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長引くオンライン授業が、大学広報を根本から変える?コロナが大学に与える、ポジティブな機会を考えてみた。

7月初旬から後期授業の方針を発表する大学がパラパラと出てきており、そのほぼすべてがオンライン授業に軸足を置く授業体制のようです。新型コロナの第2波ともいえる感染者数の急増を考えると、まだ発表をしていない大学も含め、ほとんどの大学が後期もオンライン授業を中心にせざる得ないのかなと思います。

私は大学の広報支援を仕事にしていることもあり、この件も大学広報、とくに入試広報にどんな影響を与えるかという視点で考えてしまいます。

オンライン授業中心が前期のみだった場合、これはイレギュラーであり、非常事態の応急処置であった。だから情報発信では、“本来の大学の姿(=コロナ以前の大学の姿)”を伝えるということでも、ある程度の説得力があったように思います。でも、この状況が1年間続くことになり、さらにその先も続くかもしれないとなったとき、大学が伝えるべき“本来の大学の姿”というのは、また変わっていくように感じています。

少なくとも今年1年は、授業形態が変わるのも、受験生たちが憧れるキャンパスライフが送れないことも、ほぼ確定してしまいました。さらにいうと、将来の進路だって、この数年でおそらく社会が大きく様変わりしてしまうので、“就職のために大学にいく”という考え方も、以前と同じスタンスで伝えたとしたら、どこか腑に落ちないところが出てくるように思います。

とはいえこれは単純に、対面の授業が良くて、オンライン授業が劣っているとか、そういうことを言いたいわけじゃありません。IT環境も急激に整ってきており、教職員の方々も日々努力しているため、オンライン授業も洗練されてきています。オンラインだからこその良さ、というのもあるように思います。ただ、たとえ同じ授業だとしても、対面授業の良さと、オンライン授業の良さは違うだろうし、授業が体系的に折り合わさったものが学部教育なら、当然、学部教育の魅力や特色というのも、以前と変わってくるはずです。こういった違いに目を向けずに、これまでと同じ内容を発信したとしたら、情報として説得力がないどころか、誤った情報を届けることになりかねません。これと同じことが、学部教育だけでなく、キャンパスライフや就職支援、国際交流など、すべての情報発信にいえるように思うのです。

来年大学進学を考える受験生やその保護者は、大学に進学しても対面授業がないかもしれない、キャンパスライフが送れないかもしれない、そういった疑問や悩みを抱きながら、大学の情報に触れることになります。これは、言いようによっては「大学に進学する意味なんてないかもしれない」という、心のアラートをずっと鳴らし続けながら、大学の情報に触れるということを意味します。そんな状況であっても、大学に進学する意味があると伝えるためには、コロナ禍の大学の姿を真摯に伝え、そこに進学する価値を感じ取ってもらうほかありません。

また、この状況を大学人としてポジティブにとらえるなら、大学の価値とは何か、自校の価値とは何か、という根本にある問いを、全学的に考えるまたとない機会が到来したともいえます。大学業界は、コロナ禍の今も大変ですが、長期的には少子化というさらに大きな問題を抱えています。コロナによって働き方が劇的に変化したように、この不可抗力を上手く使うことで、大学もまた劇的に変われるのではないかと思います。「大学に進学する意味なんてないかもしれない」、そんな悩みを抱える受験生や保護者に「いや違います、少なくともうちは…」と、いきいきと語れるように、このチャンスに大学の価値を見つめ直すことができれば、コロナもある意味よかったと、しばらく先に振り返ったとき思えるようになるかもしれません。

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