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ホットケーキは母の味
「ほたてはいつも美味しい美味しいって言って、
たくさん食べてくれるからお母さん嬉しいな」
子供の頃、といっても中高生ぐらいだった気がするが、
母からそう言われた。
たしかに、昔から私は食べることが大好きで、
嫌いな食べ物はさておき(笑)、
母の手料理を毎日おいしいおいしいと言って食べていた。
一般的にどうかとかではなく、
私にとって母の料理がその時の世界一だった。
夫と同棲を始めた頃、お互いの手料理を食べて、
夫の料理がすごく濃く感じた。
逆に私の料理は薄味だったよう。
これも食べて育った味の違いなんだろう。
私は、そんな薄味の母の味が好きだった。
ところで、「母の味」という言葉がある。
みなさんの母の味はなんだろう。
私も考えてみた。
炊き込みご飯、鮭の煮物、お正月の雑煮、ひじき煮、きりこぶ煮…
いろいろ出てくる。
けれど、1番幼い頃の記憶を辿ってみるも、
母の味のはじまりは、
ホットケーキだった。
ホットケーキミックス使ってるから、
それは母の味ではなくて、
森○あたりの味ではないかい?
って言われそうだけれど。
ホットケーキは、私にとって、
初めて母と一緒に料理をして、
一緒に食べた思い出の塊なのだ。
多分、もう幼稚園に通ってたぐらいの年頃。
お昼にホットプレートをテーブルに出して、
ホットケーキの種を作って、
おたまですくってプレートに落とす。
ぷつぷつ穴が出てきたらひっくり返すんだよ。
おっ、上手だね!!綺麗!!
ほたてちゃんが焼いてくれるとおいしいな。
私は得意になってどんどん焼く。
今考えても、子供に対するお世辞であって、
ホットケーキミックスを使ってるなら
まずくなりようがないのだ。
ひっくり返すのだって、
母がちっちゃいサイズで焼けるよう、
私がおたまで落とす時に声かけしてくれてたと思う。
だけど、私は、
誰かに作ってあげて褒められて、
おいしいって言って食べてもらえて、
一緒にご飯を食べられる。
食事の時間ってこんなに楽しいんだと、
無意識に感じていたのかもしれない。
今思えば、あの原体験があったから、
食べることが幸せなことだと思うようになった。
脳裏に思い浮かぶ当時の情景。
あったかくて懐かしくて。
少し涙が出そう。
昨年出産して子育てを始めたら、
急に母の味が食べたくなった。
さすがにホットケーキは自分で焼けるので、
わがまま言っていろんな料理をお裾分けしてもらう。
お礼に私も何か作って「娘の味」をお裾分け。
うーん。
やっぱり、お母さんの料理はおいしいな。
私は食べてばかりで、
お世辞にも料理は上手ではないし、
娘に「母の味」は作ってあげられないかもしれない。
けれど、大きくなったら、
一緒にホットケーキ焼こうね。
お母さんも、「娘の味」が食べたいな。
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