスリリースより
東洋学園大学100周年ブランドサイト」のTopページからも各言葉の位置づけが見て取れる

抜本的に変えられる、という気づきを持つことの意義

ここまでやや後ろ向きな書き方をしてきましたが、一方でこうも思うのです。大学が開学して100年も経てば、そりゃ教育理念だって変えないといけないだろう、と。これだけ社会が変化してきているわけです。いつの時代も教育の本質は変わらないという意見もあるでしょうが、そうはいっても、教育理念を定めたとき、今のような世の中がくることがわかっていた大学はおそらくありません。 

今、求められる教育を実現するために、抜本的な部分にメスを入れる。こんなたいそれたことをするタイミングとして、100周年はまたとないチャンス。そして、いくらチャンスであったとしても、本当にやってしまうのは、すごい決断力と実行力が必要です。そう考えると、東洋学園大学はこれらが備わっている大学なのだともいえます。 

これまで教育理念を刷新した大学というのを見たことがなかったので、変えることの影響や効果というのを、あまりイメージできていません。また変える場合、どういう観点でどのように変えるのがいいのか、またどういう表現にするべきかなども、考え出すとすごく難しいように思えました。

でも実際に変えるかどうかはさておき、こういう発想で教育理念について考えたり議論したりすると、とても多くの発見がありそう……そんな予感を強く抱きました。おそらく、ほとんどの大学関係者は、教育理念を自分たちでどうこうできるものとして見ていなかったでしょう。そんななか、東洋学園大学は果敢にパンドラの箱を開けてみせて、”私たちはさらに深いところから大学教育を考えられる”のだと、そんな気づきを大学業界に投げかけてくれました。社会変化のスピードは日増しに加速しています。まずはお試しで考えてみてもいいのかもしれません。

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