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伝えるべきメッセージは足りているか?芝浦工業大の情緒的な取り組みから考える卒業生とのコミュニケーション

いつもは大学のプレスリリースから面白そうなものをピックアップして紹介しているのですが、今回はそれとは違い大学の公式サイトで見つけた興味深い取り組みを紹介しようと思います。見つけたのは、芝浦工業大学の公式サイトで、取り組みは卒業生に向けた斬新なサービスです。

結婚式の祝電が、出身大学のトップから送られてくる

で、どんなサービスなのかというと、「結婚式祝電サービス」というもので、申し込むと芝浦工業大の理事長・学長からお祝いのメッセージが無料で届けられるというもの。しかもこれ、卒業生であればサイトにあるフォームに必要事項を記入するだけで送ってもらえるんですね。さらにいうと、公式サイトの卒業生向けのインデックスページに、けっこうデカデカと載っており、卒業生に伝えたい情報としては、そこそこ優先度が高めです。

「結婚祝電サービス」は、卒業生用メニューページの2つ目に掲載
芝浦工業大学公式サイトより)

私としては、大学から卒業生に向けた「結婚式祝電サービス」という発想自体がなかったので、けっこう衝撃的でした。で、あれ、実は自分が知らなかっただけなのか…?と調べてみたところ、いくつかは見つけられたのですが、やはりぜんぜんメジャーではなく、ごく限られた大学のみがやっているようでした。

卒業生のために…を、とにかく前に押し出したサービス

このサービスが取り組みとして画期的で、自分の出身大学でもやっていたら、結婚した時に使ったか?というと、まあ私の場合は使わなかったように思います。でも、発想としてすごく面白いと思うんですね。 

大学による卒業生向けのアプローチの最もオーソドックスなものは、卒業生向けの広報誌だと思います。ここには、いま大学が何をやっているのかとか、寄附のお願いとか、基本的に“俺が俺が”の情報といいますか、大学が伝えたいことを伝えるというスタンスで、ほとんどの情報がまとめられています。当然といえば当然ですが、卒業生向け広報誌は、大学が大学のためにやっている施策なわけです。

一方、卒業生のために、という視点で大学が行っている取り組みの主だったものにリカレント教育があるように思います。これは卒業生の置かれている立場や興味と教育内容が合致すれば、すごく役に立ちます。とはいえ実際のところは、広く社会人(卒業生も含む)のために……というスタンスなうえ、有料なものも多いので、卒業生はそこまで自分たちのためにやってくれているという実感はもたないように思うんです。

で、今回の「結婚式祝電サービス」です。これはどうかというと、卒業生のために、という視点がとにかく前に出ている。利用可能なのは卒業生だけだし、費用もかからない。さらに、卒業生というカテゴリーに対してではなく、卒業生である“あなた”に対して、大学ではなく“学長&理事長”が行う取り組みなわけです。何の役にも立たないし、得られる情報もほとんどありません。でも、だからこそ想いが浮き立ってくるように思いました。ちなみに以前、このnoteで取り上げた筑波大学の「卒業生✕学長のオンライン飲み会」も、卒業生に与える印象としては、今回のものに通じるものがあるように思います。 

上述したように、私だったら、このサービスを使うかというとおそらく使わなかっただろうし、そんなに多くの人が利用するものでもないように思います。でも、それでいいと思うんですね。この取り組みの肝は、サービスの利用者を増やすことではなく、こういったサービスを行う大学としての姿勢を、卒業生に伝えることに意味があるわけですから。

大学と卒業生とのコミュニケーションをあらためて考えると、なかなかこういうウェットなものってなさそうなんですよね。もちろん、これだけあれば上手くいくわけではないのですが、卒業生に伝えるべきメッセージの一つとして、“卒業生のために何かしたい大学“というのは何らかのかたちで伝えておくべきなのかなと感じました。 


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