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ウェブオープンキャンパスをのぞくと、オープンキャンパスの本当の役割が見えてくる。

コロナパンデミックが少し落ち着きはじめているものの、まだまだ未知なところも多く、予断を許さない状況が続いています。大学では、夏のオープンキャンパスの開催が危ういこともあって、ウェブオープンキャンパスの特設サイトをオープンする大学が増えてきました。これらサイトを見ていると、オープンキャンパスって何のためにあるのか、もう一度、考えるよいタイミングなのかなと感じました。

まずは、このウェブオープンキャンパスがどういう取り組みなのか。論より証拠といいますか、いくつかピックアップしたのでご紹介します。

この取り組みが面白いのは、内容よりも位置づけだと思います。というのも、上で取り上げた大学は、どこも受験生向けのページであったり、サイトというのをすでに持っているんですね。そのなかの大きめなコンテンツとして、ウェブオープンキャンパスがあるわけです。

すでに受験生向けのページやサイトがあるのであれば、ウェブサイトに訪れる受験生には、ウェブオープンキャンパスがなくても伝えるべき情報は伝えられます。でも、このコロナ禍で大変なときに、あえてウェブオープンキャンパスなんていう取り組みをやるのは、伝えたいものが、そもそも違うからなのではないしょうか。

では何を伝えたいのか。それはウェブオープンキャンパスのページを見ていくと、何となくわかってきます。これらページですが、どれもすごく動画を多用しているんです。しかも、その動画のクオリティが、ものすごく高いかというとそうでもない。非常事態だからというのもあるのかもしれません。でも、それよりもあまり洗練された動画は、この取り組みの動画としてふさわしくないという判断があってのことのように感じました。

動画、ときにはzoomなどを使ったオンライン中継のようなものもなかにはあるのですが、こういったコンテンツをウェブオープンキャンパスの中心に据えるのは、ライブ感を何とかして演出したいからだと思います。では、なぜライブ感を演出する必要があるのでしょうか。対面のコミュニケーションであれば、自分の知りたいことを事細かに聞ける良さがあります。でも、単にライブ感があるだけでは、情報としての質が上がるわけではなく、それどころか知りたい情報をピンポイントで選べないので質が下がるとさえいえるかもしれません。そうであっても、ライブ感のある動画を提供する。そのねらいは、大学の雰囲気であったり、歓迎しているムードを伝えるため、言い換えるなら、あなた(受験生)はここにきてもやっていけますよ、という安心感を与えたいからのように思います。

でも、です。ここから少し毒をはきますが、そうであるならウェブオープンキャンパスは、オープンキャンパスである必要はないんじゃないでしょうか。やや繰り返しになりますが、対面のオープンキャンパスには密なコミュニケーションによる情報発信と、安心感の提供という二つの役目がありました。しかし、ウェブのオープンキャンパスは、前者はあきらめざるを得ません。だとしたら、オープンキャンパスでやっていたことを、そのままウェブに持ってきてもズレが生じる、少なくとも一番効果的なやり方とはいえない、と思うのです。たとえば、教員や大学生と高校生が討論する様子を生中継したり、オンライン上で大学生と高校生がミニゲームを一緒に楽しむようなイベントを開催したり。もっと極端にいうなら、ウェブオープンキャンパスは、オープンキャンパスより、ウェブ配信の新入生歓迎会みたいなものの方が、求められている役割に合っているような気さえします。

コロナパンデミックの影響で、オープンキャンパスだけでなく、いろいろなものをオンラインに置き換えざる得ない状況が今後も続くことが予想されます。このときに、リアルじゃできないから、同じものをオンラインに持っていこう、ではなく、取り組みの役割をもう一度整理して、伝えたいメッセージであったり、与えたい効果をオンライン上で最大限に発揮できるように、再翻訳する必要があります。この棚卸し作業をやるには打って付け、というよりも、やらざるを得ないのが今です。手癖のようにやっていた入試広報の一つひとつを、各大学が真剣に向き合い、自分たちにとっての最適解を模索しだすと、高校生とのコミュニケーションは一気に多様化します。コロナを機に、入試広報のカンブリア紀がやってくるかもです。

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