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オンライン授業の意味は、授業外にあり?コロナ収束後に向けて考えたい、見落としがちなオンライン授業の論点。

先日、ハーモニープラスという学修成果や教育成果の可視化・分析ツールを提供する会社による、「現在の大学での授業」に関する調査の結果を見つけました。ここには、オンライン授業に対するアンケート結果も載っていたのですが、私が大学で見聞きするオンライン授業の評価と大きくは変わらず、何となくオンライン授業の評価というのは定まりつつあるのかなと感じました。一方で、評価が定まってきたからこそ、この種の授業を今後どう扱うべきか議論できる状況がやっと整いつつあるように思っています。こういったなか、ぜひ考えていきたい論点があるので、今回はこれについて書くようにします。

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ハーモニープラスによるオンライン授業に関するアンケート調査(ReseEdより引用)

私は、オンライン授業の良さというのは、ものすごく大雑把に言ってしまうと、場所(と場合によっては時間)を選ばずに学べること、のように思っています。今回のハーモニープラスのアンケートの調査結果でもポジティブな評価として、「自分のペースで学修できる」「好き場所から参加できることで学びの質が上がった」とあり、ここらへんにも通じるところがあります。

以前、このnoteで取り上げた、近畿大学の海外バーチャル留学体験なんかは、場所を選ばずに学べることを上手く活用した一例です。他にもこの特性を活かした面白い授業や教育プログラムが、いろんな大学で実施されており、ニュースやプレスリリースを見つけては興味深く読ませてもらっています。これら取り組みはワクワクするし、今後にすごく期待しているのですが、大学の授業全体から見ると、これらはごくごく一部にすぎません。

では、それ以外の普通(?)のオンライン授業の場合、場所(と時間)を選ばずに学べることは、学生たちにどんな恩恵を与えるのでしょうか。これって端的にいってしまうと、時間だと思うんですね。通学が不要になったことで、移動時間はもちろん、外出のための準備時間、とくに女子学生ならメイクにかける時間も大幅に減りました。また、授業によってはオンデマンドのため隙間時間を使って受講することも可能になりました。わざわざ大学に足を運んで学ぶよりも、かける時間を格段に減らすことができます。まぁ今は、レポート等の課題がいっぱい出て、結果的に対面よりも時間を食う授業なんてものもあります。でも、これら課題は、学生たちがサボらないようにするための仕掛けという意味合いもあり、オンライン授業に必須な要素ではないように思っています。

オンライン授業の最大のメリットが時間だとすると、社会人や主婦であれば仕事や家事の合間に学ぶため、この恩恵を強く実感できます。でも、大学生って、一生のうちで最も自由な時間がある期間ともいえ、時間がさらにできたとしても、それにありがたみを感じにくいように思うのです。通学の1時間がなくなったから、これまでより1時間長く寝る、であれば、オンライン授業を導入する意味なんて、これっぽっちもありません。

コロナ収束後、一部の特色ある授業以外でもオンライン授業を取り入れていくのなら、どのようにオンライン授業をデザインするかだけでなく、オンライン化によって生まれた時間を、どう活用すると学生はより成長できるのかという論点が不可欠です。現在のオンライン授業は、教職員の工夫のうえに成り立っており、これが決定版というものがあるわけではありません。そういう意味では、授業そのものについて議論してしまいがちです。でも一歩引いて考えたとき、なぜオンライン化をするのかという問いが見えてくるし、きっとその答えは、授業の外にあるように思うのです。


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