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コロナ禍という“いま”をどう受け止め、どう糧にするのか?立命館の学生に向けたストレートな連載企画が興味深い。

遠隔授業が中心、部活動やアルバイトもできない、そんな学生たちをどうケアするかは、大学にとって大きな課題です。今回、見つけた立命館大学の取り組みも、そんな学生たちに向けたケアのひとつといってよさそうで、シンプルながらも魅力的です。実はこういうのって、とても大事なように思うのです。

取り組みの名前は「New Streams」、教員たちによる学生に向けたインタビュー記事の連載企画です。サブキャッチに「学生のあなたに伝えたい“いま”と“これから”」とあり、メインターゲットが学生であることを明言しており、実際に記事を読むと、脇目を振らずちゃんと学生に向けたものになっていたので好感を覚えました。

インタビュー記事の内容は、教員によっていろいろではあるものの、大きくは遠隔授業について、専門分野とコロナ、そして学生に向けてのメッセージです。印象深いのは、記事の最後にある「Message」というコーナー。ここでは、自粛で思うように動くことのできない“いま”を、学生たちはどう過ごすべきなのかについて、それぞれの教員が簡潔に語っています。

FireShot Capture 805 - サトウ タツヤ 教授|New Streams|立命館大学 - www.ritsumei.ac.jp

FireShot Capture 808 - 遠藤 英樹 教授|New Streams|立命館大学 - www.ritsumei.ac.jp

足立 研幾 教授

「New Streams」のインタビューに掲載された教員たちのMessage

思えば、大学、それにメディアが学生に向けて伝えるメッセージは、三密を避けなさいとか、コンパへの参加は御法度ですとか、してはいけないことについてばかりなように思います。もちろん、これはこれで大事なんですが、これだけでは十分ではありません。意識の高低はあるにしろ、学生たちは、学生という時間が貴重であることを知っているし、学生である間に自分は成長しないといけないと考えているように思います。もちろんなかには、コロナ禍の“いま”という時間を上手く使う学生もいるでしょう。でも、そうでない学生もなかにはいて、使えていないことに苛立ちや焦りを感じているかもしれない。また、自分の“いま”の過ごし方に、自信が持てない学生もいるかもしれません。今回の立命館の取り組みは、こういった学生たちにとって、有用な情報どころか、ある種の救いになるように感じました。

コロナ禍の自粛は、不自由ではあるものの、捉えようによっては、場所に縛られなくなったり、他者の目を気にしなくてもよくなったり、とても自由になった側面があります。でもこの自由は、望んで勝ち取った自由ではありません。人によっては、ぽつんと暗闇に放り込まれたような感覚に襲われているのではないかと思うのです。

とはいえ、この自由の使い方に、たった一つの答えを出してしまい、こうしなさいと伝えるのは、いかがなものかとも思います。近くにいてフォーローできるわけではないし、置かれている状況も、必要とすることも、人それぞれ違います。そんな状況で、画一的なアドバイスをしてしまうのは、ときとして害悪になる可能性だってあります。そう思うと、今回の立命館のように、それぞれの教員が、あくまで個人としてのメッセージ(アドバイスではなく)として伝えるのが、いい塩梅だと思いました。

遠隔授業が続くことによる、学生たちの不満の声をネットやリアルで見聞きします。この不満は、ほぼ不安と同義語なわけで、“いま”という時間をプラスに使えている実感があれば、学生たちの不満(=不安)も減っていくのかなという気がします。ビフォーコロナの大学に、できるだけ早く戻していこうという動きも、もちろん大事です。でも、一朝一夕で何とかなることではないので、学生一人ひとりが“いま”を肯定して、“いま”をより豊かにしていく、そのための支援というのも、実はとても大事なように思うのです。

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