見出し画像

社会人だけを見ていても普及しない?いま、リカレント教育に足りていない視点を考える。

技術革新が驚異的なスピードで起こっている現在、学生時代に学んだ知識が生涯ずっと使えるとは、とても思えない状況になっています。こういったなかで、国もリカレント教育を普及させようと動いていますが、思いのほか普及していないというのが実情なのではないでしょうか。

今回、見つけたニュース記事を読んで、あれこれと考えていたのですが、企業と学習者ではリカレント教育に期待していることは、けっこう違うのかもしれません。そして、このミゾをどうにかしないことには、リカレント教育は社会に定着しないんだろうなという気がします。

ニュース記事をかいつまんで紹介すると、従業員が授業を受けるための「長期休暇制度」を導入した企業に対して支給する補助金を拡充させるよう、政府のワーキンググループが提言した、というものです。今回の記事は、長期休暇制度の導入が前提にあるので、補助金をもらえたとしても、一定期間、社員が出社しなくなるわけです。こういった制度を使って送り出す社員は、前途有望で、今も戦力になっている人物だと考えられます。だとすると、補助金があったとしても、会社としてはそれなりに(少なくとも短期的には)痛手なのではないでしょうか。

そしてそうであれば、送り出した社員には、役に立つことをちゃんと学んで欲しいと思うのが当然です。でも、企業にとって役立つことと、学習者本人にとって役立つことというのは微妙に異なるような気がするんです。企業であれば、自社の事業にプラスになる知識やスキルが望ましいでしょうが、学習者本人からすると、いち企業の枠におさめて考える必要はありません。むしろ自分のこれまでの経験と掛け合わせることで、キャリアアップしたいと思うのが普通でしょう。さらに、学ぶことで視野が広がることは、学習者本人にとってはプラスでしかないのですが、企業にとっては従業員が自社から羽ばたいてしまうリスクも高まるので、必ずしもプラスとは言えません。

そう思うと、企業がリカレント教育に期待するものって、すごく中途半端かつピンポイントなわけです。しかも、イケてる社員を送り出す場合が多いので、企業にとっては負担もあるしリスクもある。一方、学習者は、企業に所属しながら学ぶ場合、職場からの理解は不可欠です。ということは、リカレント教育は、企業と学習者の双方が納得する、もしくは職場を辞めてでも学びにいくほどの魅力(と見返り)がなければ、成立しないように思います。

ここらへんのモヤモヤを解決しないと、結局、補助金が拡充しようとも本質的な解決にはならないでしょう。また、現状のリカレント教育は、キャリアアップに役立つ知識・スキルの修得という側面が強いのですが、キャリアアップには転職も含まれるので、有用だと謳えば謳うほど躊躇する企業も出てくるように思います。そんな懐の狭い企業は、いかがなものか、という意見もあるかもしれません。でも、企業にとってメリットより負担とリスクが大きいのであれば、それを拒むのは当然の判断です。

とことん個人に寄り添ってキャリアを磨く学びを提供するのか、企業と従業員の両方に寄り添って企業内で活躍する人材を育成する学びをつくるのか。なんとなく、前者の方が健全に見えるし、聞こえもよく感じます。しかし、本気で社会にリカレント教育を根付かようとするなら、前者だけでなく、後者にも取り組んでおくべきでしょう。単純に学びたい大人が増えればそれで社会にリカレント教育が定着するというのは、まやかしとまでは言わないものの、なんというか、片手落ちではないかと個人的には思ってしまいます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?