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Episode 419 白素材の映像です。

信州・渋温泉の老舗旅館「金具屋」に泊まったのは一年前の冬…2019年の1月のことです。
国の登録有形文化財で「千と千尋の神隠し」の「油屋」のモデルとも噂される木造4階建ての宿泊棟「斉月楼」の夜景ライトアップは、圧巻の存在感を示す迫力だったのをよく覚えています。

そして、これ。

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金具屋「斉月楼」の中廊下の景色。
建物内の廊下なのに軒があり、窓には欄干があってね。
もう…何ていうのかな、とても言葉で言い現わせない不思議な世界だったのです。

と言うかね…ここを言葉にする必要が私にはなくてですね、目に入った光景が全てなのです。
目から入った情報は、何かを介すことなくダイレクトに脳内ライブラリに保管される…というのは以前に音声情報や言語情報は映像に変換されて脳内ライブラリ収納されるということと合わせて、ブログ記事にした通りなのです。
多分ね…ここが視覚優位型ASDの私が、感情の共有をしにくい大きな要素になていると思うのです。

ポイントは脳内ライブラリの保管形態が「映像」だということ。
そこには「私はどう思ったのか」という「言語化された解説」がついていないということ。
もちろん…例えば映画のワンシーンみたいにBGMが挿入されているとか、飛行機がエンジン音を響かせて轟音とともに急旋回する…みたいな効果音がついていたりすることはあります。
ただ、喜怒哀楽に代表される自分の意識する感情とともに映像が記憶されているワケではなくて、白素材としての映像データがライブラリとして並ぶ…と表現したらよいのでしょうかね、そんなイメージなのです。

さて…「斉月楼の中廊下の景色」を、私とパートナーで「感情の共有」しようとしたとします。
すると、お互いの意思疎通の媒体として「会話」が発生するワケなのですが、パートナーが発した「言葉としての斉月楼の中廊下の景色」が、私の脳内ライブラリにある「白素材映像の斉月楼の中廊下の景色」を染めてしまうのです。
「それで、あなたはどう思ったの?」とパートナーに訊かれて困ってしまう…。
私の思う「斉月楼の中廊下の景色」は言葉を伴わない白素材の映像そのもので、あなたの言葉が今まさにその「解説」を書き加えました。
それをどのように説明したら良いだろう?

あなたは建物の構造とか材質とか、そんな物理的なことを聞きたいわけじゃないよね…分かってるのです。
でもさ、無理やりにでも言葉にできるのは、そんなことしかないのだもの。

これはあくまでも私の思うところであって、一般論ではありません。
同じくASDと診断された人でも、言語優位の方もいらっしゃいます。
その言語優位の方が「白素材の言語」を脳内に抱えているのか…なんて、私が知る由もありません。
でも、私の感覚として、間違いなくこんなことが起こっているのです。

ひとつの感覚に頼ると感情の共有が出来ずに野暮になる。
あなたは自分の感情が肩透かしにされた…と、きっと思うのでしょうね。
もしかしたら、粋な会話にならない理由としてこんな原因があるのかも…と、私は思うのです。

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