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来るべき社会に備えて。旧帝大合同の遺贈寄付セミナーが、私たちに提案する新たな選択肢

いかにして寄付金を獲得するかは、今やすべての大学にとって、大きな関心ごとです。そして、そんな寄付金獲得のアプローチとして、近年、有名大学を中心に徐々に力を入れはじめているのが「遺贈寄付」です。遺贈とは、遺言によって財産を相続人以外に贈ること。この方法を使って寄付するというのが遺贈寄付です。この遺贈寄付をテーマにした、かなりインパクト強めのイベントを見つけたので、今回はこちらを取り上げたいと思います。

旧帝大が合同で取り組む異色のセミナー

イベント名は、その名も「七大学・学士会合同遺贈寄付セミナー『あなたの想いが未来をつくる』」。ここでの7大学というのは、いわゆる旧帝大と呼ばれる、北海道大学・東北大学・東京大学・名古屋大学・京都大学・大阪大学・九州大学。学士会というのは聞き覚えのない組織なので調べてみたところ、旧帝大合同の同窓団体でした。公式サイトを見ると、なんと約5万人も会員がいて、130年以上もの歴史があるのだとか。

同一法人内にある複数の学校の同窓会組織がつながっている、というのはよく目にするものの、学校法人としては別なのに合同の同窓会があるというのは極めてめずらしいのではないでしょうか。

で、今回はこの7大学と学士会による合同の遺贈寄付セミナーが開催されるわけです。なんというか、ものすごく斬新な取り組みだと感じました。

合同で行う、という社会へのメッセージ

大学の合同イベントというと、まず思いつくのは入試の合同説明会だと思います。これは、参加者にとって、複数大学の説明を1か所で聞けるというメリットがあります。これがメリットになるのは、前提として参加者が受験校を選ぶという行為をするからです。

でも今回の場合、どうなのでしょう…。いや、母校以外を遺贈先にするはずないやろがい!と反語的に言いたいための「どうなのでしょう…」ではなく、本当にわからないんです。7大学の説明を聞いて、遺贈先を“選ぶ”ということはありえるのか?1大学で集客するより、7大学で実施した方が効果的なのか?考えれば考えるほど、疑問と興味が湧いてきます。

一方で、すごくポテンシャルも感じています。まず旧帝大が合同で遺贈寄付のセミナーを実施すること自体話題性があるので、大学への遺贈寄付の認知拡大につながりそうです。それに先ほど書いたこととつながるのですが、合同でイベントをやることは、遺贈先は母校でなくてもいい、それどころか縁もゆかりもない大学でもなりえる、という社会に向けたメッセージになります。プレスリリースに、本イベントの対象が「共催七大学の卒業生、学士会会員、一般の方」と書かれており、「一般の方」も入っているんですね。これもこのメッセージを補強しているように感じました。

遺贈寄付先は母校であるべき、という認識が世に浸透して覆しようがなくなってしまったら、伝統ある大規模校がひたすら有利で、歴史の浅い大学が出る幕はなくなります。でも、関係性の有無にかかわらず、価値ある活動をしている大学に遺贈寄付をしようという考えが世に広まっていけば、大学業界全体にとって、ある種の励みと刺激になるはずです。遺贈寄付を考えられている方にとっても、選択肢が増えることはマイナスにはならないでしょう。

2025年には約800万人いるといわれる団塊の世代が、すべて後期高齢者(75歳位上)となります。こういった状況を考えると、不謹慎ではあるものの、遺贈寄付が社会に定着することは、公共性の高い組織や団体にとって大きな恩恵になります。この来るべきときを見据えて、大学への遺贈寄付=母校への寄付一択ではないことを社会に根付かせられたら、意義のある活動をする大学により資金が集まる状況がつくれるのかもしれません。今回のイベントは、単に寄付を集めたいだけでなく、そんな大学への寄付の在り方の新たな提案なのかも。そう思うと、なんか見え方が少し変わってくるように感じました。

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