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【映画感想】「トラペジウム」を見た。

 なんやかんや話題になっていたので「トラペジウム」を見に行った。映画館に行くのはずいぶん久しぶりな気がする。
 すいちゃんがオープニング曲を歌っててわりと驚いた。

 なんだかんだ語られていたけど、確かに語りたくなる映画だなと思った。
 でも、最初に話題になった「主人公に共感できない」って感想は多分釣りかなー、って思うよ。主人公の行動が突飛なのは問題提示部分なのでそこが可笑しいというのは、「1984年」を読んで「これは管理国家を礼賛している!」っていうのと同じようなものだ。

 全体的にかなり細かく意思を持って作り込まれているなという感想を持ったよ。
 この映画は「東西南北というアイドルグループ」の物語ではなく、「東ゆうというアイドル」の物語だ。かなり慎重にこの点は強調されているけれど、それを見落とすと違った感想になるのかもしれない。

 前半部分、つまり「東西南北」を作るという部分はジェットコースタの上り坂のように物語を盛り上げていくともに、細かな部分で「東ゆう」の持つ問題点、それによる「破局の予感」を丁寧に積み上げていく。
 随所で大小さまざまに「くるみが乗り気でない」ということを描写していたり、東ゆうと西南北の三人が切り離されているように映されていたり(特に鮮明に覚えているのはライブ前の円陣を組む前だね)、そういう感じにだ。
 前半はアイドルになるというワクワクと、随所に見える不穏さで観客を引き付けていく。
 この前半で描写される問題というのは(これももう、いろんなところで話題になっているけれど)「東ゆう」が「東西南北」という箱を作るために他の三人を集めたのであって、その三人の中身を見ていないということだ。

 そして、当然その問題ゆえに「東ゆう」は挫折する。
 それについてはこのPVを見てもらえばいいと思う。

(なんでアイドルの素敵さを語る場面で魚眼レンズを使うんですか?)

 前半で語られた問題をもう少し抽象的に、東のこれまでとこれからまで引き延ばして考えると、東はこれまで「アイドルになりたい」という憧れを持っていたけれど、それはある種「空っぽ」の憧れだった。
 この挫折を経ることで「具体的な誰か」のために「自分がアイドルになる」という目標の再設定が行われた。
 だから(物語という者の性質を考えると当然だけれども)実はこの物語の前と後で東の活動は同じようでいて違う。後の方は描写されてないけど、動機づけが違う。
 そんでまあ、その動機づけの元となるのが東西南北としての活動で、その部分が青春ものなのだね。
 という物語なのだと僕は理解したよ。

 とにかく小ネタというか細かい部分で意図をケイジジョウヒケイジジョウニ示しているのが印象的だったね。

 以下、小ネタとか演出について覚えてるの

・南さんとの出会いの場面で不穏に二人を隔てる柱。
・学園祭で三人と遅れながらゴミ箱にチラシを捨てる東を写す頭上からのショット(でもちゃんとついていく東のこと嫌いじゃないよ)
・しっかり冒険家の格好をしてる南さん
・お母さん、いいお母さんだよね。
・暗転明けてからの東のインタビュー「ほんとに偶然で、たまたま受けたオーディションが……」ってあれは笑うポイントだと思うのです。絶対に偶然じゃないだろ! あいかわらずやってんなぁ! って突っ込むポイントですよ本当に。でも、そういうところほんと東さんのこと嫌いになれねえんだよな。
・あと、事前情報で「東西南北の中に彼氏持ちがいる」という情報だけ持ってたので該当の場面まで「くるみとカメラボーイが付き合ってるんじゃないか」という最悪の予断を持ちながら鑑賞していました。
・全く関係ないけど、サチちゃん、くるみさんの開発したサイバネ技術で完璧で究極のアイドルにならねえかな。

 前半をワクワクにしつつ不穏さで引っ張って、破局の一発短めに、そこからの復帰をとるというやり方もありなんだなって思いました。

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